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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON228 米リーマン破綻前夜、9/14時点の大前研一の見解は・・・~大前研一ニュースの視点~

2008年9月19日

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米リーマン・ブラザーズ
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●リーマン・ブラザーズの行く末。
       政府救済はなし。破綻するか、買収されるか。


 9月12日、英紙フィナンシャル・タイムズは、経営難に陥った
 米証券大手リーマン・ブラザーズの買収交渉に関して、


 米銀大手バンク・オブ・アメリカとともに投資ファンドの
 J.C.フラワーズ、中国の政府系ファンドである
 中国投資有限責任公司(CIC)が共同で入札を検討している
 と報じました。


 サブプライム問題に端を発する金融危機により、
 ベア・スターンズに続く大規模な破綻候補として米証券大手
 リーマン・ブラザーズの名前が浮上してきています。


 ベア・スターンズの破綻から随分と時間は経過していますが、
 両社の置かれている状況に大きな違いはありません。


 リーマン・ブラザーズの経営状況は、ベア・スターンズにも
 引けを取らないほど「ひどい」状況だと言わざるを得ない
 でしょう。


 実際、リーマン・ブラザーズの株価の推移を見ても、
 それは明らかです。2007年初頭には80ドルを超えていた株価が、
 今年の年初には60ドル前後に落ち込んでいました。


 そして、今年の2月~3月から急速に下落幅が拡大し、
 この9月にはいってからは、10ドルを下回る水準にまで
 達しています。


 この株価は、いつ倒産してもおかしくないという状況、
 実態としては「倒産」という状態です。


※ 「リーマン・ブラザーズの株価推移」チャートを見る
→ 


 流動性危機に陥ったベア・スターンズと違い、手元流動性は
 確保されているので「即死」は免れるでしょう。


 しかし、株価がほぼ0(ゼロ)になるということは、資産を
 処分したら株主価値は0(ゼロ)ということですから、市場からの
 「退場命令」と考えるべきだと私は思います。


 このような状況に置かれたリーマン・ブラザーズへの対処として、
 米国政府はこの週末の間に結論を出すでしょう。


 結論としては「倒産させる」あるいは「どこかが買収する」の
 いずれかだと思います。公的資金を注入による「政府救済」
 という方法が採択される可能性は極めて低いだろうと
 私は見ています。


●米国議会は中国への買収を渋る可能性が高い


 リーマン・ブラザーズとしては、バンク・オブ・アメリカに
 買収してもらいたいという意向が強いと思いますが、
 バンク・オブ・アメリカにしても一人では抱えきれない
 という見通しがあるように感じます。


 8月末には韓国産業銀行がリーマン・ブラザーズ買収を検討
 していることについて公表し、デューデリジェンス
 (開示情報の精査)まで行ったようですが、
 結局のところ買収から手を引いてしまいました。


 これはリーマン・ブラザーズの資産がどのくらい腐敗して
 いるのか、正確なところを評価できなかったからだと思います。
 そして、今もその状況に変わりはありません。


 このような状況下にあってリーマン・ブラザーズの買収に
 名乗りを挙げているのが、米国のハゲタカファンドと
 中国政府系ファンド連合という、これまでにはない取り合わせ
 の面白い構図になっています。


 J.C.フラワーズは、旧リップルウッドのティモシー・コリンズ氏
 とともに、新生銀行の再上場で売り抜けて大儲けした、
 J.クリストファー・フラワーズ氏がが立ち上げたファンド。


 そして、中国投資有限責任公司(CIC)はいわゆる政府系
 ファンドで、中国政府が出資する投資ファンドです。


 米国のハゲタカファンドが米国の金融機関を食い物にしよう
 としているわけですが、中国のファンドと手を組むというのは
 これまでにはない新しい体制だと思います。


 バンク・オブ・アメリカを巻き込みつつ、リーマン・ブラザーズ
 をどのように料理しようかと思案しているという状況でしょう。


 中国のファンドが米大手投資銀行を買収するなどということは、
 一昔前では想像もできない事態と言えますが、米国政府が救済に
 乗り出さないことを考えると、中国ファンドによるリーマン・
 ブラザーズ買収という可能性もあり得ると思います。


 ただし、米国議会としては、150年もの歴史を誇るリーマン・
 ブラザーズを中国に明け渡していいものかどうか、警戒感を
 強めているでしょう。


 バンク・オブ・アメリカが主導権を握るならば話は別ですが、
 本質的に中国に米国の投資銀行のノウハウが持ち出されること
 を渋るのではないかと思います。


 しかし、「破綻」が目の前に迫ったいま、救済に向けての
 決断を1日先送りにするだけの時間的猶予も、もはや残されて
 いないのが現状です。


 破綻か、それとも、バンク・オブ・アメリカ、J.C.フラワーズ
 と中国勢による買収なのか。いずれにせよ、リーマン・
 ブラザーズの現状からすると、残された時間はなく、
 米国時間の週明け(9月15日月曜)に全ての答えはでるでしょう。


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