大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON207 ガソリン税は今後どうなる?丸裸になった暫定税率の今後の行方とは?

2008年4月11日

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道路財源
福田首相 一般財源化「骨太方針に」
「道路」政策協議 急速に機運しぼむ
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●丸裸になった暫定税率の中身。暫定税率の必要性はあるか?


 ガソリンの税率が下がったことを受け、暫定税率を復活させる
 租税特別措置法改正案に関する与野党の政策協議の機運も
 急速にしぼみつつある情勢。


 この点について、民主党の小沢代表は衆議院での再可決に対し、
 「このまま下げてくれとの国民の意見が多ければ
 非常に難しいのではないか」と発言しています。


 今回のガソリン価格の下落を受けて、喜んでいるドライバー
 の方も多いと思います。今後もこれが継続していくのか
 という点について不安を感じている人もいるでしょうが、


 選挙のことを考えても、またすぐにガソリン価格が
 値上げされることは考えにくいと私は見ています。


しかも、いわゆる道路族と呼ばれる議員や役人が、
 これまでにどれだけ恩恵を受けてきたのかということなどが
 テレビでも放映され、国民の目はさらに厳しくなっている
 という状況です。


 改めて暫定税率が適用される道路特定財源の内訳を見てみると、
 例えば、次のような数字になっています。


 揮発油税では、本来の税率が24.3円(税収1.4兆円)に対し、
 暫定税率は48.6円(税収2.83兆円)と1兆円以上の大きな開き
 があります。


 また、その他の項目を見ても、私自身正直なところ、
 “暫定”税率と言いつつ、これほど巨額な税金を“暫定”とは
 言えないくらいの期間徴収していたことに驚いてしまいました。


※「暫定税率が適用される道路特定財源」チャートを見る
→ 


 その差額合計は2.52兆円にも達しますが、これらが全て道路に
 使われているなどというのは、適切でないと考える方も
 多いことでしょう。


 実際のところ、2兆円ものお金をかけている割には、
 日本の道路の質や利便性は必ずしも良くありません。
 いつも同じところを工事しては掘り返してばかりいる
 という印象を持っている人も多いと思いますが、私も同感です。


 今回、暫定税率の中身が丸裸になったことで、暫定税率を
 作ってまで道路を作る必要が無いということが
 証明されるだろうと思います。これは非常に良いことです。


 「国税を使って道路を作る必要があるのか?」
 「高速道路も料金を取ってまで、新たに作る必要があるのか?」


 という点についても、今後、問題視するようになるでしょう。


 私に言わせれば、日本の高速道路は総延長で見てもそれほど
 長大なものではありません。それをチマチマと工事することで
 予算を使おうなどというのは全く持って論外だと思います。


 今回の暫定税率の問題を契機として、
 見直しを図ってもらいたいと思います。


●道路特定税源の今後の行方は?


 具体的に、道路特定財源をめぐる問題について、
 今後の展開はどのようなことが予想されるでしょうか?


 まず、「一般財源化」については、民主党が今年からの
 全額一般財源化を主張していますが、若干難しいだろう
 と思います。


 福田首相が言うように来年からの実施というところで
 落ち着くのではないかと思います。また、いわゆる道路族は、
 今一度自分たちの利権を維持しようと主張しているようですが、
 さすがにこれは無理な主張です。


 「暫定税率」については、民主党が4月から完全撤廃を主張し、
 一方、福田首相は来年以降、環境問題や財政事情などを
 踏まえて検討するという意向を示しています。


 環境問題を考慮するのは当たり前のことですが、まずは
 問題となっている「暫定税率」を下げるという第1歩を取る
 ことから始めるべきです。


 こういった問題を切り離して議論しないと
 論点がぶれる可能性があります。


 また、民主党の前原議員などは、環境の問題について、
 環境税として徴収すればいいなどと言っていますが、
 私は全く賛同しかねます。


 暫定税率問題と環境問題という2つの問題を、
 きちんと分けて考えることができていないのだと思います。


 最後に「道路整備の中期計画」については、道路族が10年間で
 59兆円投じて整備するという主張をしていますが、
 これも今となっては無理な話だと思います。


 ここも福田首相が言う
 「5年に期間を短縮して新たに作成し直す」
 という方向で良いのではないかと思います。


 全体として見ると、福田首相の立ち位置としては、
 これまでの利権を守りたい道路族と抜本的に改革を主張する
 民主党のちょうど真ん中のような立ち位置になっています。


 私は、このまま福田首相が、両者の間に立ってリーダーシップを
 発揮してくれることが、この問題を解決するには
 最も良いのではないかと思います。


※ 「首相・与野党の道路特定財源を巡る主張」チャートを見る
→ 


 ガソリン価格の25円値下げなどの主張をして、民主党としては
 大いに勢いに乗っているところかも知れません。しかし、
 前原議員の言う環境税も然りですが、私に言わせると、
 勢いだけで何でも言えば良いものではないというところです。


 この問題の解決を考えるならば、民主党にはこのあたりを
 潮時として引いてもらうのが良いと思います。


 いずれにせよ、福田首相がリーダーシップを
 発揮しないことには始まりません。福田内閣支持率は厳しい
 局面を迎えていますが、ここで福田首相には、
 日本の首相としてのリーダーシップを大いに期待したい
 と思っています。


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