大前研一「ニュースの視点」Blog

KON651「三越伊勢丹HD・ファーストリテイリング・駐車場シェアリング・セイコーエプソン ~トヨタとアキッパの提携はもっと大きなプランを描くことができる」

2016年12月9日 セイコーエプソン ファーストリテイリング 三越伊勢丹HD 駐車場シェアリング

本文の内容
  • 三越伊勢丹HD 三越伊勢丹、旗艦店思わぬ不振
  • ファーストリテイリング ジーユーが兄貴分のユニクロをたぶん追い抜く理由
  • 駐車場シェアリング トヨタ自動車と連携
  • セイコーエプソン 小型オフィス製紙機を開発

三越伊勢丹は危機感を持つべき/ジーユーがユニクロの稼ぎ頭になる


日経新聞は先月30日、「三越伊勢丹、旗艦店思わぬ不振」と題する記事を掲載しました。

2016年4~9月期の連結営業利益は前年同期比58%減の61億円となったことを紹介。
減益率は高島屋、J・フロントリテイリングに大幅に上回り、経営統合から8年が経過し、組織改革をなおざりにしたツケが回ってきたとしています。

販管費について、三越と伊勢丹という伝統的な百貨店が統合したメリットが活かせていません。
2社が統合して、売上が2.6倍になりコストは1.6倍に抑えられるから、その意味があります。
コストがそのまま2倍になっていたら、業界全体の低迷もあり、厳しくなるのは当然でしょう。

J・フロントリテイリングは大丸を中心に、阪急阪神は圧倒的に阪急が強い関係性があり、三越伊勢丹に比べて主導権を持った統合がなされています。
三越伊勢丹はお互いに遠慮しあっている印象があります。

それでも伊勢丹本店の調子が良いうちは利益を出してくれていましたが、陰りが見え始めていますし、長期的に見れば下降線です。
百貨店離れは加速し、百貨店で高いモノを買うという習慣そのものがなくなってきています。

三越伊勢丹には圧倒的に危機感が足らないと思います。今回のような厳しい数字によって危機感が生まれてくるかもしれません。
そうあって欲しいと感じています。

***

ダイアモンド・オンラインは2日、「ジーユーが兄貴分のユニクロをたぶん追い抜く理由」と題する記事を掲載しました。
ファーストリテイリングの中で、ジーユー事業が一番の成長株になっていると紹介。

5年間着られるユニクロは、消費者のタンスがあふれれば買われなくなる一方、ZARAやH&Mのようなハイファッションは流行ものとしての1シーズンが前提で、
同じくこの路線を取るジーユーに経営資源を振り向けることで、ファーストリテイリングの再成長が始まるとしています。

私も実感していますが、ユニクロの商品はなかなかダメになりません。
ヒートテックやエアリズムなど、気に入ってたくさん購入したものもありますが、何年経っても未だに着ることができます。

私はユニクロの柳井会長に言ったことがあります。「ユニクロの商品は、まるで電化製品ですよね?」と。
新しい画期的なものが出てこないと、なかなか消費者のタンスから消えてくれません。

一方で、H&MやZARAなどは「1シーズン」で勝負しています。
「3回洗ったら、バラバラになった」という不満を言われることもありますが、そもそも1シーズンエンジョイしてもらえれば良いという考えです。
ある意味、ユニクロは良心的に過ぎるのだと思います。

そこでジーユーがファッション性を打ち出して、大きく方向性を変えてきました。
刺激が強い、ヴィクトリア・シークレットのような方向性に向かっていくのも面白いでしょう。
ジーユーはユニクロの100%子会社ですから、頑張ってくれるなら、ユニクロにとっても良いことだと思います。


トヨタとアキッパの提携はもっと大きなプランを描くことができる


空き駐車場のシェアリングサービス最大手のアキッパはトヨタ自動車と提携する見通しが明らかになりました。

トヨタレンタカーの店舗にある駐車場をアキッパのサイトに登録。
駅前など好立地の駐車場を増やして利便性を高める方針で、トヨタとの連携でサービスの認知度や信頼性向上につなげたい考えとのことです。

トヨタレンタカーの店舗にある駐車場をアキッパで予約できるということですが、これだけではそれほど面白くありません。
アキッパとしては駐車場市場で圧倒的ナンバーワンのパーク24と提携し、パーク24の国内拠点を活用しながらシェアリングサービス部分を一手に引き受けるくらいのことをやってほしいと思います。

逆にパーク24から見れば、既存の駐車場サービスとシェアリングサービスは異質なので、アキッパや軒先などのベンチャー企業を買収し、全く別の事業部として展開していくのが良いと私は思っていました。

ここにトヨタレンタカーが絡んでくるなら、パーク24の駐車場にレンタカーの車を2台~3台ほど駐車できるようにすると面白いでしょう。
トヨタレンタカーの拠点をパーク24が提供していく、ということです。
現状は空港や駅などで待ち構えているトヨタレンタカーですが、全国1万4000箇所のパーク24の拠点に進出することができます。

オリックスレンタカーなどがこういったことを考えているかもしれませんが、トヨタレンタカーとしては先んじて手を打っていくべきです。

アキッパと提携して終わりではなく、むしろパーク24との提携まで視野に入れることが重要だと思います。

***

セイコーエプソンは1日、使用済みの紙を原料として水を使わずに文書の情報を完全に抹消した上で、新たな紙を生産できる小型のオフィス製紙機を開発したと発表しました。
2016年中に商品化する計画で、価格は2000万円台前半。セキュリティや環境への負荷軽減をアピールし、3年で100億円の売上を目指します。

シュレッダーが不要になり、新しい紙が再生できるというのは、非常に魅力的な商品だと思います。
しかし、数字の桁がおかしいと言わざるを得ません。値段が2000万円となってくると、購入できる会社はかなり限定されます。
3年で100億円といっても、2000万円ならたった500台です。全体へのインパクトが小さすぎます。
日本の事務所に定着するということを考えるなら、せめて200万円台、できれば100万円を切るくらいにしてほしいと思います。

商品としては非常に魅力的ですし、私も一度見てみたいと感じています。
特に、こういうコンセプトの商品は欧州では高く評価されると思います。

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※この記事は12月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、駐車場シェアリングの新しい戦略に関する話題をお届けしました。

トヨタ自動車とアキッパの提携に関して、大前は、より大きなプランを描くことができる可能性を解説。

変化が激しいビジネス社会において、よりインパクトある戦略をたてるためには、自社にとってのチャンスを察知する能力が必要です。

またそのチャンスは、自社・他社の強みや業界構造を熟知しているほど掴みやすくなるものです。

取り巻く環境を理解する視点を持ち、常にアンテナを張ろうとすること。
問題解決を行うにおいて、重要なポイントです。


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