- 本文の内容
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- 米労働市場 米「完全雇用」の死角
- 米ウーバーテクノロジーズ 米ウーバーが四面楚歌
- PSA・プジョーシトロエン 独オペルを買収
高関税や入国禁止では防ぐことができない、米国が抱える課題
米労働市場で給与水準の高い製造業の雇用者数が減少する一方、給与の低いサービス業では増加しているとのこと。日雇いといった形態を含む労働のアウトソーシングの広がりも背景にあるとし、製造業の空洞化を加速させるこれらの構造変化に向き合わなければ、トランプ氏の経済政策の成功はおぼつかないとしています。
現在の米国失業率は約5%で実質的に完全雇用の状況ですが、指摘の通り、製造業で価値の高い仕事をする給与も高い人が減少しています。トランプ大統領は中国を批判していますが、中国以前の問題として、米国内で安く請け負う企業への外注が増えています。
日本からすれば当たり前の話ですが、これまで米国企業は垂直統合型で進めてきた歴史があるので、問題となっています。具体的にはメキシコ国境に近い地域に、安い価格で請け負う下請け業者がたくさん存在しています。
例えば、ニューメキシコにある繊維会社など法的に見ればブラック企業です。すでに米国内にいる1000万人ほどの外国人が、こうした企業に関わっています。このような「経済」が存在しているのです。
トランプ大統領は中国やメキシコを批判し、高関税や入国禁止などを打ち出しています。しかし、この問題はすでに米国内に入り込んでいる人たちが形成している経済ですから、今のトランプ大統領の対応では、問題を解決することはできません。
性格の悪さが企業のDNAになってしまったウーバー
日経新聞は9日、「米ウーバーが四面楚歌」と題する記事を掲載しました。女性社員に対するセクハラやカラニックCEOの暴言、規制をかいくぐる脱法ソフトの存在など次々と表面化し、ウーバーテクノロジーズが窮地に立たされています。批判の声は不買運動にまで発展し、開発に注力する自動運転技術を巡ってもグーグル系企業との裁判を抱えているとのことです。
潜在時価総額は6兆円規模に達し、順風満帆に思えたウーバーですが、カラニックCEOの性格の粗さから様々な問題が表面化してしまいました。カラニックCEOの性格の悪さが露呈したのは、彼がウーバーを呼んで乗車した際に、運転手に悪態をついた様子を録画されていて、それをYoutubeなどで公開されてしまったからです。私も映像を見ましたが、とても6兆円の企業を率いるトップとしては相応しくないですし、がっくりくるのも頷けます。
カラニックCEOだけでなく、女性副社長もなかなか荒っぽい性格のようで、そういう性格が「ウーバーのDNA」になってしまったのではないかと感じます。女性社員へのセクハラなども、その一端だと思います。
自動運転をめぐって訴訟を抱えていたり、「グレイボール」という脱法ソフトを開発していたというのも、企業としての在り方、性格そのものに問題があると言わざるをえないでしょう。グレイボールは数年前から運用されていたようで、顧客情報から判断し、敵対する規制当局や警察、競合他社の人間の乗車を巧妙に拒否していたそうです。
この2~3週間で次々と問題が表面化してきました。デジタル・ディスラプターの旗手とも言われるウーバーですが、皮肉なことに自分自身がディスラプト(破壊)される側になってしまう可能性すらあると私は感じています。
プジョーにとってオペル買収は重荷
フランスの自動車大手グループPSA・プジョーシトロエンは6日、米ゼネラル・モーターズの欧州子会社、独オペルを買収すると発表しました。買収総額は22億ユーロ(約2650億円)。これにより、GMは欧州から事実上撤退し、世界販売台数は独フォルクスワーゲン、トヨタ自動車に次ぐ3位から、4位に落ちる見通しです。
オペル、ボクソール(オペルの英国ブランド)は、GMがずっと黒字化できずにいた部分ですから、GMにとっては正しい判断だと思います。一方、プジョーにとってはどうか?というと懸念を感じてしまいます。
プジョー自体が病み上がりであり、いまだにフランス政府が株式を保有している状況です。元ルノー日産のCOO・カルロス・タバレス氏が積極的に打って出てきたということでしょうが、
自動運転や無人運転などの次世代をにらむ状況でトラブルカンパニーを引き継ぐのはリスクが高いと感じます。GMも黒字化できなかったわけですから、相当な苦労が予想されます。
欧州ではフォルクスワーゲンが圧倒的に強く、約350万台を販売しています。次いでルノー、プジョーとなります。プジョーは約144万台で、買収するオペルは100万台弱。販売台数は増加しますが、シェアをひっくり返すほどのインパクトは出せません。
一方、GMはこの売却によってほぼ欧州から撤退になります。トランプ大統領のもと、国内集中という路線になっているのかも知れません。
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※この記事は3月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、米労働市場の話題についてお届けしました。
垂直統合型で進めてきた歴史があった中、労働のアウトソーシングが広がり、
製造業の空洞化を加速させる構造変化が起きている米労働市場。
これに対して大前は、今のトランプ大統領の対応では、問題を解決することはできないと指摘しています。
大前は記事中、すでに米国内に入り込んでいる人たちが形成している経済の問題をあげていますが、
このように、起きている現象を正しく捉えなければ、本質的な問題を発見することはできません。
また、誤った事実の理解から導き出す施策では、インパクトのある成果を出すことはできません。
問題解決において、事実を正しく捉えた上で、解決策を導き出し実行することは非常に重要です。
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