大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON216 【民間では考えられない、「ズレた」公務員の人事感覚】~大前研一ニュースの視点~

2008年6月20日

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
国家公務員制度改革基本法が成立 幹部人事の一元管理導入など柱
大阪・橋下知事と職員がバトル 知事と職員の集い
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


●国家公務員制度法改革基本法は、改革の第一歩に過ぎない


 国家公務員制度法改革基本法が成立しました。これを受け政府は、
 国家公務員制度改革推進本部を今月中に設置します。


 この本部の事務局長には民間人を起用し、関連法の整備など
 具体化作業を加速する方針ですが、中央省庁の官僚には
 反発もくすぶっており、細部の制度設計で骨抜きが進む
 懸念もあります。


 陣頭指揮をとった渡辺喜美行政改革担当相は、
 この国家公務員制度改革基本法の成立には、涙が出るほど
 嬉しかったのではないかと思います。


 自らの利権を確保したい各省庁らの反対勢力と戦いながらも、
 ようやく法案成立までこぎつけたのは評価したいところです。


 この法律によって、中央省庁の人事管理を内閣で一元化
 できるようになります。今後、各省庁は独自の人事管理を
 継続するべく、この法案の骨抜きを考えてくるでしょう。


 そういう意味では、まだ最終的な効果の程は分かりませんが、
 この法案の成立は一歩踏み出したと言えると思います。


 ただ、私の正直な感想を言えば、今回はこの法案成立を
 「第一歩を踏み出した」という意味で評価していますが、
 渡辺喜美行政改革担当相には、引き続き、国家公務員に
 関係する諸問題の解決に取り組んでもらいたいと感じています。


 例えば、今回の法案によって中央省庁の人事管理が
 一元化されても、現状のように大学を卒業した人がそのまま 
 公務員になっていては公務員の質が改善しないと思います。


 社会経験、会社経験がなく、民間企業で働く一般の人々とは
 感性がズレた人になってしまうからです。


 こうした「ズレ」た感覚は、中央省庁の職員が深夜帰宅時に
 タクシー運転手から金品を受け取っていた財務省の役人の
 発言を見ても明らかです。


 実際にお金を稼ぐことの難しさや、民間企業の管理について
 知らないため、あれほど世間からズレた感覚になってしまう
 のだと思います。


●民間との感覚のズレ: 大阪・橋下知事と職員がバトル


 民間企業で働く一般の人々とは感性がズレた感覚を
 持っていることを象徴するような事例が大阪でありました。


 6月12日、大阪府庁で開かれた知事と職員の集いで、橋下知事と
 職員がやりあう一幕があり、参加した複数の職員によると
 男性職員が知事に対する批判を展開。


 府の財政再建案で、345億円の人件費削減が盛り込まれている
 ことについて不満を訴え、「橋下さんは人として尊敬できない」
 と述べ、


 これに対し橋下知事は
 「私のやり方があなたの意に沿わなければ、
 職を変えて下さって結構です」と反論したとのことです。


 この切り返しは見事です。


 これも民間企業なら当たり前のことですが、
 今までここまではっきりと言い放った知事はいなかった
 と思います。


 社長に向かって「あなたは尊敬できない」と言ったら、
 どうなるか?少し想像力を働かせれば分かるでしょう。


 堀場製作所創業者の堀場雅夫氏の著書タイトルにもありますが、
 「イヤならやめろ!」です。
 こちらの方が、世間一般から見れば当たり前です。


 それほど橋下知事が嫌だというなら、
 それは選挙民として反対するべきです。


 今回の橋下知事と府職員との戦いを見ていると、
 「良い人が大阪府知事になってくれたな」
 と正直嬉しい気持ちになりましたが、


 公務員の多くは退官してから、在職中には特に
 改善策を提示することすらしていなかったのに、
 役所の仕事のやり方を非難して、
 役所の悪口を並べ立てたりします。


 私に言わせれば、何を今さら、というところです。


 こうした問題は、大学を卒業してそのまま公務員になるという
 「キャリアパス」そのものに原因があります。


 ですから、公務員になるには、少なくとも社会人経験を
 10年以上必要とする、20代・30代・40代の世代ごとに
 採用人数を決める、といったような対策が必要だと私は思います。


 また、日本人以外の雇用も考慮する必要もあるしょう。
 例えば、ニュージーランドのように公務員であっても
 重要な職員については、世界から優秀な人材を募集してみる
 というのも1つの案ではないかと思います。


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点