- 本文の内容
-
- 日産自動車 ゴーン前会長勾留100日
- コンビニエンスストア コンビニ、「24時間」転機
- 日本郵船 豪華客船「飛鳥2」後継船建造へ
ゴーン氏は絶対権力を手にしてから、おかしくなった
毎日新聞は先月26日、「ゴーン前会長勾留100日」と題する記事を掲載しました。
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が、最初に逮捕・勾留されてから100日が経過したと紹介。
東京地検特捜部は引き続き捜査を続けており、前会長の指示でオマーンの販売代理店に約35億円が送金された目的は、前会長の私的な借金返済目的だったと見ているとのことです。
日産の西川社長は、「日産の改革を行ったのはゴーン前会長の力だけではなく、それぞれの現場の力もあった」などと発言していますが、これは不要な発言だと私は思います。
ゴーン前会長の就任最初の5年間の成果は素晴らしいものでしたし、それは認めるべきです。
問題とすべきなのは、その素晴らしい成果に安住して、日産の会長になり、そしてルノー会長にもなって、絶対権力を手にした後のことです。
ゴーン氏の悪事が始まったのは、そこからです。
日産としても、絶対権力を手にしたゴーン氏をあまりにも信用して任せすぎたというのは問題です。
日産も訴えられている立場なので、西川社長自身も本当に何も知らなかったのかどうか、しっかりと検証する必要があります。
西川社長は決して傍観者ではなく、当事者の1人であり言い訳できる立場ではありません。
フランス側は、ゴーン氏の個人的な、あるいはルノーを巻き込んだ悪事が明らかになるにつれて、事件発覚当初とは違い、日産に協力する態度に変わってきました。
ゴーン氏の悪事もこれだけ出てくると、さすがに全てが嘘ということはないでしょう。
また、ゴーン氏が行ってきた悪事を見ていると、自らの生い立ちと関係しているものが多いと気づきます。
ブラジルで生まれたゴーン氏は、幼少期をブラジルで過ごし、その後レバノンのベイルートで中等教育を受けています。
ブラジル、フランス、ニューヨークなど日産を通じて多額の資金を投資させていますが、特にレバノンのベイルートに対する投資額は異常です。
また、この地域の人との付き合いの様子を見ても異常だと私は感じます。
完全に日産のガバナンスが効いていない状況だったことを物語っています。
ゴーン氏は陳述において、「日産や日本を愛している」と述べていました。
しかし、結局のところ、「一番愛していたのは自分だけ」だと感じてしまいます。
コンビニ本部による契約を盾にしたゴリ押しは通用しない時代になってきた
日経新聞は先月27日、「転機の24時間営業 コンビニ、一部加盟店の反対先鋭化」と題する記事を掲載しました。
加盟店オーナーらが作るコンビニ加盟店ユニオンが、終夜営業を見直すよう、最大手のセブン―イレブン・ジャパンに要求したと紹介。
コンビニ各社は利便性と収益の基盤となる24時間を維持する考えですが、人手不足や働き方改革の流れを受けて逆風は強まっており、フランチャイズチェーン(FC)方式で店舗を拡大してきたコンビニの急所にもなりかねない、としています。
コンビニは、本部が圧倒的に強い力を持ち、統制しています。
各店舗の商品の陳列についても本部の意向に逆らうことができません。
そうした契約書にフランチャイズオーナーはサインをしているからです。
先日、東大阪のセブンイレブンのオーナーが、2月から営業時間を19時間に短縮すると公表しました。
当然、契約に従うなら違約金の支払いが発生し、本部は時短営業を一切認めることはないでしょう。
ところが、セブンイレブン本部は一旦従来通りの対応を見せましたが、方針を変更したかのように、24時間営業の見直しに向け、時短営業の実証実験を開始しました。
これは、ブラック企業が世間で話題になり、人手不足で夜間に働いてくれる人も少なくなってきている状況を踏まえ、従来のような対応をすると「炎上」すると判断したからだと思います。
私も従来通りの対応のままだと「炎上」するだろうと感じましたし、実際に「炎上」しかけました。
本部の統制だけでなく、現場の経営者の判断が入る余地を作らないと、今後は上手く機能しないでしょう。
本部の命令で命に関わるような過剰労働を強いられるというのは、やはり改善されるべきことだと思います。
有効求人倍率を見ても、商品販売の職種は2.5倍の数値になっていて、特に人手不足が激しい状況です。
セブンイレブン本部は、今後も炎上しないように丁寧に対応する必要があると思います。
クルーズ船市場は、日本式にすることでまだまだ伸びていく市場
日経新聞が先月27日報じたところによると、日本郵船が豪華客船『飛鳥2』の後継船を建造し、2020年代半ばにも投入する見通しが明らかになりました。
建造費は最大600億円になる見込みで、国内でもクルーズ旅行の市場が広がっていることを受け、既存船も運行を継続し、2隻体制にするとのことです。
日本郵船は三菱系の企業なので、従来であれば三菱重工が製造するという流れです。
しかし、火事やトラブルを起こしたこともあり、三菱重工そのものが大型客船製造から事実上撤退するので、今回の豪華客船をどの企業に発注するかも気になります。
発注先の課題が残る一方で、クルーズ船市場には大きな魅力があるのは確かです。
日本人のクルーズ乗客数の推移をみると、2002年の約15万人から、2016年には25万人、そして2017年には30万人と増加しています。
私はさらに伸びると感じていて、おそらく100万人を突破することはそれほど難しくないと思います。
というのは、今運行しているクルーズ船の多くは、日本人のニーズを捉えておらず、そこを改善すればもっと多くの集客が見込めるからです。
今、日本人が乗っているクルーズ船のほとんどは、イタリアやノルウェーなどの欧州系の豪華客船、またはアメリカ系の豪華客船です。
ところが、これら欧米の豪華客船は、日本人には「向かない」ところが多いのです。
例えば、夜になると正装して食事に行きますが、日本人はドレスアップするよりも、夜は浴衣を着てドレスダウンしたい、という人も多いはずです。
またキャビアから始まるような豪華な食事をお腹いっぱい食べて、その後ダンスに興じるというのも日本人には向かないと思います。
お風呂も大浴場で広々したものに入りたいと思うのが日本人です。
欧米の豪華客船とは違う、日本式の豪華客船で日本人らしいニーズを汲み取ることができれば、さらに市場は拡大すると思います。
豪華客船の旅は、歩き回る必要もなく、ボケッとしていても気持ちよく過ごせるので、その意味でもポテンシャルが非常に大きい市場です。
ぜひ、日本人らしい過ごし方ができる日本式の豪華客船を製造して欲しいと思います。
---
※この記事は3月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、セブンイレブンやクルーズ船のニュースについて大前が解説しました。
セブンイレブンのニュースの裏側には、慢性的な人手不足と働き方改革の流れがあります。
クルーズ船のニュースの背景には、クルーズ旅行の市場拡大があり、大前はさらなる市場の伸びについて、理由とともに言及していました。
事業運営では、世の中の変化にあわせて常に進化するだけでなく、世の中の変化を先取りして動くことが求められます。
そのためには、マクロな変化だけでなく、日々の仕事で発見する新たな変化の兆しも見逃してはいけません。
次にとるべき行動のヒントは、意外にも身近なところで見つかるものです。
▼第17回 BBT×PRESIDENT EXECUTIVE SEMINAR
(2019年5月31日(金)、6月1日(土)開催) 申込受付中!
お申込み、お問合せはこちらまで
TEL: 03-3239-0328 mail: bbtpresident@bbt757.com