大前研一「ニュースの視点」Blog

KON736「旭化成/外資系スーパー/ポーラ・オルビスHD/配車サービス/セブン-イレブン・ジャパン~ウォルマート日本撤退は既定路線」

2018年7月27日 セブン-イレブン・ジャパン ポーラ・オルビスHD 外資系スーパー 旭化成 配車サービス

本文の内容
  • 旭化成 セージ・オートモーティブを買収
  • 外資系スーパー 「黒船」、相次ぐ日本撤退
  • ポーラ・オルビスHD 内紛泥沼化で汚れるブランド
  • 配車サービス 日本市場参入へ合弁会社設立
  • セブン-イレブン・ジャパン コンビニ「ちょい生」中止騒動

旭化成の買収は合理的


旭化成は、自動車の内装材などを製造する米セージ・オートモーティブ・インテリアズを約7億ドル(約791億円)で買収すると発表しました。

旭化成は人工皮革の商品などをセージ・オートモーティブ・インテリアズに納入しているので、すでに両社に関係性はあるのでしょう。自動車業界が衰退していく潮流において、この値段で買収に踏み切ったのは思い切った決断だと思います。自動運転や電気自動車になっても、座席などの需要は減るわけではないので、この買収はある程度合理的だと言えるでしょう。

残念なのは、もう少し早く買収していれば、それこそ自動車業界の最盛期を謳歌できたでしょう。買収に合理性は見られますが、タイミングはもったいない点があると感じます。




ウォルマート日本撤退は既定路線


時事通信は14日、『「黒船」、相次ぐ日本撤退』と題する記事を掲載しました。2000年前後に鳴り物入りで日本市場に参入し、「黒船」と呼ばれた海外の大手スーパーが相次ぎ撤退しているとのこと。

カルフールやテスコはすでに撤退しています。ウォルマートは、撤退の決定はしていないものの、撤退に向けて動いている事実は確認されています。コストコやメトロは独自に健闘していて、特にコストコは根強いファンを獲得しています。ユニークな商品開発にも成功しています。そのようなことができなければ、「Everyday low price」だけでは生き残れない時代になったということでしょう。

ウォルマートの海外店舗数を見ると、日本の店舗数は300店を超えていますが、それでも4年前と比べると、100以上も店舗数を減らしています。ブラジルも同様に4年前と比べて、店舗数を減らしています。日本もブラジルも撤退するというのは、当然の流れでしょう。




ポーラの内紛は残念の極み


ビジネスジャーナルは20日、「化粧品のポーラ、内紛泥沼化で汚れるブランド」と題する記事を掲載しました。今年2月、各週刊誌がポーラ・オルビスのお家騒動を報じました。鈴木郷史社長の元側近が鈴木氏の不正を暴くメールを取締役などに宛てて一斉に送信したというもの。これをきっかけに2000年に亡くなったポーラ2代目社長の千壽夫人が、遺産相続をめぐり鈴木社長を提訴したとのことです。

不正を暴くメールを送信した人という元側近の一人も、社長になる約束だったのに反故にされたという話があるとも聞きます。何ともレベルが低すぎる話で呆れるばかりです。ポーラ・オルビスは、海外比率は低いものの、営業利益率も高く、非常に優秀な経営をしていました。それだけに、残念でなりません。




ライドシェア規制は日本だけではない


ソフトバンクは19日、中国配車アプリ大手の滴滴出行とタクシー配車サービスを手掛ける合弁会社を設立したと発表しました。新会社はスマホアプリでタクシーを呼ぶことができるサービスを展開する他、AIを活用しどの場所にどのくらいの乗車需要があるかを事前に予測するシステムをタクシー会社に提供します。滴滴出行はアリババから出資を受けていて、ご存知のとおりそのアリババにソフトバンクは投資しています。

孫社長が日本政府によるライドシェア(白タク)サービスの規制に対して「こんなバカな国はない」と批判したことが報じられていますが、これは孫社長の発言が間違っています。世界の主要国のライドシェア(白タク)への対応状況を見ると、すぐに理解できます。

米国はカリフォルニア州など一部で許可しているだけで基本的に禁止、英国・フランス・ドイツ・日本・韓国・台湾・シンガポールはすべて禁止です。孫社長は日本だけがバカなことをやっていると批判したわけですが、他の国も同様です。逆に中国だけが実質無法状態で、旅客運送に関する法整備が追いついていないだけです。それゆえ、滴滴出行がシェアの9割を獲得することができたのです。

私も個人的には市場を開放しても良いのではないかと感じますが、今回の発言は別問題です。滴滴出行、グラブ、ウーバーなど自分が配車アプリの企業に投資したからといって、それを正当化するために、国を批判するのはおかしな話ですし、経営者としてあるまじき姿勢でしょう。この点では孫社長ももっと勉強してから発言するべきだと思います。




セブンイレブンの生ビールサービスは勇み足


まぐまぐニュースは20日、『コンビニ「ちょい生」中止騒動。セブンイレブンは何を誤ったのか』と題する記事を掲載しました。セブンイレブンの一部店舗で17日から試験販売が始まる予定だった「生ビールサーバー」が想定を大幅に上回る反響で中止になったとのことです。

コーヒーを販売している横で、ジョッキで飲めるビールを販売するというのは非常に魅力的に感じます。日本はアルコール類の販売について他の国に比べると規制は緩やかです。日本に来た外国人の多くは、自販機でアルコール類が売っていることに驚きます。

しかし、今回のようにコンビニの店内で、気軽に飲めるような形でアルコール類の販売をするとなると、未成年者や運転手への販売など考慮すべきことが多々あります。セブンイレブンとしても、今回のことは調子に乗りすぎて事前の調整などを怠って進めてしまったのでしょう。


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※この記事は7月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

2000年前後に鳴り物入りで日本市場に参入し、
「黒船」と呼ばれた海外の大手スーパーが
相次ぎ撤退しています。

コストコやメトロのような、
根強いファンの獲得やユニークな商品開発に成功している
海外の大手スーパーもありますが、
「Everyday low price」だけでは、
生き残れない時代になったと大前は指摘しています。

将来の環境を見通して、今後どのような市場が伸びるのか、
どういう差別性をとればよいのかを考えることは非常に重要です。

どこまで将来を見通すかは業界によって変わりますが、
ベースとなる環境変化を合理的に想定しておくことが大切です。

2~3つ違う未来を予想し、それぞれの未来について話し合うだけでも、
その環境が出現したときに素早く対応することができます。

どのような差別性をとればよく売れるのか?
今後、競合に勝つための事業のKFSはなにか?
など、競合より先を見通すことが重要です。



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