大前研一「ニュースの視点」Blog

KON761「レーダー照射問題/徴用工問題~韓国の反日感情はそれほど大きくはない。日本は大人の態度で接するべき」

2019年1月18日 レーダー照射問題 徴用工問題

本文の内容
  • レーダー照射問題 国際違反を知られたくなかった韓国
  • 徴用工問題 「判決は尊重せざるを得ない」

韓国国内でも「恥ずかしい」という意見が大半


JBプレスは8日、「レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国」と題する記事を掲載しました。韓国軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダーを照射した問題で、防衛省が公開した映像から韓国海軍の軍艦と北朝鮮の漁船などが日本の経済水域に集まっていたことが判明しました。韓国海軍が北朝鮮の漁船に燃料を提供するのを見られたくなかったため、射撃レーダーを照射して追い払った可能性があるとし、日本はこの国連制裁決議に反する行為の有無を引き続き監視すべきとしています。

日本の経済水域で北朝鮮の漁船にトラブルが発生した時、北朝鮮には助ける力はありません。そこで今回は、韓国海軍が北朝鮮の漁船を助けるべく動いたのでしょうが、北朝鮮の漁船に給油している様子が写真に収められていました。この行為は、国連の北朝鮮に対する制裁決議違反になるので韓国側は慌てたのだと思います。

さらに、今回日本の海自の哨戒機に対してレーダー照射する行為は、韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)にも違反しています。日本の海自からは3回ほど周波数を変えて応答を促したそうですから、当事者は違反を自覚しているのは間違いありません。

これを契機に安倍首相は韓国を責めるべきだという意見もありますが、私は放っておけばいいと思いますし、文在寅政権は北朝鮮と一体化して統一コリアを目指す方向性ですから、今さらこのような行為に驚くこともありません。

またこのような韓国の問題については、国際社会はもちろん、実は韓国国内でも認識されています。今回の事件について報じている中央日報の記事を見ると、「韓国として恥ずかしい」という論調でした。韓国の漁船がひっくり返っても韓国海軍が助けることはないのに、北朝鮮の漁船を助けるためになぜ動いているのか全く理解できない、と。

ですから、日本があえてこれ以上追求してもそれほど意味がないと私は思います。

日本が韓国に期待するのは、北朝鮮からの拉致被害者の奪還支援ですが、文在寅政権になってからは完全に日韓の利害は一致していないので、かなり難しいと思います。韓国自身も拉致被害者がいるのに追及をしていないのですから、なおさらでしょう。

文在寅大統領が思い描くのは、統一コリアを実現した上で韓国が主導し、自分がその頂点に君臨することかも知れません。金正恩委員長は北朝鮮でも尊敬されていませんから、仮に統一コリアが実現したとしても彼がトップに選ばれることはないと思います。

あるいは文在寅大統領はそこまで想定せず、かつての上司でありノーベル平和賞を受賞した金大中元大統領のようになりたいのかも知れません。




韓国の反日感情はそれほど大きくはない。日本は大人の態度で接するべき


韓国の文在寅大統領は10日、韓国大法院が日本企業に元徴用工への賠償を命じる確定判決を出したことについて、韓国は三権分立の国であり、韓国政府は司法判断を尊重せざるを得ないとの認識を示しました。また「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させているのは賢明ではない」と述べ、日本側の対応を批判しました。

まず日本の報道では、文在寅大統領が「日本を批判した」という点を大きく取り上げていますが、実際の演説内容の9割は「経済問題について尽力する」という内容でした。偶然、質疑応答の際に、韓国語を話せるNHKの高野記者を指名してしまい、そのような質問を受けたために回答したものでした。むしろ文在寅大統領としては、特に日本との問題に触れたいという意図はなかったはずです。

日本政府としては日韓基本条約の中で、この問題はすでに解決済みと認識しています。韓国側も日本から支払われた総額8億ドルの賠償金が韓国の発展に貢献したということを、分かっている人は大勢います。

すでに終わっていることですから、取り立てて騒ぐ必要はなく、この問題も放っておくのが一番良いと思います。新日鉄住金が徴用工への賠償金支払いを命じられたと言っても、はっきり言って蚊に刺された程度の影響しかありません。

文在寅大統領は日本との対立を煽るような態度を示すことがありますが、実は韓国という国にとって最大の敵は韓国人です。韓国で世論調査をすると、自国=韓国を嫌う人の割合はかなり高いのです。韓国の社会は、良い大学を出て役人になるか財閥に入るかしないと幸せになれないという構造になっています。そのような構造に嫌悪感を持っている韓国人は大勢います。日本人の話題を持ち出すのは、この根本的な問題を解決することは出来ないので、致し方なくやっているに過ぎません。

実際、韓国人のブログなどを見ると8割は「韓国、いい加減にしろ」という論調で自国を批判しています。政治の世界と一般人の感覚は大きく違います。

ですから、日本としてはあまり真剣に韓国に対して騒ぎ立てる必要はなく、安倍首相も韓国を追及するような態度ではなく、もっと大人な態度で落ち着くべきだと思います。国籍別の訪日外国人の中で、韓国人は上位にランクします。日本にとって韓国は「良いお客様」といえる面もあるので、大事にするべきだと私は思います。



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※この記事は1月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、日韓関係の話題を中心にお届けいたしました。

日韓関係の話題について様々な報道がされていますが、
日本としてはあまり真剣に韓国に対して騒ぎ立てる必要はなく、
安倍首相も韓国を追及するような態度ではなく、
もっと大人な態度で落ち着くべきだと
大前は記事中で指摘しています。

昨今の国際情勢や、国内政治の状況の中、
今を生き抜くために個人でできることは、
『情報を集め、自分の意見を形成する能力を磨く』ことです。

報道を鵜吞みにし、目先の結果を見て騒ぐのではなく、
まず、事実を把握し、前提となる法律や制度にも
疑問を持つことが重要です。

自分で疑問を持ち、自分で調べるという姿勢が身につけば、
それだけで強力な力を持つことができます。

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工夫をするための「自分で考える力」が大切です。



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