- 本文の内容
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- 世界経済 世界の企業、家計の債務総額
- 英中央銀行 デリバティブ元本6000兆円に不安定化リスク
- 欧州環境規制 乗用車のCO2排出規制を協議
- ナウル情勢 "盛者必衰"ナウルの転落
英国ブレクジットから派生する金融問題は、世界的な金融危機につながる可能性も
国際通貨基金(IMF)が公表した世界金融安定報告によると、政府や金融機関を除く民間企業、家計が抱える全世界の債務総額が167兆ドル(約1京9000兆円)となり、リーマン・ショックが起きた10年前と比べ5割近く増えたことが分かりました。危機に対応するため日米欧の中央銀行が大規模な緩和策を実施したことで、経済成長を上回るペースで債務が拡大したとのことです。
金融経済が実体経済よりも5割ほど大きくなっているということは、ラックマンデーが起こった時と極めて似ている状況です。世界中が金融拡大をしてしまった結果、不安定な状況が生まれたのです。今年になってから米国は2回ほど大きな株価の下落があり、他の国も同様に下落しましたが、まだまだ「下げ足りない」ということでしょう。
この問題も重要ではありますが、短期的にはさらに世界経済を揺さぶるリスクが大きいのが、英国のEU離脱(ブレクジット)に絡む経済問題です。
英中央銀行のイングランド銀行はブレクジットが条件合意なしの「無秩序離脱」となった場合、最大で41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告しました。これらは2019年3月末のEU離脱後に満期を迎えるものの、EUの法体系から切り離された場合、既存の契約がどう扱われるか定まっていないためで、イングランド銀行は混乱を回避するため国内の銀行に離脱後の数日間、6時間ごとにバランスシートの状況をチェックするよう求めたとのことです。
問題なのは、デリバティブ取引の中央清算機関として、ロンドン証券取引所のLCHクリアネットがそのほとんどを取り扱っていることです。英国が合意なしの離脱をした場合、欧州の金融機関はLCHクリアネットを利用することができなくなってしまいます。
欧州の中には、デリバティブの清算拠点など金融センター機能を英国から奪う思惑を抱いている国もあるようですが、一朝一夕にはいかないでしょう。今は完全にLCHクリアネットに依存しています。この機能を他の国に移すと言っても、経験と信用も非常に重要であり、6000兆円ものクリアリング機能を一気に移すことは、極めて難しいと私は感じます。
さらにもう1つ、英国の保険会社の問題も重要です。EU市民向けに提供している保険契約の扱いがどうなるのかも不透明な状態です。
このような状況を見れば見るほど、もう1度英国でEU離脱について国民投票をしたほうがいいのでは?と思います。前回の投票時には、今回のような恐ろしい話は表に出ておらず、国民は理解していなかったはずです。
先日も英国内ではEU離脱に反対する大規模なデモが行われていました。英国メイ首相は迷走状態に陥っています。欧州のトップが集合する場に居合わせても、「合意」を得るのではなく、「同情」を買うばかりです。
英国の金融問題は極めて重要です。ここから世界的な金融危機がトリガーされる可能性も十分に考えられます。かなり神経質に注意しておく必要があると私は見ています。
欧州のCO2規制、2030年までの目標が間もなく決まる
欧州連合(EU)は9日、加盟28カ国の環境相理事会を開き、域内で販売する乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに21年目標に比べて35%削減する環境規制案で合意しました。今後、欧州委員会と欧州議会と3者で法制化への交渉に入り、年内にも合意したい考えです。
自動車メーカーが多いドイツなどは、30%程度に抑えてほしいという要望を出していて、一方で北方の国は40%程度まで引き上げたい思惑があり、間を取って35%での合意に至ったのでしょう。35%削減では足らないという人もいますが、とりあえずは28カ国が合意しないと始まりません。あと数ヶ月のうちに、2030年までの目標が決定されることになります。
この欧州の動きに対して米国政府は「知ったことか」という態度ですが、米国は州別に規制をしていて、カリフォルニア州など複数の州ではEUよりもはるかに厳しい制限を設けています。トランプ大統領は、州に勝手に規制を作られるのは困るなどと発言して牽制していますが、カリフォルニア州などがこの件に関してトランプ大統領に屈することはないだろうと思います。
ナウルに残された希望の道は、台湾にあり
共同通信は10日、「採り尽くし、経済破綻 “盛者必衰”ナウルの転落」と題する記事を掲載しました。南太平洋に浮かぶ世界で最も小さい島国ナウルの現状を紹介しています。かつては貴重な農業肥料となるリン鉱石を採掘し輸出することで莫大な富を得て中東の産油国と比べられるほどの財政力を誇ったものの、現在はリン鉱石をほぼ取り尽くし経済も破綻しているとのことですが、この記事内容はやや浅い部分があると私は思います。
ナウルは太平洋、ミクロネシアの南に位置する島国。ナウル島はサンゴ礁の上に海鳥の糞が積み重なってできた島で、糞の化石にリンが含まれていたため、莫大なリン鉱石の採掘が可能になっていましたが、20世紀になり英・豪・ニュージーランドが搾取し、また独立後もリン鉱石の輸出に過度に依存したため、リン鉱石は事実上枯渇し、経済は破綻状態に陥っています。
そんなナウルの将来について私が提案したいのは台湾による買収です。ナウルは独立国として国連に加盟しています。台湾はずっと前から国連の席を欲してきましたが、いまだに実現していません。
一昔前なら、国連に加盟したいならパラオを買収すればいいと私は台湾に提言していましたが、人口2万人のパラオよりも人口1.4万人のナウルのほうが「お買い得」です。またパラオは中国になびく可能性も見せていますが、ナウルにはそのような動きも見られません。パラオと違って観光業もなく、打つ手もない状況です。
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※この記事は10月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、世界経済の話題を中心にお届けいたしました。
全世界の債務総額が167兆ドル(約1京9000兆円)となり、
経済成長を上回るペースで債務が拡大しています。
大前はこの金融経済の状況について、
ブラックマンデーが起こった時と極めて似ている
と記事中で指摘しています。
また、英国の金融問題にも触れ、
ブレクジットから世界的な金融危機が
トリガーされる可能性も十分に考えられるため、
かなり神経質に注意しておく必要があるとも言及しています。
このように、起きている現象に対して、
ファクトをしっかり把握し、なぜそのような現象が起きたかを
冷静な視点で俯瞰して考察することが大切です。
同じように見える現象でも、構造の本質は異なってきます。
問題の構造分析を行い、それがどのような影響を与えるのかを
過去の歴史などから予測することが重要です。
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