大前研一「ニュースの視点」Blog

KON735「民泊/在日外国人/財政健全化~外国人観光客を4000万人レベルで受け入れるには、民泊以外の道はない」

2018年7月20日 在日外国人 民泊 財政健全化

本文の内容
  • 民泊 民泊営むと課税4倍も
  • 在日外国人 日本で暮らす外国人が過去最多
  • 財政健全化 中長期の経済財政試算提示

外国人観光客を4000万人レベルで受け入れるには、民泊以外の道はない


日経新聞は7日、「民泊営むと課税4倍も」と題する記事を掲載しました。これは民泊新法が6月15日に施行され、民泊が本格的に解禁されたものの税金については注意が必要だと指摘しています。民泊で得た収入は「雑所得」となるため、他の所得区分と損益通算ができないことや居住する家の半分以上を民泊で使用する場合、固定資産税の特例措置が受けられず、場合によっては納付税額が4倍以上になることもあるとのことです。

民泊新法が制定されても、税金の問題については浮いていましたが、正直、ここまで「いじめる必要があるの?」と言いたくなります。不動産所得ではなく、雑所得とするため赤字が出たときには損益通算ができない、半分以上を民泊として利用すると居住用として認められないため、固定資産税や相続税の軽減措置が適用外となる、など厳しすぎると感じます。

そもそも、インバウンド(訪日外国人旅行)を3000万人、4000万人に増やしたい、ゆくゆくは6000万人まで増やしたいと言っておきながら、このような対処をするのは矛盾しています。インバウンドを3000万人、さらには6000万人まで増やす唯一の道は、民泊です。

新しい民泊などを叩くばかりで、結局のところは、大したこともやっていない既得権益の旅館やホテルを守ろうとしているだけです。既存の旅館やホテルだけでは、1900万人までしか対応できないことは既に判明しています。本当にインバウンドを3000万人、4000万人、あるいはそれ以上受け入れたいなら、その体制を整えるべきです。

将来に対する正しい道を示せていないという点では、日本で暮らす外国人の数においても同様で、政府の行き当たりばったりの対応が見て取れます。総務省が11日発表した人口動態調査によると、日本で暮らす外国人の数が1月1日時点で249万7000人と過去最多を更新しました。全国で最も増加率が高かったのは、北海道夕張市で訪日客への対応強化のため、観光施設での採用が増えたことが背景にあります。

ポリシーもルールもないままに人数だけが増えてきて、すごい状況になってきています。外国住民の比率は、東京都全体で見ると約3.8%ですが、一部の区では異常に高い水準になっています。新宿区の外国人比率は、20~24歳では約62%に達します。15~30歳で見ても、約30%が外国人です。新大久保や大久保だけではなく、全体的に外国人が増えています。そして、東京都全体で見ても10代に限れば、約1割が外国人です。




2025年でもプライマリーバランスは黒字化の見通しなし


内閣府は9日の経済財政諮問会議で、中長期の経済財政に関する試算を示しました。これは今後高い成長率が続いても、国と地方を合わせた基礎的財政収支は2025年度に2兆4000億円の赤字となり、政府が目標とする黒字化には、同程度の歳出削減か歳入の増加が必要としたもので、これを受けて安倍首相は茂木経済再生担当相に対し、目標達成に向けて歳出削減の工程表を取りまとめるように指示したとのことです。

プライマリーバランスは2020年に黒字化の予定でしたが、いつの間にか2025年に変更になっています。その2025年でさえも、2兆4,000億円も足りないというのですから、まったく話になりません。2025年に黒字化するためには、政府が定めた「成長実現ケース」としての経済成長が見込まれています。その「成長実現ケース」では、GDP成長率が毎年3%と定めているのですから驚きです。何を根拠に毎年3%のGDP成長率を見込めるというのでしょうか。

はっきり言えば、役人も政治家もわかった上で嘘をついているとしか思えません。今一時的に税収が増えていますが、その増えた税収を借金返済に使うという話にはなっていません。私に言わせれば、選挙を見据えた「無駄遣い」の議論ばかりを繰り返しています。

2025年になってもプライマリーバランスを黒字化できないのは明白です。そして、GDP成長率が2%以下では、永遠に達成することは不可能でしょう。しかし、この本音を言った途端に日本の国債が暴落してしまいます。GPIFも日銀も、内部から爆発することになり、とんでもない状況を招いてしまうことになります。

GDPに対する国債の割合でみると、日本は最悪でイタリアよりも悪い状況です。一般会計歳出の内訳を見ると、社会保障費が約33兆円あります。この費用は膠着化していて、なかなか減らすことができません。減らすとなると、高齢者の反発にあって選挙に影響することになります。

公共事業などの費用は削減傾向にありますが、国債費と社会保障費という膠着化して減らせない費用で約50%に達していますから、日本の財政はかなり危機的な状況だと思います。



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※この記事は7月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、民泊の話題を中心にお届けいたしました。

民泊新法が6月15日に施行されました。

民泊が本格的に解禁されたものの税金については
場合によっては納付税額が4倍以上になったり、
赤字が出た時には損益通算が出来ないなど、
インバウンドを増やしたい政府の意向と
矛盾した対処となっていると大前は指摘しています。

選択した解決策の効果や影響を考えなければ、
本末転倒になる恐れがあります。

影響の連鎖の探求を行った上で、
何に取り組むべきなのかを取捨選択する必要があります。



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