大前研一「ニュースの視点」Blog

KON616「韓国ハンコックタイヤ・NTT~韓国タイヤメーカーの勢いが止まらない」

2016年4月8日 NTT ハンコックタイヤ

本文の内容
  • 韓国ハンコックタイヤ 初の米工場を2016年末までに稼働
  • NTT 米デルのITサービス部門を買収

韓国タイヤメーカーの勢いが止まらない


タイヤ世界7位の韓国ハンコックタイヤは先月22日、初の米国工場を2016年末までに稼働させると発表しました。総額8億ドル(約890億円)を投じて建設を進める方針で、アジアを中心とする供給網を北米に広げ、現地生産で米自動車市場を開拓する考えです。

ここに来て、韓国のタイヤメーカーの伸びが目立ちます。ヒュンダイに支えられつつ、日本企業を上手く利用した結果と言えるでしょう。日本企業と提携し、技術などを習得し、寝首をかいて自らが世界化することに成功しました。今では世界的な競争相手に成長し、日本企業としては二度と手を結びたくないと思っているでしょう。

タイヤ業界の市場を見ると、ブリヂストンがトップシェアで、ミシュラン、グッドイヤーで御三家を形成しています。その次に、ドイツのコンチネンタル、イタリアのピレリ、住友ゴムと続きます。住友ゴムもダンロップを買収して、頑張っています。

そして、その次にハンコックタイヤが続き、すでに横浜ゴムよりも大きな規模になっています。さらに「その他」に分類されるシェアも多く、中国、トルコの会社、韓国のクムホタイヤなどもここに属しています。

いずれの韓国のタイヤメーカーからも、勢いを感じます。ヒュンダイの存在は大きいですが、それだけではない部分もあります。

レース用、航空機用のタイヤなどは作るのが難しく、これまでブリヂストンやミシュランくらいしか作れないモノでしたが、ハンコックはリスクを取りながらここにも手を伸ばしてきています。リスクテイカーとして失うものがない、という勢いで参入してきます。今のタイヤ業界においては、ある意味、台風の目になっています。

かつてブリヂストンも、同じような立場でした。ファイアストーンの社名に似ている日本のタイヤメーカーは米国メーカーから煙たがられながらも、勢いに乗って成長しました。同じようなものを感じます。

タイヤ業界の特徴として注目したいのは、御三家によって寡占化していないことです。グッドイヤーの衰退もあって、以前は御三家だけで60%近いシェアを持っていたのに、今では40%にも満たないレベルに落ち込んでいます。「その他」に分類される小さい企業も非常に多いのが面白いところです。

この他に、発展途上国に行くと「リトレッドタイヤ」があります。古いタイヤの上に新しいゴムを被せて溝を作るというものです。この部分は市場に含まれていません。

世界の御三家といえども、「その他」もろもろに押し込まれているのが現状です。普通の市場であれば寡占化していくものですが、その逆になっているのがタイヤ市場の特徴であり、今後の展開に注目したいところです。


NTTにとってペロー・システムズは米国進出の大きな足がかり


NTTは28日、米デルからITサービス部門を買収することで同社と合意したと発表しました。デルが2009年に買収した旧米ペロー・システムズを中核に関連の3社の株式を、NTTデータが全額取得する方針で、株式取得額は30億5500万ドル(約3500億円)になるとのことです。

この3500億円という買収金額はそれほど悪いものではないと思います。デルが買収したときの金額も同程度でした。ペロー・システムズは、ロス・ペロー氏が創業した病院のシステム等に強みを持つ会社ですが、デルに買収された後、弱体化したという話も聞いていません。デルはストレージメーカー大手のEMCを買収するなど、別の方向性を目指し始めています。そのための売却ですから、これはチャンスでした。

NTTは以前からこの手の会社を狙っていました。かつてロス・ペロー氏が創業したEDSという会社も候補の1つでしたが、残念ながらGMに売却されてしまいました。その意味でも、今回のペロー・システムズは申し分がない相手だと思います。

なお、ロス・ペロー氏はGMにEDSを売却する際に「同業はスタートしない」と約束させられていましたが、その後大統領選に敗れ、ペロー・システムズを創業しています。

正確に言えば契約違反だと思いますが、すでに期限も切れているでしょうし、NTTに累が及ぶことはないでしょう。ペロー・システムズを手に入れることで、NTTは米国のメジャーな部分へ入り込むことが出来ます。

インサイダーとしての橋頭堡を築いたと言えるでしょうが、問題は今後の運営です。下手に手を出すと上手くいかないでしょうから、任せる部分は任せて、NTTデータとして得意なものを持ち込むという方針が良いと思います。

NTTの米国進出は苦戦の連続でした。携帯会社、サーバー会社など様々な買収を試みましたが、どれも上手くいきませんでした。ぜひ今回の買収は成功させて欲しいと思います。

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※この記事は4月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はタイヤメーカーの動向に関する記事をお届けしました。

大手に寡占されず、グローバルで多数の企業が参入しているタイヤ市場。大前は、御三家でさえも「その他」のプレーヤーに押し込まれている状況と解説しています。

取り巻く環境を把握することは、問題解決において最初に取り組むべきポイントです。その過程で、自社が属する業界はどのような構造になっているかを掴む必要も出てきます。

脅威と機会を整理し、自社の立場を理解すること。このような大きな視点を持つことで、次なる成長の一手を検討することが出来ます。

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