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米シティ・米政府から追加支援
不良資産30兆円保証、公的資金追加1兆9200億円など
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●シティ救済策は、政府による犯罪行為とも言える愚行だ
23日、経営難に陥った米銀行大手シティグループは米国政府か
ら追加支援を受けることで合意したと発表しました。
シティグループが抱える不良資産3060億ドル(約29兆円)か
ら将来発生する損失のうち、米国政府が最大で2493億ドル
(約23兆9000億円)を肩代わりするほか、公的資金200億ドル
(約1兆9200億ドル)を追加で注入するということです。
この発表を聞いて私は呆れ果ててしまいました。これは金融危
機に対応した救済策などではなく、もはや米国政府による犯罪
行為だと言っても過言ではないと思います。
ガイトナーNY連銀総裁、ポールソン財務長官を始めとした米
金融界の有力者たちが、ロバート・ルービン元米財務長官(現
シティグループ顧問)に恩義を感じているために、無理矢理
シティを救済しようとしているとしか思えません。
すでにヴィクラム・パンディットCEOが発表していますが、シ
ティは4000億ドルの資産を今後2、3年で売却する予定です。
その中には流動性に乏しい、いわゆる「レベル3」と呼ばれる
資産も含まれ、その多くが取得価格より時価が大幅に下落して
いると予想されます。
私はこの発表を聞いた時に、シティは国有化を免れない状況に
あると確信しましたし、何度もその意見を述べてきました。
理由は簡単です。売却する資産は、価値が既に下落していたり、
市場での取引がなされておらず流動性が低いため、せいぜい半
額で売却できれば上出来というところです。
つまり、上手く売却出来ても20兆円の赤字を計上することに
なります。これでは会社としては倒産するしかないでしょう。
現在40兆円の中でも比較的売却しやすい10兆円を処理してい
ますから、今回の米国政府が保証対象とした30兆円というのは
「極めて」流動性が低い不良資産だと思います。
その30兆円についてシティは10%に相当する3兆円分のみを
処理すればよく、残りの90%に相当する27兆円分は政府が保
証するというのです。
不良資産取引の常識から考えても、これはあり得ない対応です。
実際に売却して見なければいくらの値段になるのか分からない
のに、売却前から金額を保証するというのです。
これならシティは好きな値段で売却することができます。そし
て、その損失分は政府保証という名で国民が負担するわけです。
最悪の場合、丸々30兆円に近い金額が国民負担となって圧し掛
かってくる可能性もあると思います。だからこそ、これは米国
政府による犯罪であり、米国民は決して許すべきではないと私
は強く主張したいのです。
●200年の歴史上、かつてないほど愚かな米国に成り下がった
また、シティグループは日本にある傘下の「日興シティ信託銀
行」を売却する方針を固めているとのことです。
日本円で4兆円余りに上る公的資金の受け入れで経営再建を目指
すシティグループの日本の事業にも、金融危機の影響が広がり始
めています。
今回の売却対象となった「日興シティ信託銀行」は、日興シティ
HDと米シティグループが50%ずつ出資している企業です。
シティグループは、この他にも日本で色々と手を広げて事業展
開を図ってきましたが、今後は次々と売却していくことになる
と思います。
例えば、日興シティHD傘下で主に投資事業を担っている「日
興プリンシパルインベストメント」なども候補になる可能性が
高いでしょうし、「日興コーディアル証券(個人向け)」
「日興シティグループ証券(法人向け)」「日興アセットマネジ
メント(資産運用)」なども後を追う可能性があると思います。
幸い今回の「日興シティ信託銀行」の売却に関しては、みずほ、
住友、三菱UFJの各信託銀行が興味を示しているとのことです
から、程なく決着するでしょう。
リーマン・ブラザーズを引き取った形になった野村HDが苦戦
しているように、「日興シティ信託銀行」の今後の経営について
不安視する人もいるようですが、私は心配していません。
「日興シティ信託銀行」はこれまでも日本で経営してきた企業
であり、信託銀行としての日本における事業の仕掛けをすでに
持っています。
後は単に数兆円と試算されている信託銀行市場のシェアを奪う
というシンプルな構図ですから、それほど苦労せずに経営でき
ると思います。
日本におけるシティグループの崩壊はそれほど大きな波紋を起
こすことなく進みそうですが、やはり問題なのは今回の米国に
おけるシティグループ救済策でしょう。
米政府は金融安定化法により公的資金枠70兆円を用意している
とのことですが、シティグループだけで30兆円も保証してしまっ
たらすでに破綻していると指摘されても致し方ないでしょう。
おまけに、30兆円もの保証をしてもらいながら、米政府が持ちう
るシティグループ株式は全体の4.5%が上限と定められています。
本来なら国有化すべきなのに、これほど甘い対応をするとは信
じられません。
これだけ「甘い」対応をすれば破綻する銀行はなくなるでしょうが、
これでは国家としての米国の経済力を超えていますから、銀行より
も国家が先に破綻することになると思います。
米国200年の歴史において、かつてない程に愚かな米国になってし
まった気がします。
そして、すでに私が知っている米国でもありません。私は今「さ
らばアメリカ」という本を執筆中ですが、こうした米国の変容
ぶりについては随時書き加えていきたいと思っています。