- 本文の内容
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- 米朝関係 日本にも影響及ぶ朝鮮戦争「終戦宣言」の現実味
- INF全廃条約 核条約の死、日本の選択は
終戦宣言は、日本に対する北朝鮮の脅威を意味する
東洋経済オンラインは4日、『日本にも影響及ぶ朝鮮戦争「終戦宣言」の現実味』と題する記事を掲載しました。
これは2月下旬に行われる2回目の米朝首脳会談で、トランプ大統領が「終戦宣言」をする可能性が高いと指摘しています。
トランプ氏がこれまで朝鮮半島に張り付かせていた米軍を撤退したいと考えていることが要因で、実現した場合には日本にも駐留米軍や安保体制の見直し、及び北朝鮮との関係改善を迫られる可能性があるとしています。
韓国の文在寅大統領も米トランプ大統領も、ノーベル平和賞に取り憑かれている状態だと思います。
文在寅大統領の頭にあるのは、かつての上司であった金大中元大統領です。
金大中元大統領は金正日総書記と南北首脳会談を実現して、ノーベル平和賞を受賞しました。
自分も同じようになりたい、と考えているのだと思います。
そして、米トランプ大統領も朝鮮戦争の「終戦宣言」を行い、その功績でノーベル平和賞を狙っているのでしょう。
それが自らの大統領続投へつながると考えているはずです。
朝鮮戦争は、1953年に休戦したまま、実はまだ「終戦」していません。
南北の平和条約は締結されていない状況です。
米国の大統領に、朝鮮戦争の「終戦宣言」を行う権利があるのか?と言うと、上院の3分の2の同意と助言があれば、憲法に抵触しない限り可能となっています。
もちろん、民主党は反対すると思いますが、上院では共和党が有利ですから、トランプ大統領としては終戦宣言をして平和条約の締結に結びつけたいところでしょう。
先の中間選挙で大敗したので、ここで朝鮮戦争の終戦宣言と平和条約の締結によって、自分の功績を残し、大統領を継続する資格があることを周囲に示したいからです。
日本への影響という点で、日本周辺の兵力を見ていると、朝鮮半島の北側にロシア・北朝鮮・中国が非常に大きな軍備を抱えていて、韓国・在韓米軍が南側で対抗する形をとっています。
そして周辺の兵力として、日本・在日米軍・台湾軍が存在し、にらみ合っている状況です。
このような状況で韓国が抜けるとなると、在韓米軍は一気に減少します。
そうなると、沖縄が北朝鮮に対する最前線基地になると同時に、日本全体にとっても非常に大きな問題が生じます。
それは北朝鮮のミサイルの脅威が日本に向かってくる可能性が高いからです。
今の状況だと米国に対する長距離弾道ミサイルは、遠慮して発射する可能性は低いと思います。
短距離ミサイルの射程圏内にある韓国が、北朝鮮と平和条約を締結してミサイルの危機を回避すれば、残るのは「中距離弾道ミサイル」の脅威です。
中距離弾道ミサイルの射程圏内のターゲットはまさに日本ですから、この問題は決して他人事ではありません。
日本の防衛費は対GDP比1%を下回っています。
貧弱ではありませんが、他の国に比べると明らかに米国の軍備に頼っています。
日本だけでは、北朝鮮の脅威を回避するのは難しいでしょう。
INF全廃条約の破棄は、日本と欧州がロシアのターゲットになることを意味する
日経新聞は8日、「核条約の死、日本の選択は」と題する記事を掲載しました。
これは米国とロシアが、中距離核戦力(INF)全廃条約の履行を停止したと紹介。
日本がやるべきことは、現在進めているロシアとの平和条約交渉にアジア極東への中距離ミサイル配備を控えるように要請すること、米国の「核の傘」が揺らがないように日米の連携を強化することだとしています。
米ロ間では、戦略兵器削減条約において大陸間弾道ミサイルの保有数などが全体的に制限されています。
そして、中距離弾道ミサイルについては、ゴルバチョフ書記長とレーガン大統領の時代に中距離核戦力(INF)全廃条約が締結されました。
ところが、実質的にこの条約は「ほぼ破棄」されたも同然の状況になっています。
米国はトマホークを開発し、いつでも中距離以上の核弾頭ミサイルに応用することが可能な状況です。
一方ロシアも、地上発射型巡航ミサイル「9M729」を開発していて、シリアの軍事介入でも巡航ミサイル「カリブル」を使用、その威力は証明されています。
そして今、米国もロシアも相手が条約を破棄するのであれば、それを受け入れる姿勢を示しつつあります。
INF全廃条約が破棄されれば、核兵器開発競争及びミサイル開発競争が再開されます。
これは日本にとって決して他人事ではありません。
ロシアからの中距離弾道ミサイルの射程圏内500キロというのは、欧州と日本がターゲットになるからです。
INF全廃条約を破棄させないように、日本としては全面的に動くべきです。
今の日本の対応は静かすぎます。
もっと強く主張するべきです。
決して米国とロシアの問題ではありません。
日本と欧州がターゲットになる戦いにつながっていくのだということを理解して、もっと重く受け止めるべきだと私は思います。
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※この記事は2月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、米朝首脳会談やINF全廃条約など、日本を取り巻く世界情勢とその脅威について、大前が解説しました。
北朝鮮・ロシアからの中距離弾道ミサイルの射程圏内に位置している日本。
一見、他国の問題にみえていても、これらが日本に大きな影響を及ぼす可能性は十分にあり、決して他人事ではありません。
近い将来、大きな変化が起きる可能性があるのであれば、まずは自身や周りへの影響を冷静に分析する必要があります。
そのためには、定量情報だけでなく、その背景に存在する定性情報も掴んでおくことが大切です。
日頃から視野を広く持ち、情報に対する感度を高めることが、突然訪れる危機への対応力を上げていきます。
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