大前研一「ニュースの視点」Blog

KON677「米エヌビディア/米マイクロン・テクノロジー/アマゾンジャパン/ギンザシックス ~ギンザシックスが無料ポイントカードを発行しないワケ」

2017年6月9日 アマゾンジャパン ギンザシックス 米エヌビディア 米マイクロン・テクノロジー

本文の内容
  • 米エヌビディア 世界デジタルサミット2017開催
  • 米マイクロン・テクノロジー 次世代DRAM量産へ広島工場に約2200億円投資
  • アマゾンジャパン アマゾンが最安値条件を撤回
  • ギンザシックス 無料ポイントカードを発行しないワケ

エヌビディアが自動運転車に果たす役割


デジタル分野の技術や展望を議論する「世界デジタルサミット2017」が先月29日、30日、都内で開催されました。その中で、米半導体大手エヌビディア日本法人の大崎真孝日本代表は、「18年までに(バスなどが特定ルートを走る)『レベル4』の自動運転技術を確立する」と述べるとともに、この技術により自動車事故が減り社会的なイノベーションになると強調しました。

自動運転車の開発といえば、グーグル、アップル、テスラなどが手掛けていることが報じられてきましたが、エヌビディアはこれらの企業に対して、チップ側の技術により問題を解決し助けることができるという立場です。

エヌビディアGPUという主にゲームで重要な役割を果たすチップの製造を行っている企業です。現在、時価総額は9兆円。IBM、マイクロソフト、SAPなどもGPUを活用していて、トヨタとも自動運転車で協力しています。

人工知能の方法論では、1950年代の人工知能、1980年代の機械学習、そして2010年からの深層学習という段階を踏んでいます。深層学習では、新しい経験にもとづいてどんどん知能が高くなります。エヌビディアが開発しているレベル4の自動運転技術を確立するというチップは、まさに深層学習型です。この段階で、完全に自動化の一歩手前まではいくと思います。あとは緊急時の対応だけでしょう。

エヌビディアはチップを製造する企業ですから、こうしたレベルの高いチップを開発し、自動運転車の開発に取り組んでいるグーグル、アップル、トヨタなどに活用してもらえればいいのです。



DRAM市場は堅調。買収された日本勢はもったいなかった


米半導体大手のマイクロン・テクノロジーは、広島工場に今後2~3年で20億ドル(約2200億円)を投じて、スマホ向けの次世代半導体を量産する見通しが明らかになりました。スマホやデータセンター、自動運転車などに不可欠な半導体の需要は活況で、付加価値の高い前工程を受け持つ広島工場に積極投資し、首位の韓国サムスン電子を追撃する考えです。

日本のDRAMメーカーは枕を並べてマイクロン・テクノロジーに買収されました。それは残念でしたが、そのマイクロン・テクノロジーが業界トップ2のサムスンとSKハイニックスを脅かす存在になりつつあります。

DRAM市場について悲観的な味方をする人もいますが、市場規模の推移を見れば堅調であることがわかります。また最近では、シリコンサイクルがなく、コンスタントに伸びています。スマホによって世界で同時に使われるようになったためでしょう。

マイクロン・テクノロジーからすれば、バラバラでうまく機能しなかった日本のDRAM各社を傘下に収められたのは儲けものだったと思います。逆に言えば、そこで持ちこたえられなかったのは、日本としては残念でなりません。



公取が入ってアマゾンは変わるのか?


公正取引委員会は1日、アマゾンジャパンが出品者に最安値を設定するよう求めていた契約条件を撤回すると発表しました。こうした手法は、アマゾンに限らず小売業界で一般的に用いられてきたもの。EC市場で急成長を遂げたアマゾンの支配力が強まりすぎるとして、公正取引委員会が独禁法違反の疑いでアマゾンを立入検査して調査を進めてきたものです。

今の日本のアマゾンは強すぎる状態になっていました。東日販に対しても日販を通さずに直接取引を希望するなど強い交渉を進めていたと聞きます。この強い立場で、価格支配、流通支配をするのは完全に独禁法と正面衝突するしかない状況でしたが、アマゾンの強さに我慢できなくなった誰かが駆け込んだのでしょう。

アマゾンとしても、公正取引委員会の怖さは十分に知っているので、すぐに対応しています。最恵待遇条項を撤回し、好きな値段での設定を促しています。対応としては、非常に無難なものです。

しかし実際のところ、アマゾンのボリュームが欲しいと思うところは、最恵待遇条項がなくとも、最安値あるいはそれに近い価格を持っていくということになるだろうと思います。


ビーコンによるCRMの課題


日経新聞は先月31日、「ギンザシックス 無料ポイントカードを発行しないワケ」と題する記事を掲載しました。

ギンザシックスは従来の百貨店事業のCRM(顧客関係管理)を踏襲せず、外国人観光客なども含めた来店回数が年に数回の顧客を重要視していると紹介。ポイントカードを発行する代わりにアプリを充実させるとともに、Bluetoothを活用したビーコンで情報発信やサービス提供を行う取り組みが導入されているとしています。

これまでビックカメラやヨドバシカメラが代表するように、ポイントカードを使ったCRMが一般的でした。今回の仕掛けは、ポイントを発行せずに、ビーコンで管理した情報をもとにする、というものです。ビーコンで管理するとなれば、その人がどこにいるのか、以前はどういうものを買ったのか、ということも詳細にわかるようになります。そうすると、例えば、ビーコンで誘導しつつ、大きな買い物をしてくれる可能性が高いという情報を得たら、その人に対して個別に値引きに応じるという対応が可能になります。

かつてマレーシアのマハティール元首相が、「キャッシュレスソサエティはカードフルソサエティだ」と嘆いていたことがありますが、この仕組みを使えばカードフルからは解消されます。一方で、ビーコンの課題は行き過ぎるとプライバシーの侵害になり、不快感を与えてしまう結果になる、ということです。そのさじ加減が非常にむずかしいところかもしれません。



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※この記事は6月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、注目企業の動向を中心にお届けいたしました。

ポイントカードを使ったようなこれまでのCRMではなく、
Bluetoothを活用したビーコンで情報発信やサービス提供の
導入を行っているギンザシックス。

ビーコンのように、デジタルテクノロジーの進化によって、
CRMも顧客一人ひとりの購入に至るプロセスに合わせた
きめ細かな接点設計が可能になりました。

このように、CRMの手法論は急激に進化をしていますが、
小手先のテクニックに走らず、まずは、ベースである
マーケティング理論や戦略理論を理解することが大切です。

そうすることで、バズワードに惑わされることなく、
顧客の個別ニーズや進化するニーズに応えるCRM戦略を
描くことができます。


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