大前研一「ニュースの視点」Blog

KON680「 米ベライゾン・コミュニケーションズ/米ウーバーテクノロジーズ ~ヤフーに来てからのマリッサ・メイヤーは、自分の懐にお金を入れただけ」

2017年6月30日 米ウーバーテクノロジーズ 米ベライゾン・コミュニケーションズ

本文の内容
  • 米ベライゾン・コミュニケーションズ ヤフー中核事業の買収手続き完了
  • 米ウーバーテクノロジーズ トラビス・カラニック氏がCEO辞任

ヤフーに来てからのマリッサ・メイヤーは、自分の懐にお金を入れただけ


米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズは13日、米ネット大手ヤフーの中核事業の買収手続きを完了したと発表しました。ヤフーは社名を「アルタバ」に変更し、中国のアリババ集団や日本法人・ヤフーの株式などを管理する投資会社となります。

2012年からヤフーを率いてきたマリッサ・メイヤーCEOは退社するということですが、私は彼女のことを全く評価できません。ヤフーに来てからの実績と言えば、アリババの株を売却して利益を出しただけです。しかも、その理由はヤフーという会社のことを考えたものではないと私は思います。おそらく自分自身のボーナスが会社の利益に連動していたことが大きく影響しているでしょう。会社にとって重要なことには何一つ着手せず、自分のポケットに入るお金のことしか考えていなかった、と私は感じています。

ソフトバンクの孫社長が、ヤフーに対して独自の検索システムを作るべきだったという指摘をしています。ヤフーはもともとエディターが人海戦術でサイト情報を蓄積し検索サービスを提供していました。そこに1998年グーグルが登場します。グーグルは全自動でロボットによって世界中のコンピューターにアクセスし、検索情報を蓄積しました。ここに、両者の間に大きな力の差が生じました。ヤフーもしばらくはグーグルの検索データを利用させてもらっていましたが、結局、差別化もできず、何ら特徴も打ち出せないままでした。

日本のヤフーは故・井上氏の手腕もあり、独自の成長を遂げました。また井上氏の後は、スマホシフトに成功しています。米ヤフーはスマホ対応が遅れ、PCで終わってしまったのも残念な点です。米ヤフーについて打てる手はいくつもあったはずです。しかし、グーグルでは輝かしい実績をあげたメイヤー氏は、残念ながらヤフーでは自分の懐を潤すことしかしませんでした。自分のポケットに多額のお金を取り込んだ一方で、彼女は汚名をかぶって辞任していくのだと私は思います。




誰もが賛同するウーバー・カラニックCEOの辞任/経営者は永久就職のメンタリティを捨てよ


米ウーバー・テクノロジーズの共同創業者であるトラビス・カラニックCEOが20日、辞任すると発表しました。セクハラ問題などが浮上する中、株主からの圧力が高まり辞任に追い込まれた形ですが、取締役としては同社に残るとのこと。一方、ウーバーはこれまでの方針を180度転換し、スマートフォンのアプリ経由で運転手にチップの受取を認めると発表しました。

おそらくほとんどの人が、カラニック氏の辞任を聞いて賛同していると思います。自分自身のウーバーのドライバーと口論し罵声を浴びせている様子を撮影されインターネットで公開されたり、とにかく評判が悪い人物です。ビジネスウィーク誌やTIME誌でも、批判されてきました。カラニックCEOは仲のいい役員と2人で暴走し、セクハラ・パワハラは日常茶飯事だったと暴露されています。

いわゆるユニコーンとしては世界一の企業価値を誇る一方で、この企業体質では大企業に成長していくことはできないとも指摘されていました。例えば、従業員に占める女性の割合は、米国平均47%に対してウーバーは33%と低くなっています。また管理職の女性割合も、ツイッター社の30%に対してウーバーは22%、また管理職の77%が白人で占められているという指摘もありました。あらゆる点において、ウーバーは社会的な責任を果たす企業としての仕掛けを構築できていなかったという問題があったと言わざるを得ません。

カラニック氏本人としては、身内の不幸もあり一時休暇を考えていたそうですが、最終的には初期の頃から投資してきた大手のベンチャーキャピタルから、辞任を求められたとのことです。

企業文化を醸成する経営者の資質は、非常に重要です。日本では「元リクルート」「元インテリジェンス」の人材に、こういった資質を見出す人も多いと思います。元リクルート、元インテリジェンスの特徴は、入社したときに身分の保証をしない、ということだと思います。

かつてのリクルートでは10年で会社から追い出されました。この「10年」というような期間設定がなく永久就職を前提とする企業の場合、最初の10年は活躍しようもない環境になっていることがほとんどです。そして、その環境の中で本人もさぼることを覚えてしまいます。最初の10年が勝負、と言われていれば人は成長します。

私が在籍していたマッキンゼーも、毎年2割の社員をクビにしていました。ですから、社員は5年目に残れるのは2割しかいないと思って仕事をします。同時に追い出されたらどうしよう?と考えるので、一生懸命仕事に励みます。

クビを前提にすると人は勉強し成長しますが、逆に永久就職のメンタリティでは人は育ちません。日本の経営者に求めたいのは、永久就職のメンタリティではなく、育てること・育てたら出していく、ということを当たり前にすることです。出ていく人がいるから、また新しい人材が入ってくる余地が生まれます。これが重要なメンテリティだと私は思っています。



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※この記事は6月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、ヤフーやウーバーの話題をお届けいたしました。

人海戦術でサイト情報を蓄積し検索サービスを提供していた米ヤフー。
全自動でロボットによる検索情報を蓄積するグーグルの登場により、
両者の間に大きな力の差が生じました。

将来の環境を見通して、今後どのような市場が重要となるのか、
どういう差別性をとればよいのかを考えることは非常に重要です。

どこまで将来を見通すかは業界によって変わりますが、
ベースとなる環境変化を合理的に想定しておくことが大切です。

2~3つ違う未来を予想し、それぞれの未来について話し合うだけでも、
その環境が出現したときに素早く対応することができます。

どのような差別性をとればよく売れるのか?
今後、競合に勝つための事業のKFSはなにか?
など、競合より先を見通すことが重要です。


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