大前研一「ニュースの視点」Blog

KON670「東芝・ローソン・セブン&アイHD ~ローソンがセブン-イレブンに追いつくには?」

2017年4月21日 セブン&アイHD ローソン 東芝

本文の内容
  • 東芝 東芝映像ソリューション買収へ交渉開始
  • ローソン 玉塚元一会長が5月末退任
  • セブン&アイHD 米スノコLPからコンビニ、GS取得

東芝はこれほど追い込まれる状況ではない。上場にこだわらずLBOせよ


経営再建中の東芝のテレビ事業を巡り、トルコの家電大手ベステルは10日、「東芝のテレビ事業(テレビ事業子会社の東芝映像ソリューション)買収に向けた交渉を開始しました。ベステル社はグローバルブランドを取得し、国際市場における地位の強化と販売を増やす戦略方針ですが、この事業の買収には中国の海信集団(ハイセンス)なども関心を示しているとのことです。

米国におけるシャープブランドを買い取った美的集団は、それだけで大きな利益を上げました。逆に言うと、シャープは欧州や米国など海外におけるブランドを売ってしまって、取り返しがつかない事態になったと言えます。ベステルという会社はしっかりした企業であり、東芝を買収する力は十分にありますが、やはり日本人の心情からすれば、買収は控えてもらいたいと感じるのは当然でしょう。

東芝はもともと三井銀行との強い関係性を持っていました。現在の三井住友銀行では、住友系が強いので東芝支援もそれほど力が入っていないのかもしれませんが、そもそも私に言わせれば、今の東芝再建の方法は愚の骨頂です。東芝メディカルを始め、とにかく売れる事業から売ってしまう、という方法で進めています。IQが足らないのではないかと思います。

東芝の綱川社長は、「きちんと決算をすること」「上場を維持すること」という2つを大前提にしています。しかし、これは大きな間違いです。もし私ならば、今現在の東芝の時価総額は約8000億円まで下落していますから、上場にこだわらずLBOを仕掛けます。

東芝の半導体事業は2兆円の価値があるとも言われています。その東芝全体を今ならたった8000億円で買えるわけです。経営陣が責任を持って銀行から資金を借りてもいいでしょう。LBOをして非上場にして十分な時間を確保します。非上場になれば、決算を延ばしても構いませんし、何なら会計事務所を変更してもいいでしょう。ゆっくりと時間をかけて考えることも出来るはずです。

その上で回復してから再上場すれば、半導体事業部で2兆円を超える価値があるなら、3割程度を手放すだけで一気に借金は返済できます。これなら何一つ事業を売却する必要はありません。

このような案も出ていないのだとすれば、完全に経営マインドが失われていると思います。旧三井銀行なら、この案を提示すれば喜んでサポートしてくれるでしょう。間違っても、投資銀行にアドバイスを求めてはいけません。投資銀行は、買ったり、売ったりしたときの手数料でビジネスをしているので、私のような案は提示しないでしょう。

今の東芝に対して、まともなアドバイスをしてくれる人はいないのでしょうか。しっかりとした経営経験がある人がいないのでしょう。東芝という会社は、良い資産を持っています。本来、今のように追い込まれる状況ではありません。このままだと、東芝が単なるエレベーター会社になってしまいます。


ローソンがセブン-イレブンに追いつくには?/セブン-イレブン米国強化の意図


ローソンは12日、玉塚元一会長が5月末に退任すると発表しました。玉塚氏はファーストリテイリング社長などを経て2010年にローソンに入社。14年から社長、16年から会長として同社の経営を率いました。このタイミングでの退任について玉塚氏は「三菱商事を巻き込み総合力をつけられた」とし、ローソンの今後の業容拡大への道筋は整ったと強調しました。

三菱商事対伊藤忠商事、という商社同士の戦いが明確になってきました。三菱商事としては、ローソンを完全子会社化して、人材も送り込んでいきたいと昔から考えていました。前社長で三菱商事出身の新浪氏が三菱商事からの圧力を嫌って、玉塚氏を抜擢して後継者にしました。しかし結果としては、玉塚氏には様々な意味で三菱商事をはねつけることができず、三菱商事は資本比率を増やし、予定通りローソンは三菱商事の直営になりました。

三菱商事が大きく動く契機となったのは、コンビニの国内店舗数の争いでしょう。相変わらずセブン-イレブンが断トツで、ローソンは伸び悩み、合併を繰り返したファミリーマートがローソンを抜きました。伊藤忠の直接の影響力が見え始めたファミリーマートを見ていて、三菱商事も焦りを感じたのだと思います。そして、玉塚氏が詰め腹を切らされることになったのでしょう。

コンビニ1店舗あたりの1日売上高を見ても、セブン-イレブンが65.7万円と断トツ。ローソン(54万)とファミリーマート(52.2万)は似たようなレベルです。三菱商事は卸や食品関係で強みを持っていますから、それを活用することで打開したいところでしょうが、私は難しいと感じています。

セブン-イレブンがローソンやファミリーマートに比べて圧倒的に優れているのは、商品開発力だと思います。ラーメン有名店とのコラボラーメンの商品化などを見ても、セブン-イレブンは非常に上手です。三菱商事のノウハウが活きてくるのは原材料に近い部分なので、今のコンビニ業界で大きな力を発揮できるとは私には思えません。

セブン&アイ・ホールディングスは6日、米国の中堅コンビニエンスストア、スノコLPからコンビニとガソリンスタンド計約1100店舗を取得すると発表しました。買収額は33億ドル(約3650億円)で、国内市場の伸びが鈍くなるなか、成長余地のある米国で早期に1万店体制を築く考えとのことです。

元々セブンイレブンは、米国のサウスランドという会社が保有していました。当初は、サウスランドとライセンス契約を結び、日本のセブン-イレブンが立ち上がり、最終的に米国の本社も買収して現在に至ります。日本では2万店まで広がっています。2番目に店舗が多いのはタイで、米国は韓国と同じくらいで、約8500店舗に過ぎません。これではみっともない、ということで米国の強化に乗り出したというところでしょう。

米国のコンビニはもともと新聞やコーヒー、タバコを買う程度のもので、それを日本で進化させて逆に米国にノウハウを持ち込んで変革をしてきました。それでも未だに、米国やオーストラリアのコンビニは、「ガソリンを入れに来る」という人が大勢います。そのガソリン代の支払いをするついでに、コンビニ店内で買い物をするという程度です。実際、今回買収したスノコLPもガソリンスタンドに併設した店舗が多くなっています。

米国はスーパーマーケットが24時間営業しているため、日本ほどコンビニに対して24時間営業のありがたさはありません。その中で、「ガソリンのついで」という立場から脱却し日本のようなコンビニとして進化させていくのは、大きなチャレンジでしょう。これから米国市場を数倍にするという目標でしょうから、注目したいと思います。


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※この記事は4月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、コンビニ業界の話題を中心にお届けしました。

玉塚元一会長が5月末に退任すると発表したローソン。

そのローソンに対して大前は、三菱商事のノウハウが今のコンビニ業界で
大きな力を発揮できると思えないと言及しています。

大前が記事中「セブン-イレブンが圧倒的に優れているのは商品開発力」と指摘しているように、
KFSを見つけるには、業界における成功者は何を行い、何が強いのか、
他の競合と何が違うのかを観察・分析する必要があります。

KFSがシェアの違いを引き起こすメカニズムを観察して、説明できるようにすることが重要です。

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