大前研一「ニュースの視点」Blog

KON618「タカタ・ヤマトHD・中国関税~中国人の「爆買い」は終焉を迎えるか?」

2016年4月22日 タカタ ヤマトHD 中国関税

本文の内容
  • タカタ 8月にスポンサー選定、経営体制刷新へ
  • ヤマトHD 中国・京東集団と提携
  • 中国関税 海外購入品への関税引き上げ

タカタはスポンサー探しをしている場合ではない


エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題が深刻になっているタカタが12日、8月末までにスポンサー企業を決めて新たな再建案を策定する方針を、自動車メーカーや銀行に伝えたことがわかりました。

スポンサー企業から経営陣を受け入れ、創業家の高田重久会長兼社長は退任する見通し。リコール費用の負担などについても、9月をめどに自動車メーカーや銀行団との合意をめざす考えです。

これは当然といえば当然のことでしょう。今まで会長兼社長を続けていたことに驚きます。リコール費用の全貌は明らかになっていませんが、2兆円は下らないとの見通しです。

タカタは非常に優秀な会社でした。世界中50ヶ所以上に拠点を持ち、様々なメーカーと取引をして、売上高も順調でした。

しかし今回の事故に対する責任の取り方、そして責任の認め方に問題がありました。米国政府との話し合いについても、率直に言うと、愚鈍すぎた点が否めません。創業家も手を引き、新しい人に来てほしい、ということですが難しい状況です。

おそらく自動車会社はタカタに手を出さないでしょう。カナダ、米国、欧州には自動車部品会社も多数ありますが、2兆円の事後処理がある企業のスポンサーに名乗り出るのは考えにくいと思います。また、産業再生機構なども難しいと思います。

ゆえに、この会社は「破綻」するしか道は残されていないでしょう。創業家の株を失うだけではなく、再生処理に持っていくしかありません。この期に及んでスポンサーを見つけようというのが、ポイントがズレてしまっていると私は感じます。


中国人の「爆買い」が終焉を迎える?


ヤマトホールディングス(HD)は中国インターネット通販2位の京東集団(JDドットコム)と提携する方針を明らかにしました。中国の消費者がネットで注文した日本製品を日本から最短4日で消費者の手元に届けるもので、国境をまたいだ宅配サービスの提供で日本企業の商機が広がりそうとのことです。

ポイントは税関・関税手続きでしょう。輸送期間が最短4日というのは、非常にメリットが大きいと思います。JDドットコムはアリババに次いで中国インターネット通販2位。ヤマトと提携し、日本のサイトで販売するとなると、売れるものはたくさんあるでしょうし、大きく発展する可能性は高いでしょう。

競合になるアリババはソフトバンクが株式を保有しているので、ヤフーとの結託を強めていくことになるでしょう。インターネット事業を展開している同士で相性は良いと思いますが、「物流」の担い手がいません。ヤマトに匹敵する物流を誰がやるのか?という点が課題になるでしょう。

いずれにせよ、中国人が中国にいながら普通に日本のサイトで買い物ができる環境が向上することは間違いありません。BtoCのEC市場規模を見ると、中国は米国を抜いてトップに立っています。日米中の越境ECの市場規模を見ると、中国は米国と日本から半々の割合で、総額1兆2000億円の買い物をしています。

この数値を見ても、日本のサイトから購入することに、抵抗感も障害もないでしょうから、さらに大きく伸びると思います。

一方で、いわゆる「爆買い」は今後減っていくことになると思います。

* * *

中国政府は8日、海外で購入した商品に課す関税を引き上げるとともに、税関当局が空港で行う検査を強化しました。中国政府は、中国人観光客が日本など海外で大量の買い物をする「爆買い」が国内消費の低迷につながっていると見ており、関税の引き上げにより、中国国内での買い物を促す狙いです。

今どき、これも極端な政策だと思います。時計、お酒、化粧品などの高級品への関税が60%になるということで、そうなるとこれら高級品に対する購買意欲は一気に激減すると思います。

しかし一方で、日本に来ている中国人観光客の「爆買い」を見ていると高級品ばかりではなく、日用品も多いことが分かります。目薬や魔法瓶など、ドラッグストアーなどで安く売っているものも「爆買い」の対象になっています。

中国人観光客のプランを見ると、3泊4日で5万円のツアーで来て、15万円の買い物をしていくという人が大勢います。ショッピングツアーとなっているのでしょう。日本も古き良き時代、ハワイに行ってマカデミアナッツやお酒など大量のお土産を買ってくる人が大勢いましたが、中国の消費者はまさに同じ状況です。

中国の関税引き上げによって、高級時計でスイス、酒・化粧品で欧州と米国が影響を受けるでしょう。そして、化粧品では韓国も打撃が大きいと思います。日用品の「爆買い」もある日本への影響は、他と比べるとそれほど大きなものにはならないと私は見ています。

いずれにせよ、60%の関税によって中国国民の不満は高まるでしょう。

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※この記事は4月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は中国関税の話題をお届けしました。

海外での爆買いを抑えるため、高級品の関税を引き上げた中国。これに対し大前は、日本では安価な商品も爆買いの対象になっているため、その影響は他国と比較して大きくならないと指摘しています。

一見するとインバウンド需要に影響がありそうですが、「中国人観光客は何を買っているか?」という視点で冷静に考えると、他国と比べ大きくは関係しないであろうことが推測されます。

現場を観察し、ファクトを集めることは問題解決の基本です。思い込みに囚われずに、実態に基づいて考えることが重要です。

★問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://www.lt-empower.com/

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