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オフィスビル賃貸料 7月末の平均賃料が下げに転換
3.3平方メートル当たり、2万2860円
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●空室率5%前後から、加速度的に賃料は下がっていく。
東京都心で、上昇が続いていたオフィスビル賃貸料(募集ベース)
に一転して先安観が広がってきています。
三鬼商事がまとめたところによると、指標となる大型ビルの
平均募集賃料は3.3平方メートル当たり2万2860円となり、
前月比0.03%(8円)下がったということです。
下落幅は小さいですが、前月まで2年11カ月続いた上昇が
途切れた形になりました。
米国を発端とするサブプライム問題の影響もあって、
不動産・建設業界は昨年の夏頃から日本の景気悪化の
けん引役になってきました。
そして、今やスルガコーポレーション、ゼファー、アーバン
コーポレーションと相次いで新興不動産ディベロッパーが
破綻するなど、業界全体が厳しい局面を迎えています。
帝国データバンクが発表した2008年上半期の倒産集計によると、
国内の負債額1000万円以上の倒産件数は前年同期比で10%強
増加していますが、その中でも不動産業(前年同期比7.5%増)
と建設業(同16.2%増)の倒産が目立つという結果にも
現れています。
このように厳しい局面を迎えている不動産・建設業界ですが、
今はまだ「限界の一歩手前」という段階だと私は見ています。
現在、1坪当たりの賃料は2万2千円前後ですが、バブル崩壊後の
1万5千円前後という水準を考えれば、2万円を超える価格はまだ
「高い」価格だと思います。
都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の
オフィスビル空室率と平均賃料の推移を見てみると、
2005年に約1万7千円だった賃料が徐々に上がってきています。
ここに来て頭打ち状態とは言え、全体としては上昇基調だと
言っても良いと思いますが、安心できない状況です。
空室率が2007年秋ごろから上昇しており、3%未満だった
空室率が4%を超える勢いです。実は、空室率が4%を超えて
5%に近づく水準になると、加速度的に賃料に下がっていく
可能性が高いのです。
※「都心5区のオフィスビル空室率と平均賃料の推移」チャートを見る
→
5%前後の空室率になってくると、不動産会社が
「割引キャンペーン」のような手段を用いて、競合同士で
テナント争奪戦の価格競争を繰り広げることとなり、その結果、
賃料が軒並み下落していくという悪循環に陥るのです。
バブル崩壊後にも同様の状況に陥りましたが、今、再び同じ道を
歩んでいます。5%という限界に刻一刻と近づきつつある、
というのが現在の状況だと私は思います。
●不動産・建設業界は、これからが本当の正念場になる。
倒産企業が後を絶たず、地獄絵図のような不動産・建設業界
ですが、これから先はさらに厳しい局面を迎えることになります。
ゼネコン、不動産業者、ディベロッパー、その他関連業種を
含めた不動産・建設業界全体が影響を受けることになると
思います。
「せっかくビルを建てたのに入居者がいない」「もっと安い
値段でなければ入居してくれない」といった事態に陥ることは
容易に想像できます。
これはバブル崩壊後の1994年~1995年ごろに東京が経験した
事態であり、また現在の世界経済の流れでいえば、すでに
ロンドン・ロサンゼルス・ヒューストンといった海外の都市で
起こっている事態です。
直近では8月26日付けで創建ホームズが東京地裁に民事再生法の
適用を申請し受理されています。ゼファー、アーバンコーポ
に続く、東証1部上場企業の破綻でした。
また、8月25日付けで首都圏を中心に不動産開発などを手がける
セボンが民事再生法適応を申請、子会社分とあわせた
負債総額は785億円にのぼります。
不動産各社が棚卸資産を過剰に抱えている状況と各社の
株価下落率をみても、同業界全体の不振は一目瞭然といえます。
※「不動産各社の棚卸資産の状況と株価下落率」チャートを見る
→
こうした状況の中でも、大手の一部は利益を確保できる可能性
があると思います。
例えば三井不動産は、単に建築物を貸すだけというビジネス
ではなく、豊洲再開発プロジェクトにおける「ららぽーと豊洲」
に代表されるように自らが建物を建設・保有したうえで
商業施設の運営・管理を行っているからです。
自ら適切なマーケティング施策を打ち、集客力を持てば、
テナントを集めることも可能でしょう。
不動産・建設業界の不況は、これからが「本当に」厳しい
局面になります。もはや楽観できる余地はありません。
三井不動産のように従来のビジネスモデルを超えた施策を
打ち出し、バブル崩壊から回復したという経験を活かして、
不動産・建設業界がこの不振からいち早く立ち直れるように
期待したいと思います。