大前研一「ニュースの視点」Blog

KON655「アサヒグループHD・米ベライゾン・旭硝子・鴻海/シャープ ~アサヒによる買収の成否の要因となるのは?」

2017年1月6日 アサヒグループHD シャープ 旭硝子 米ベライゾン 鴻海

本文の内容
  • アサヒグループHD ABインベブのビール事業を買収
  • 米ベライゾン 米ヤフーの主力事業の買収中止含め検討
  • 旭硝子 CMCバイオロジックスを買収
  • 鴻海・シャープ 中国ハイセンスへのTV液晶パネル提供中断へ

アサヒによる買収の成否の要因となるのは?/再び個人情報流出の米ヤフーの酷さ


アサヒグループホールディングスは13日、ビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブの東欧5カ国におけるビール事業を買収することで合意したと発表しました。
買収額は約8883億円(73億ユーロ)で日本企業の酒類の事業では、サントリーによる米ビームの買収に次ぐ規模になります。

一部の投資家の間では高値掴みと指摘されているそうですが、利益率も悪くないですし、買収できるときにしておくという意味でも、良い買収になると私は感じています。
注目したいのは、アンホイザー・ブッシュが保有している「チェコにあるバドワイザー」というブランドが今回の買収対象に含まれているのかどうかです。

バドワイザーといえば米国のビールメーカーで世界一の販売量を誇るブランドですが、それよりも歴史が古く本家とも言える「バドワイザー」がチェコ・南ボヘミア州にあります。
今回の買収対象に「チェコのバドワイザー」が含まれていて、そのブランドを使えるのではあれば非常に面白いと思います。

米国バドワイザーはすっきりと飲みやすい味ですが、チェコのバドワイザーは、アルコール度数が高く、味が濃いビールです。
東欧スロバキアやハンガリーにも、同じようないいビールがいくつもあります。これらが買収対象になっていると、スーパードライ1本で世界化していくよりも、幅が広がります。

東欧の個性的なビール、特にチェコのバドワイザーのブランドを使えるかどうか。今回の買収を成功させるために、大きな要因となると私は思います。

* * *

米ブルームバーグ通信が報じたところによると、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズが、米ヤフーの主力事業の買収について中止も含め検討しているとのことです。
当初は来春には買収が完了する計画でしたが、ヤフーからの個人情報の流出が相次いだことを受け、大幅な価格の切り下げなどが必要と判断したとのことです。

グーグルから鳴り物入りでヤフーにやってきたマリッサ・メイヤー氏も、地に落ちたものです。
前回が5億人、今回が10億人、合わせて15億人の個人情報の流出。しかも今頃になって発覚しているというのはあり得ません。
一体どんな経営をしていたのでしょうか。どんな防衛策をとっていたのでしょうか。

さすがにベライゾンも嫌気が差したかも知れません。買収前に発生した問題については責任を追わないという補償(インデムニティ)を適用し、ヤフーを免責した上で買収するという可能性はあると思います。
いずれにせよ、15億人もの個人情報が流出し、しかも今になって表面化してくるとは、米ヤフーの状態がいかにひどいかを物語っているでしょう。


旭硝子は寡占体制を活かした強化策/再びシャープブランドで世界を狙う鴻海


旭硝子は欧州でバイオ医薬品の開発・生産を受託するCMCバイオロジックスを買収すると発表しました。
今後、新興国などを中心に高成長が見込まれるライフサイエンス分野を強化し収益柱に育てる狙いです。

ジェネリックの影に隠れていますが、医薬品の受託製造・OEM製造は非常に重要な分野です。
旭硝子にとっても、大きな役割を果たす分野であり、すでにいくつかの企業を買収しつつ強化を図ってきています。

ガラス事業の業績を見ると、低迷しているわけではありませんが、国内は寡占体制にはいっています。
ボリュームは十分あるものの、利益はそれほど大きくありません。
ゆえに、ガラス事業で稼いだ資金を、化学品・医薬品などの事業につぎ込んで強化しています。
これまでの買収先に比べても、大規模なCMCバイオロジックスの買収ですが、国内の寡占体制が確立しているから可能になった戦略だと言えると思います。

* * *

台湾の鴻海精密工業とシャープが共同運営する堺ディスプレイプロダクトが中国家電大手、海信集団(ハイセンス)へのテレビ用液晶パネルの供給を中断する検討に入ったことがあきらかになりました。

価格の見直しで採算を改善するとともに、シャープが自社ブランドのテレビの拡販を進めるのに伴い、同社向けのパネルを確保する狙いもあるとみられています。

鴻海の経営参加によって、「シャープブランド」で世界中にテレビを売る、という明確な方針が示されました。
米国のシャープブランドはハイセンスに売却していたため、買い戻しを提案したところ断られたために、テレビ用液晶パネルの供給中断の検討に入ったということです。これが吉と出るか凶と出るか。

商品の評判が落ちることで、ハイセンスが困って売ってくれることも考えられますが、商品のブランドイメージが著しく低下してしまうと、買い戻しても意味がないかも知れません。
欧州のシャープブランドはスロバキアのUMCに売却していましたが、こちらは約100億円で買い戻しに成功しています。

米国も欧州も、「シャープブランドでテレビを強化する」という一貫した姿勢が伺えます。
シャープにいる人は、自分たちがギブアップした米国と欧州で、再びブランドを買い戻してでも、もう1度「シャープブランド」でチャレンジしようという鴻海の方針をどう感じているでしょうか。
恐ろしいと思うか、喜びを感じるか、複雑な心境かもしれません。


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※この記事は12月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、各社の買収戦略に関するニュースをお届けしました。

各社のM&Aの背景には、グローバルで勝ち抜くための戦略が存在します。

その戦略を読み解くためには、市場、競合、自社の視点で、緻密に情報収集するところから始まります。
さらに、マクロ情報だけでなく、大前がビールの味に言及したように、実体験に基づいた情報も大切です。

日々の行動の積み重ねが、情報分析能力を磨いていきます。


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