大前研一「ニュースの視点」Blog

KON758「米中貿易戦争/中国諜報活動/台湾・鴻海精密工業~ファーウェイが諜報活動に与せず、グローバル化する唯一の方法とは?」

2018年12月28日 中国諜報活動 台湾・鴻海精密工業 米中貿易戦争

本文の内容
  • 米中貿易戦争 米中摩擦、衣料大国に恩恵
  • 中国諜報活動 中国「国家情報法」、米に衝撃
  • 台湾・鴻海精密工業 中国に最新鋭半導体工場新設へ

電子部品などの製造は簡単に中国からバングラデシュなどに移せない


日経新聞は13日、「米中摩擦、衣料大国に恩恵」と題する記事を掲載しました。世界のアパレル各社が中国から周辺国に生産拠点を移す動きが加速しています。昨今の人件費の高騰に加え、米国が中国の通信会社に課した制裁が各社の工場移転を後押ししており、バングラデシュ、ベトナムの衣料品輸出のシェアが急拡大しているとのことです。

と言っても、基本的に急拡大しているのは衣料関係のみで、その他への広がりは期待できないと思います。衣料関係の業務はミシンをかけるような労働集約型で、このような業務については、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマー、最近ではエチオピアにも中国企業が進出しています。

しかし、部品を組み立てるような業務、特に発注から出荷までの時間(ターンアラウンド)が短い電子製品などになると、バングラデシュやミャンマーなどでは技術的に対応できないと思います。加えて港湾施設の処理能力が中国ほど高いわけではありません。中国は大連を皮切りに上海や深センに港湾施設を建設しましたが、同じようなものを用意することはできないでしょう。

実際バングラデシュの輸出品目を見れば、織物とニットが圧倒的に多くなっています。日本も途上国のときには、絹織物など労働集約型のものが中心でした。最初の日米貿易戦争は、日米繊維交渉だったのも、その事実を物語っています。

中国は米国と激しい貿易戦争を繰り広げている中、「中国製造2025」という目標を明文化し、火に油を注いでいるような印象を受ける人もいるかも知れません。しかし私に言わせれば、大半の経営者は数字目標を掲げるものであり、それ自体は問題ではありません。

問題は、目標が現実に着実に進んでいることです。時価総額が高い企業が続々と現れ、AI技術も発達し、米国の予想をはるかに上回るスピードで成長しています。この中国の成長そのものが米国の反感を買っているのだと思います。





ファーウェイが諜報活動に与せず、グローバル化する唯一の方法とは?


日経新聞は20日、『中国「国家情報法」米に衝撃』と題する記事を掲載しました。米国がファーウェイ製品などの締め出しを強化する背景には2017年中国で施行された「国家情報法」に絡む危機感があります。この法律には「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」と明記されており、通信機器などのハード面と人的情報活動の脅威に対し、米国は中国への警戒をかつてないほど強めているとのことです。

ZTEやファーウェイの問題も絡んでいることですが、そもそもこれは中国国内で実施されていることです。中国では中国共産党が、国内の企業や反政府勢力の台頭を抑えるために、国内の電子機器やサーバーから直接データを取得できるようになっています。ファーウェイなどがそのような施設を作り、政府による諜報活動を可能とする「仕組み」を提供しているということです。

こういう企業がグローバル化してしまうと、「その仕組み」もそのまま世界に展開されてしまいます。これを防ぐのは非常に難しいでしょう。ファーウェイは非常に能力が高い企業ですが、それでも一筋縄ではいきません。

もしファーウェイがグローバル化しようとするなら、国内部門はZTEと合併し、残った部分をファーウェイグローバルとして、ボードメンバーをグローバル化すること(中国人だけにしないこと)が必須だと私は思います。

なお、中国政府が施行する「国家情報法」に対して米国は「衝撃」を受けたとありますが、そんなはずはありません。米国にしても、中国に負けず劣らず同じようなことをやっているはずです。サーバーも監視しているでしょうし、エシュロンという仕組みもあります。米国内ではテロ対策として常時監視は当たり前のはずです。

米国がやるのはいいが中国はダメ、というのもおかしな話で、米国も中国もどっちもどっちだと思います。





鴻海が新設する巨大な半導体工場


台湾・鴻海精密工業は、広東省の珠海市に大規模な半導体工場を新設する見通しが明らかになりました。新工場には子会社のシャープが持つ半導体技術を活用すると見られ、総事業費は1兆円規模にのぼる見通しです。

補助金や税金の減免などを通じて、大半を珠海市政府などが負担する方向で協議しているそうで、かなり巨大な工場になると思います。珠海市は香港と橋でつながり、製造関連が活発化しているので今後も楽しみな地域です。

鴻海はTSMCやサムソンからも膨大な量の半導体を購入しています。そんな中、シャープは鴻海グループの中で唯一半導体を製造していたので、このプロジェクトの声がかかったのでしょう。鴻海が上手くシャープを立ててあげた形です。




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※この記事は12月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています





今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、米中貿易戦争の話題を中心にお届けいたしました。

中国は米国と激しい貿易戦争を繰り広げています。

この話題に対して大前は、問題は、
「中国製造2025」という目標を明文化したことではなく、
米国の予想をはるかに上回るスピードで成長し、
中国の成長そのものが米国の反感を買っている
と記事中で言及しています。

米中対立の激しさが増す中、日本や日本企業も
かじ取りを誤れば自らの首を絞める事態に直面しかねません。

このような不確実な状況では、
PEST分析のようなマクロ環境分析を行い、
大局観を掴むことが大切となってきます。

環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて
戦略を立案することが重要となってきます。



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