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ロシアエネルギー情勢
ガスプロム
ウクライナへの提供を停止
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●背に腹は変えられない状況に陥っているガスプロム
1日、ロシアのガスプロムは、天然ガス料金の支払いをめぐり
交渉していたウクライナに対してガスの供給を停止しました。
またメドベーチェフ大統領は先月22日、ベラルーシのルカシ
ェンコ大統領とモスクワで会談し、今年のガス輸出価格を協議
しました。
西欧諸国・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシのそれぞれに
対するロシアからの天然ガス輸出価格の推移を見ると、いずれ
も千立方メートル当たりの値段は年々上がってきていることが
分かります。
※「ロシアからの天然ガス輸出価格(1)」チャートをみる。
→
西欧諸国に対する輸出価格は2005年に250ドルを突破し、2008
年には350ドルを越える水準にまで達しています。私はこの値
段は適正価格よりも高い設定だと思っています。
天然ガスに限らずエネルギー全体の値段が下降している昨今の
状況からすれば、ロシアの天然ガスももっと値下げして然るべ
きだからです。
しかし、依然としてロシアは西欧諸国に対して強気の姿勢を崩
していません。
* * *
逆に、エストニア・ラトビア・リトアニアの旧ロシア領である
バルト3国に対しては、2007年以降の値上げ交渉が上手く行か
ず、3カ国平均の輸出価格は250ドルに届かない水準に押さえ
込まれています。
また、2005年のガスプロムとベラルーシ政府によるガス供給に
関する契約更改以降、ウクライナに対する輸出価格は上昇の一
途を辿っています。
親ロ的な立場を貫くベラルーシは今日に至るまで最も低い価格
水準を維持していますが、ガスプロムの金欠状況から考えれば、
今後はベラルーシに対する値上げも十分可能性があると思いま
す。
今回、ロシアは1月1日からウクライナに対するガス供給をス
トップさせましたが、これはロシアとウクライナの政治的な関
係が悪化したからだけではなく、資金的にガスプロムが追い込
まれているからだと私は見ています。
罰金を含むウクライナ側のガス滞納料金は約20億ドルに上り、
まだ15億ドルしか支払われていません。ガスプロムは背に腹
は変えられないという状況になっているのでしょう。
●将来的には、300ドル~350ドルで落ち着く
客観的に見てウクライナはかなり厳しい状況に追い込まれてい
ます。すぐに延滞金を支払ってロシアと和解する可能性は低い
でしょうから、文字通り今年は寒い冬を迎えざるを得ないでし
ょう。
では、天然ガスの価格はいくらで落ち着くことになるでしょう
か?
先に結論を言ってしまうと、私は300ドル~350ドルに落ち着
くと見ています。そしてこれはウクライナに対するだけではな
く、西欧諸国・バルト3国・ベラルーシなども含め、全体に対
して300ドル~350ドルという共通の適正価格になっていくと
思っています。
ロシア側の言い分は、ウクライナはEUに加盟したいと考えて
いるのだから、他のEU諸国(西欧諸国)と同水準の天然ガス
輸出価格を適用するというものです。
一方のウクライナは、元CIS・元ロシアという意味ではバルト
3国と同じ水準が適当だと主張しているわけです。両者の差額
は、西欧諸国への販売価格「418ドル」・ウクライナが主張して
いる販売価格「235ドル」で、「183ドル」になります。
※「ロシアからの天然ガス輸出価格(2)」チャートをみる。
→
私が300ドル~350ドルで落ち着くと予測しているのは、ロシ
アが次のように考えると思うからです。
まず第1に、ウクライナがバルト3国と同水準を求めるならば、
バルト3国への輸出価格も値上げしてしまえば良いということ
です。
バルト3国はすでにEUにも加盟しているので大義名分も立つ
でしょうし、ガスプロムにとっての資金難対策として効果的で
す。
第2に、逆に西欧諸国に対しては、他のエネルギー資源の価格
との兼ね合いから考えれば値下げせざるを得ない状況です。現
在の418ドルから350ドルくらいまで値下げするのは妥当なラ
インだと判断するのではないでしょうか。
結果として、西欧諸国・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシ
のそれぞれに対して別々の輸出価格を設定するよりも、全体と
して300ドル~350ドルに落ち着ける方がシンプルですし、ロ
シアとしては資金を確保する意味でも効果が高いでしょう。
そしてこれを実現するためには、ロシアとバルト3国・ウクラ
イナ・ベラルーシの間に欧州が政治的に介在することが必須だ
と思います。
例えば、欧州諸国は天然ガスを使用しないという政治的な動き
を見せることも有効でしょう。欧州側にしても結果的には自分
たちへの輸出価格の値下げにつながることですから積極的に動
いても損はないと私は思います。
最終的に300ドル~350ドルに落ち着いても、ベラルーシ・ウ
クライナにとっては厳しい状況でしょうが、それでも納得でき
ないならば、天然ガス以外の他の燃料を使うという選択肢以外
に道はないかも知れません。