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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON229 世界株式市場から国際金融の現状を分析~特に注視すべき国はココだ。~大前研一ニュースの視点~

2008年9月26日

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世界株式市場 アジア株が大幅下落
上海総合株価指数 1年10ヶ月ぶり2000割り込み
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●アジアの中でも危険なのは、実態を伴わない韓国経済だ


 米国の大手証券リーマン・ブラザーズの破綻を受けて、9月16日、
 アジア各国の株式市場は大幅に下落。


 上海株式市場は代表的指数の上海総合株価指数が2000を割り込み、
 一時1974.39まで下落しました。


 一方、インド・ムンバイ証券取引所の主要30社株価指数(SENSEX)
 は、18日、前日比0.4%高の1万3315.60で取引を終えました。


 2008年の世界主要株価指数の推移を見ると、当然のことながら、
 この世界金融危機の震源地である米国の株価指数は大きく
 下落しています。


 しかし、実は他国の株価指数の下落幅の方がさらにひどい状況
 になっていることが分かります。日本、ドイツ、さらには
 好調を維持していた英国の株式市場の方が米国よりも低い
 水準にあるというのは、何とも皮肉な結果だと思います。


※「世界の主要株価指数の推移」チャートを見る
→ 


 こうした状況の中、アジアの株式市場も軒並み下落しています。
 2008年の年初以来、最も下落幅が大きいのは中国・上海株式
 市場で、約60%の下落幅を記録しています。


 上海ほどではありませんが、シンガポール、香港、
 そしてボンベイの下落幅も大きいものになっています。


 株式市場を見ていると、韓国経済はそれほど落ち込んでいない
 ように見えますが、実はかなり深刻な状況に直面しつつあると
 私は見ています。


※「主なアジア市場の株価指数の推移」チャートを見る
→ 


 それは米ドルに対する「ウォン安」という形で現れています。


 1997年のアジア通貨危機においてIMFが韓国経済へ介入して以来、
 徐々に回復をしていた韓国ウォンがここに来て4年ぶりの
 ウォン安水準になっています。


※「米ドルに対するウォンの推移」チャートを見る
→ 


 また、私は以前から何度も指摘していますが、韓国経済は
 深刻な構造的問題を抱えています。それはひと言で言えば
 「経済の空洞化」です。


 韓国経済は、「素材や基幹部品を日本から輸入し、主に中国で
 製造して米国や欧州に最終製品を輸出する」という、いわゆる
 「パス・スルー経済」です。


 表面的には大きく成長しているように見えても、実態経済は
 育っていないというのが韓国経済の実情であり、
 大きな課題なのです。


 私は今年の3月にも次のような指摘をしました。


 もし李明博(イ・ミョンバク)大統領が、この課題を解決する
 べく、韓国経済に根を張るような「裾の産業」を育てるような
 体制を創り出せれば、偉大な大統領として名を残せるだろうと。


 大統領選では、非常に高い得票率を獲得し、まさに期待の星
 だった李明博大統領ですが、米国産牛肉輸入問題をめぐって
 当事者能力を失っています。


 今後これを成し遂げるのはかなり厳しい状況になってしまった
 と思います。


 韓国の大統領は、任期5年で、自ら辞意を表明しない限り、
 罷免されることも稀です。私が外部から見ている限り、
 なぜ韓国の国民が、今後も継続していく李明博大統領の立場を
 弱くしてしまうのか不思議です。


 もしかすると、強い愛国心が逆に自虐的に働いているのかも
 知れません。この点は分かりかねますが、いずれにせよ、
 韓国経済の実態が悪く、ウォン安という危機が迫りつつある
 ということは事実なのです。


●先進国の経済を修正するという、IMFの本来の役割を思い出せ


 世界の株価指数が下落する一方で、比較的堅調な動向を見せて
 いるインド経済ですが、9月22日号のニューズウィーク誌では
 インド経済への警鐘を鳴らす記事がありました。


 また表紙にはいくぶん暗い表情をしたインドのシン首相の
 写真と共に、「INDIA ISN'T SHINING(インドは輝いていない)」
 というタイトルが大きく掲載されていました。


 これまで長い間低迷を続けてきたインド経済は、ようやく
 ここに来て飛躍のチャンスを迎えつつあった。その舞台は、
 誰もが整ったと思っていた。しかし、インドのチャンスは
 どこかに消えてしまった、という論調です。


 確かに今の状況を見ると、インド経済の悪いクセが出ている
 と私も思います。それは、経済の調子が良くなると、一方では
 社会主義的な考え方が頭角を現してしまうというものです。


 資本主義的な考え方で経済が運営されていくと、当然のこと
 ながら経済的な格差が出てきます。金持ちがより金持ちになる
 という構図も現れます。


 これは、どの資本主義国でも同様ですが、インドの場合には
 貧しい人の割合が多く、その数は圧倒的大多数と言っても過言
 ではありません。


 それゆえ、資本主義が進むと、豊かになる人も増えますが、
 一方でその足を引っ張るような人も大勢出てくるのです。


 今、インドのシン首相はそうした事態に様々な妥協をすることで、
 結果として、インド経済を挫折させたという指摘を受けている
 というわけです。


 ただ、ニューズウィーク誌はインドに対してネガティブな見解を
 示していますが、私はインド経済について心配はしていません。


 それよりも、この世界金融危機が波及して、韓国の経済危機
 などが訪れたとき、IMFがきちんと機能できるのか否かが
 心配です。というのは、今回の金融危機に対してIMFが全く
 機能していないからです。


 今回の金融危機は米国だけの問題ではなく国際金融全体の問題
 ですから、米国政府ではなくIMFが対応するべきだと私は思います。
 為替相場の安定等の国際金融秩序を維持することが、IMF本来の
 役割のはずです。


 しかし、米国投資銀行ゴールドマン・サックスの出身である
 米ポールソン財務長官は、あまりIMFが好きではないように
 私には感じられます。万一の際、IMFがきちんと役割を果たせる
 のかどうか、疑問です。


 今は世界の経済が落ち込んでいる局面です。以前から指摘
 していたように実態を伴わない韓国経済の脆弱さには特に
 気をつけるべきだと強く感じます。


 そして、万一の韓国危機に備えて、IMFという組織の本来の
 目的を改めて見直してもらいたいと思います。


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