大前研一「ニュースの視点」Blog

KON778「米中貿易~追加関税の影響とその結末予測」

2019年5月20日 米中貿易

本文の内容
  • 米中貿易 中国輸入品への追加関税25%への引き上げ発動

米中貿易問題の今、そして次のラウンドでは中国側の妥協だけでは済まない


米政府は10日、中国からの約22兆円分の輸入品にかける追加関税を10%から25%に引き上げる制裁措置を発動しました。

米中高官が9日、合意に向けてワシントンで協議したものの、中国地方政府が地元企業に出す産業補助金をめぐり激しく対立したことで、トランプ大統領が強硬姿勢に転じたものです。

これを受けて、中国側があらためて報復措置を予告。

世界経済への悪影響が懸念されています。

今のところ、中国側の報復は効いていません。

米国が関税を上げた分、中国の輸出企業が値引きして対応しているからです。

それゆえ、米国はインフレにならず、低インフレの状態を保つことができています。

このような中国企業が妥協している状況は、日本にとっても大きな問題です。

なぜなら、中国に部品を納品している日本企業も、「中国企業の妥協」の影響を受けるからです。

しかし、次のラウンドはこのままでは済まないと思います。

というのは、米国側のインフレを誘発しやすい商品が並んでいるからです。

たとえば、iPhoneのような製品です。

中国側も出荷価格を25%値引きすることは難しいでしょうから、関税が上がった分、米国の販売価格が25%上昇することになるはずです。

そうなると、米国ではインフレが進み、米国の消費者も黙っていないでしょう。

中国の劉鶴副首相の発言を聞いていても、中国側の妥協だけで丸く収まることは、やはりないでしょう。

日本は日米貿易戦争で「天変地異」を経験しました。

これから中国は同じ経験をすることになるはずです。

そして、もしかすると日本企業よりも大変な道が待ち構えているかもしれません。

日本企業は米国に言われるがまま、米国内で生産する体制を整えるなど、生産基地をバラバラにすることで結果的に生き延びることができました。

しかし、中国企業の場合、米国内で生産するといっても米国側が歓迎しない可能性があると私は感じます。

たとえば、ファーウェイが米国で生産すると言って承諾されるとは思えません。

現状、中国企業は米国に言われたとおりにしてきただけで、自らグローバル化するプロセスを経験していません。

ですから、米国から関税25%という条件を突きつけられた時、対応するのは非常に難しいと思います。

生産拠点をベトナムやバングラデシュに移すといっても、今の中国と同じ規模の生産拠点にはなり得ないでしょう。

広東省だけで6000万人規模ですから、単純に比較すれば、それだけでベトナム全体の規模になってしまいます。

また、高速道路や港湾などのインフラ整備の点を見ても、ベトナムやバングラデシュは中国ほど進んでいません。

かつての日本のように、業務を自動化することで関税を上げた25%分を吸収するという方法もありますが、これも難しいと感じます。

そうなると、最終的には関税の上昇分は、やはり米国の消費者が支払うことになってしまうでしょう。

一方、この関税は米国政府の収入になりますから、政府は濡れ手で粟の大金を得ることができます。

この資金を使って農民補助をすることもできるでしょうし、トランプ大統領の人気取りもできるでしょう。

私に言わせれば、このような形で25%の関税上昇分の収入を得ることは、暴力団と変わりません。

米国暴力団と言ったところでしょう。

これが米中貿易問題の現状です。



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※この記事は5月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、米中貿易のニュースについて大前が解説しました。

記事中で大前は、今後の追加関税に関する予測を述べています。

予測をすることで、次の一手、二手先を事前に考えることができます。

これは、どんなビジネスでも同様です。

楽観的なシナリオだけでなく、悲観的なシナリオも準備しておくことで、次の一手が遅れることを防ぐことができます。


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