大前研一「ニュースの視点」Blog

KON743「信越化学工業/日本電産/米エアビーアンドビー/クックパッド~信越化学工業の金川氏、日本電産の永守氏。日本を代表する経営者の手腕」

2018年9月14日 クックパッド 信越化学工業 日本電産 米エアビーアンドビー

本文の内容
  • 信越化学工業 シリコーン5割増産へ
  • 日本電産 「永守流」分権型シフト
  • 米エアビーアンドビー 別府市旅館ホテル組合と提携
  • クックパッド ウミーベを買収

信越化学工業の金川氏、日本電産の永守氏。日本を代表する経営者の手腕


信越化学工業は3日、車の樹脂部品や化粧品などに幅広く使うシリコーンの生産を増強するため、日本、米国、タイなどの工場設備に1100億円を投じると発表しました。シリコーンは増産していた中国勢が環境規制で工場の操業を停止したほか、米国が中国に追加で制裁関税を課したことで価格が上昇するなど需給がひっ迫しています。信越化学はこれらに対応するため、世界の拠点から供給できる体制を整える考えとのことです。

信越化学工業といえば、金川千尋氏が90歳を超えて代表取締役会長を務めています。最高齢の経営者の一人であり、今回の対応然り、今なお鋭い経営判断力を持っていると思います。信越化学工業の業績を見ると、塩ビ・化成品、半導体シリコン、電子・機能材料、シリコーンなどいずれの部門でも利益が出ていて、また全てが前年を上回っています。特に、塩ビ・化成品、半導体シリコンの2つの部門の伸びは素晴らしい状況です。

米トランプ大統領が騒ぐために、米国でシェールガスを使った塩ビ新工場を設立するなど、柔軟に対応しています。塩ビ事業は、良い時と悪い時が非常にはっきりしていて難しい局面もあるはずですが、見事に乗り切っています。限界サプライヤーであれば憂き目を見る一方で、トップサプライヤーとして安定しています。

90歳を超えても、周囲から金川氏に対する辞任要求などの話は聞いたことがありません。米トランプ大統領への対応なども含め、不連続リスクを抱えない経営手腕は見事だと感じます。


日経新聞は4日、『「永守流」 分権型シフト』と題する記事を掲載しました。日本電産はドイツの産業ロボット部品メーカー、MSグレスナーを買収すると発表しました。今回は子会社の日本電産シンポが買収を主導するとのことで、世代交代や事業規模の拡大をにらみ、「永守流」経営を伝授しながら権限を委譲する新たな段階に入ったとしています。

永守氏と言えば、これまでに60社を超える企業を買収し、その全てを黒字化させたという驚くべき実績を持っています。一般的に、M&Aの成功率は10~15%程度ですから、60社全てが黒字化というのは世界でも例を見ません。さらに、全てを1年以内に黒字化させているのですから驚異的です。

日本電産の売上高を見ると、主力事業の精密小型モータなどは伸び悩んでいます。ゆえに、車載・家電などその他あらゆる事業を付け加えていかないと、永守氏が目指す成長は達成できないでしょう。1兆円を達成し、次は2兆円を目指すということですから、M&Aしか実現の道はありません。今回のグレスナー買収も、その一貫です。

日産自動車から日本電産へうつり、2社の企業再生に携わった川勝宣昭氏の話を聞く機会がありました。川勝氏曰く、日産が10年単位で考えるようなことを日本電産ではその何分の1で実行するように求められる、とのことでした。買収した会社に、「一人で行って立て直してこい」「しかも1年以内に黒字化」と言われるのです。

川勝氏が言うには、永守氏は相当細かいところまで要点を詰め指示を出すそうです。私もそこまで細かい点について指示をしていたとは、初めて知って驚きました。日産では10年かかっていたかもしれない企業の立て直しも、永守氏のプレッシャーのもとで「永守流」でやってみたら2社とも1年で黒字化できたということでした。

今回買収を発表したグレスナーの傘下には6社が入っています。1社ずつ別の人間に担当させるのかも知れませんが、今まで以上にハードルが高く、新しいチャレンジになると思います。これまで通り、見事に成功をおさめるのか楽しみです。

「永守流」が素晴らしい成果をあげている一方で、永守氏が居なくなった後、同じように細かい視点を持って指示できる人はいるかどうか。これは非常に難しいところだと思います。





エアビーアンドビーが、一時的に民泊法を回避する手段に出た


米エアビーアンドビーは先月27日、別府市旅館ホテル組合連合会と提携したと発表しました。別府市は2019年に開催されるラグビーワールドカップの公認キャンプ地となっており、宿泊施設のエアビーアンドビー登録で海外からの集客の拡大につなげたいとのことです。

日本では民泊法が施行されてから、エアビーアンドビーへの登録は激減していました。一方で、エアビーアンドビーのシステムはよく出来ていますし、海外からの旅行者は変わらずエアビーアンドビーを利用したいと思っている人が多いのです。

そうであれば、伝統的なホテルや旅館もエアビーアンドビーを経由して、一般旅行客を取り込んだ方が早い、ということになります。旅行会社と提携しても、さほど集客効果がないことも多いですから、エアビーアンドビー経由のほうが確実です。別府市旅館ホテル組合連合会には111軒の旅館やホテルが加盟しているそうですから、結果がどのようになるのか、私としても非常に興味があります。

エアビーアンドビーとしては、日本において一時的に民泊法を掻い潜るための方法だと思います。私に言わせれば、民泊法自体が理不尽なもので、いずれは民泊を認可するようにならなければ3000万人を超える外国人観光客を受け入れる体制は整いません。以前、訪日外国人観光客数が3000万人を超えたときには、エアビーアンドビーで600万人を吸収しました。日本としては、普通に民泊ができるように前向きに進んでいくべきです。



クックパッドと連携し、釣り情報サイトの圧倒的ナンバーワンの地位を目指す


クックパッドは先月24日、釣り情報サイト「ツリホウ」などを運営するウミーベを買収したと発表しました。ウミーベは渡部一紀CEOが2014年に創業。月間200万回以上閲覧されるサイトをわずか4日で作り上げました。クックパッドは渡部氏の手腕を評価し、今回の買収に至ったとのことです。

クックパッドは主に主婦や独身の人が、閲覧・引用する回数が多いメディアサイトです。このメディアから釣り情報サイトにアクセスを流すこともできるでしょう。釣り情報サイトは、まだ圧倒的なメディアサイトが誕生していないので、クックパッドと連携させることで一気に地位を確立することを狙えます。

逆に釣った魚などをどのように料理するのかという視点で、クックパッドを強化することもできるので、いろいろな形でシナジーを発揮できる可能性があります。


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※この記事は9月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題をお届けいたしました。

日本電産はドイツの産業ロボット部品メーカー、
MSグレスナーを買収すると発表しました。

一般的に、M&Aの成功率は10~15%程度と言われる中、
永守氏は、これまでに60社を超える企業を買収、
その全てを黒字化させたという驚くべき実績を持っています。

また、全てを1年以内に黒字化させていることに対して、
驚異的だと大前は記事中で言及しています。

M&Aの成功の条件は、買収直後から経営力を発揮し、
経営資源を統合させるプロセス(PMI)を徹底し、
スピーディーに統合を完了させることです。

買収に成功したら終わりというものではなく、
早期にシナジー効果を実現するために、
経営トップの強いリーダーシップによって
迅速な統合を進めていくことが必要となります。


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