大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON233不況到来で消費抑制・・・だが不況に強い会社も存在する~大前研一ニュースの視点~

2008年10月24日

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米景気 米不況長期化の恐れ
7‐9月期からマイナス成長の見通し
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●米不況が長期化する根拠とは?


 昨年10‐12月期に小幅のマイナス成長になり、その後
 いったんは復調した米国の景気が、今年7‐9月期から
 再び水面下に沈みつつあります。


 3四半期連続のマイナス成長が懸念さざれ、不況が長期化する
 見通しが強まっています。


 私は何度も述べていますが、このような金融危機は大きく
 3つの段階を経て推移していきます。


 第1フェーズは流動性危機。
 第2フェーズは不良資産の償却。
 そして、
 第3フェーズが銀行の貸し渋りによる事業会社の倒産です。


 現在の世界金融危機は第1フェーズに位置しています。
 ですから、今は世界各国が協力して流動性危機に対応できる
 ような資金を集約させることに集中するべきだと
 私は主張しているわけです。


 ところが現在の米国は、これらのフェーズが同時に
 発生しているという非常に厳しい状況になっています。


 例えば、最近発表された「米国住宅着工件数」と
 「米小売売上高」という景気を占う指標が悪化の一途を
 辿っているのを見ても肌で感じることができます。


 「米国景気の不況は長期化する」可能性の高さを示唆しています。


 米商務省が10月17日発表した9月の住宅着工件数は、
 季節調整済みの年率換算で81万7000戸となり、前月に比べて
 6.3%減。減少は3カ月連続で、約17年半ぶりの低水準。
 低迷が続いている米住宅投資は一段と減速感を強めています。


 この数年の米国住宅着工件数の推移を見ると、
 2005年~2006年といったピーク時には200万件を超えていた
 住宅着工件数が、今では80万件まで激減しています。


 まさに半減以下といった水準にまで落ち込んでいますが、
 私の見込みとしては80万件でも多く、まだこれから
 減少していく可能性が高いと思います。


※「米国住宅着工件数の推移」チャートを見る
→ 


 また、米商務省が10月15日発表した9月の小売売上高
 (季節調整済み)は、3755億ドルとなり、前月比1.2%減。
 市場予測の平均(0.7%)を大幅に下回る結果となりました。


 金融危機の影響が広がり、家計の消費抑制が広がっている
 ことが浮き彫りになりました。


 米国小売売上高の推移を見ても、2006年以降上昇を続けていた
 グラフが一転し、この数ヶ月は毎月激減しているのが
 分かります。


 こちらも住宅着工件数と同様、さらにこれから落ちるところ
 まで落ちてしまうという状況に追い込まれると思います。


※「米国小売売上高」チャートを見る
→ 


●不況の時代にも、必ず不況に強い会社は存在する


 厳しい不況の局面を迎えている米国では、ビジネスウィーク誌
 でも「倹約」して生活するというテーマが取り上げられて
 いましたる風潮が出てきました。


 この特集記事の中で面白かったのは、多くの企業が不況に
 悩まされる一方で、まさに「不況であることが強みになる」
 会社もあるということを改めて実感できたことです。


 ビジネスウィーク誌で取り上げていたのは
 「COSTCO(コストコ)」という会社です。


 この会社の企業哲学は「常に経費を節約し、その分を会員の
 皆様に還元していこう」というもので、商品を低価格で提供
 する会員制倉庫型店舗を展開しています。


 日本では1999年に福岡県糟屋郡の久山倉庫店を第1号店
 として、現在では幕張倉庫店(千葉市)や金沢シーサイド
 倉庫店(横浜市)など87つの倉庫店を運営しています。


 倉庫店という強みを活かし、大幅な割引も当たり前という
 販売方法によって、この不況下においても多くの消費者に
 受け入れられています。


 このような時期であれば、一般の小売店で購入するよりも、
 「COSTCO(コストコ)」で割安の商品を箱買いで購入しよう
 と考えるのは当たり前のことでしょう。


 重要なことは、今現在の「COSTCO(コストコ)」という会社の
 業績が良いかどうかという点ではなく、不況の時代にあっても
 逆にそれを得意とする会社が必ずあるのだということです。


 例えば、「COSTCO(コストコ)」以外では、ファッション
 ブランドの「ZARA(ザラ)」も同じように不況に強い会社
 だと言えます。


 高いファッション性を維持しつつ価格が安いことも大きな
 強みですが、加えて新しいデザインが店頭に並ぶまでの期間が
 たった2週間という流通スピードを実現していることなど、
 非常に不況に強い体制を持つ会社だと思います。


 数年前、「ZARA(ザラ)」の工場を見学して、実際に
 そのスピードを目の当たりにして驚いたことを思い出します。


 世界的な金融危機を受けて、多くの企業が不況に悩まされて
 います。そしてこれから更に厳しい局面を向かえることも
 容易に想像できます。


 ただ、このような局面においても、一方では「不況に強い」
 会社があり、そうしたビジネスモデルを創り上げることが
 可能なのだということを認識しておくべきです。


 不況だと声高に叫んだところで問題が解決できるわけでは
 ありません。今の状況だからこそ見えること、
 見えやすくなることもあると思います。


 そのようなことを見逃さず、貪欲に学習する姿勢を身につけて
 もらいたいところです。


 以前、日本の不況下においては「もつ鍋と焼酎」が
 もてはやされたことがありました。これも全く同じ原理です。


 焼酎とウイスキー間の税率格差の是正を目的に段階的に
 焼酎税率を引き上げられた影響により、今では焼酎の値段が
 上がっているため、かつてのように「不況に強い」と
 いえないかもしれませんが、


 では現在の不況下で焼酎に取って代わるのは何だろう?
 ということを考えてみるのも良いトレーニングになる
 と思います。


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