大前研一「ニュースの視点」Blog

KON692「中国自動車市場/三菱自動車/欧州自動車市場/ソーラーカー ~急速なEV化は日本の自動車産業の裾野を破壊する」

2017年9月23日 ソーラーカー 三菱自動車 中国自動車市場 欧州自動車市場

本文の内容
  • 中国自動車市場 ガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止を検討
  • 三菱自動車 中国での販売店舗 2017年度に300店へ
  • 欧州自動車市場 欧州勢のEVシフト鮮明
  • ソーラーカー ソーラーカーの新星続々

急速なEV化は日本の自動車産業の裾野を破壊する


中国政府がガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止の検討を始めたことが分かりました。
フランスと英国が2040年までに禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入ったものです。EVを中心とする新エネルギー車に自動車産業の軸足を移し、環境問題などに対応する考えです。

中国の自動車産業は今でも2500万台規模ですが、仮にこれが実現すれば中国の電気自動車は世界最大規模になるでしょう。カリフォルニア州と中国は、EVのみを許可するとも言われていますが、中国はフランスと同じようにプラグインハイブリッド車も認めるのではないかと私は見ています。

EV化の波は、この1ヶ月で急速にトレンドが形成されました。
日本も対応を誤ると、大変な事態を迎えることになると思います。ただ厄介なのは、EV化対策に成功し、上手にシフト出来た場合にも、日本には課題があります。それは日本が世界に誇る部品産業が大打撃を受けるということです。EV化は数十年かけてやるくらいで考えないと、日本にとっては自動車産業の裾野の部分が大きく壊されるリスクがあると私は感じています。

三菱自動車は中国での販売店舗を2017年度に16年度比4割増の300店に増やす方針を明らかにしました。環境規制強化でガソリン車の販売が禁止されることをにらみ、プラグインハイブリッド車など新エネルギー車の投入に備えるものです。販売が好調なロシアとインドネシアでは増産を検討するとのことです。

昨年、日産自動車が三菱自動車の約3割の株式を保有し、アライアンスを組みました。私に言わせれば、なぜ100%保有しないのか理由がわかりません。いずれにせよ、三菱自動車は経営陣がしっかりしていれば、日産・ルノーにとっても大きな役割を果たしてくれる存在になります。三菱自動車の強みは、日産・ルノーが弱い地域で強いこと、そして電気自動車に強いことです。

三菱自動車の地域別販売台数を見ると、ロシア、北米、日本、中国となっていて、日本以外での販売台数が多くなっています。また、「その他」の地域での販売台数も多く、中東、アフリカ、中南米などにおいても、20万台も販売しています。パジェロ、ランサーなどが田舎の悪路で人気を得ているのでしょう。

将来の電気自動車を見据える意味もありつつ、現時点でも地域補完の効果は大きく、日産・ルノーにとっては非常にありがたい存在になっていると思います。



理想的なEVのあり方は、プラグインハイブリッド車


日経新聞は「欧州勢のEVシフト鮮明」と題する記事を掲載しました。
ドイツで12日、フランクフルト国際自動車ショーが開幕し、独フォルクスワーゲンは約300ある全車種に電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)のモデルをそろえることを明らかにしました。またダイムラーやBMWもEVの品揃えを拡充する方針で、これまでの自動車と同様、いかに使いやすく魅力的なEVを低価格で提供できるかの勝負になってきたとしています。

各社の電動化戦略を見ると、VW、ダイムラー、BMW、ルノー、ジャガー・ランド・ローバーなどは明確に方針を示しました。
一方で、トヨタは全方位体制で、ホンダも若干腰が引けている状態です。

とはいえ、トヨタは本格的に取り組み始めれば、すぐにでも優位性を発揮できると思います。
というのは、理想的なEVのあり方は、プラグインハイブリッド車になるからです。これまでのハイブリッド車では、馬力を必要とする時に動力源を切り替えていましたが、これからのEVは都市部ではバッテリーで動くようにして、バッテリー充電が不足する可能性が高い郊外ではガソリンで動くようにする、という形になるでしょう。

この形式のプラグインハイブリッド車が主流になれば、現在のEVよりも圧倒的に安定感が増すはずです。ハイブリッド車に関して、トヨタには多くの経験とノウハウがありますから、優位性を確保することは難しくないでしょう。

一方、EVのダークホースとして頭角を現しつつあるのが、ソーラーカーです。
日経新聞は12日、『「充電なしでEV走れます」ソーラーカーの新星続々』と題する記事を掲載しました。

オランダアイントホーフェン工科大学の卒業生が立ち上げたライトイヤー社が自社で開発したソーラーカーの予約を開始したと紹介。また中国の漢能(ハネジー)控股集団も昨年、太陽光発電だけで走る試作車を公開したとのことです。

ソーラーカーは屋根にパネルを入れることで、走行中に太陽光発電により充電しプラグインを必要としない仕組みです。もちろん、天候による影響も大きく受けますが、EVのあり方としては、ダークホース的な存在として見逃せません。


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※この記事は9月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています






今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、自動車市場の話題を中心にお届けいたしました。

EV化の波は、この1ヶ月で急速にトレンドが形成されました。

日本も対応を誤ると、大変な事態を迎えることになると
指摘する一方、EV化対策に成功し、上手にシフト出来た場合にも、
日本が世界に誇る部品産業が大打撃を受ける
という課題が日本にはあるとも指摘しています。

このような不確実な世の中で成功を収めるには、
状況の変化に応じて競合よりも早く行動を起こすことが重要です。

そのために必要なことは、不確実要因の展開によって
可能性のある将来に応じた一連のシナリオを用意し、
それぞれのシナリオにおける脅威や機会を議論しておくことです。

そうすることで、環境変化の予兆を早く感じることができ、
いざその時が来た際に迅速に行動に移すことができます。


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