- 本文の内容
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- 森ビル 虎ノ門地区の再開発計画を発表
- 耐久消費財 テレビの平均使用年数 2015年度は8年
都心の建築ブームの危険性。オリンピックへの期待が大きすぎる
森ビルは先月13日、東京港区の虎ノ門地区の再開発計画を発表しました。複合施設の虎ノ門ヒルズを囲むように、地上36階建てのビルと56階建ての住宅棟を建設するもので、事業総額は4000億円になる見通しとのことです。
対面にヒルズビジネスタワー、ヒルズステーションタワー、レジデンシャルタワーを臨むアンダーズ東京を始め、虎ノ門付近の開発は着実に進んでいます。
多くは2020年のオリンピック前に完成する予定で進められています。特に虎ノ門と新橋間を結んだマッカーサー道路は、今後湾岸までつながってオリンピック時には大動脈として活用される予定です。
虎ノ門と羽田空港間のアクセスは、約15分で行けるようになるので格段によくなります。一方で、都心に事務所が集中しすぎてしまい、果たして完成しても空室を作ることなく埋まるのか?という懸念もあります。
仮にすべてが埋まったとしても、ドーナツ化現象が加速することになります。さらに玉突き現象で、ペンシルビルなど古いビルに空室ができて賃料が上がらない状態になってしまいます。その結果、都心の賃料も上がりにくくなる可能性があります。
1995年頃から10年間ほど、ちょうど同じような現象に悩まされましたが、それが繰り返されるかも知れません。
虎ノ門付近の再開発を別にしても、都心の建築ブームは少し行き過ぎている感があります。ややオリンピックを過大評価しているのではないかと私は思います。
耐久消費財では景気を刺激することはできない
内閣府の消費動向調査によると、自動車など長く使う耐久消費財の使用期間が伸びていることがわかりました。携帯電話、自動車のそれは右肩上がりの状態です。
2015年度のテレビの平均使用年数は前年度より0.6年長い8.0年になっています。15年ほどの期間で見ると、約10年弱だった使用期間が短くなってきています。色々と新しいものを発売し、刺激している結果です。
ただし、それでも絶対的な使用期間として見ると長いと言えます。私は98年からずっと同じテレビをメインで使っていますし、寝室においている別のテレビも長く使っています。
耐久消費財はほぼ100%浸透するものなのです。日本全体で約8000万台の買い替え需要とすれば、10年の買い替え期間ならば「800万台/年」、5年だと「1600万台/年」の買い替えになります。
つまり、買い替え需要は耐用年数の逆数に比例します。耐用年数が1年伸びると、需要が10%落ち込むということもあり得ます。
一生懸命新しいものを作って市場を刺激しようとしても、なかなか驚かない時代になってきています。そもそも昔から使っているものがダメになりません。
テレビ市場で言えば、液晶テレビが登場して以来、革命的な変化は起きていません。根本的にここがひっくり返らない限り、需要が伸びることは期待できないでしょう。
こうした耐久消費財の使用期間の長期化が、消費不況の理由の1つになっていることは間違いありません。
だからといって、耐久消費財で景気を刺激しようとするのは間違いだと私は思います。エコポイントの結果を見てもわかるように、そんなことをしても不況になっただけで根本的な変化はありませんでした。
選挙目当ての短絡的な政策では意味がありません。いい加減、日本の政治家も学ぶべきでしょう。
耐久消費財で景気を刺激するのではなく、サービス業、旅行業、飲食業などその他の分野で新しい需要を生み出し、景気を刺激する必要がある、ということを理解して欲しいものです。
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※この記事は4月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は耐久消費財の話題をお届けしました。
大前は、テレビや自動車の長期使用が、消費不況の要因であると指摘。耐久消費財の買い替え需要ではなく、成長が期待される分野で、需要創出を行う必要性を解説しました。
これは問題解決において重要な視点です。どの市場ならば成果を上げることができるのか、正しく把握することが求められます。
まずは世の中のトレンドを掴むこと。そしてその上で、高い成長性が見込まれる分野に絞っていくことが、大きなインパクトにつながっていきます。
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