大前研一「ニュースの視点」Blog

KON611「シャープ・産業革新機構~鴻海は偶発債務を慎重に判断すべき」

2016年3月4日 シャープ 鴻海精密工業

本文の内容
  • シャープ 買収交渉期限延長で合意
  • 産業革新機構 シャープ出資交渉から撤退
  • 竹中工務店 京都・東山地区に高級ホテル建設へ

鴻海は偶発債務を慎重に判断すべき


シャープと鴻海精密工業は26日、買収交渉の期限を当初の2月29日から延長し、3月7日の契約を目指すことで合意しました。シャープが24日に負債となる恐れのある偶発債務のリストを提出したことを受けたものです。鴻海は弁護士や公認会計士らをシャープに派遣し、債務内容を精査する方針です。

偶発事象のうち、可能性が高いものは有価証券報告書に開示する必要があります。シャープの有価証券報告書に開示されていた偶発債務は800億円でしたが、今回の取締役会決議の前日に提出された偶発債務は、3500億円になっていました。産業革新機構は、ある程度この事実を掴んでいたそうですが、鴻海からすれば寝耳に水だったでしょう。

偶発債務は発生するかどうか未定のものですが、今回のシャープの偶発債務を見ると、発生する可能性が高いと私は感じています。

例えば、日本政府による貸付など産業革新機構が相手であれば返済不要となるかも知れませんが、鴻海には返済を求める可能性は大いにあると思います。その他、訴訟案件なども発生する可能性が高いでしょう。

こうして見ると3500億円という金額は「リアル」なものとして受け止めたほうが良いと思います。債務が3500億円に膨れ、債務超過に陥りかねない状況です。

債務超過になりかねない立場にありながら、交渉相手を天秤にかけている場合ではない、というのが実態だと思います。本来ならば、会社更生法を申請した上でモノを言うべきです。役員の身分を保証しろだの、社員をクビにするなだの、そのような要求をできる立場ではないでしょう。

この状況を踏まえると、鴻海側も今回の買収を白紙に戻す、あるいは、交渉条件を大きく変更してくる可能性は大いにあると思います。

今なら銀行やシャープに身奇麗になってからもう1度、と言えます。しかし、買収後は誰も責任をとってくれません。偶発債務が発生したら、かなりの痛手です。

焦って郭台銘会長が一人乗り込んで決定する状況ではなく、かなり慎重にすすめる必要があると思います。買収してしまったら、もう何も言えなくなりますから、鴻海にとって今がラストチャンスです。


トップの内紛が招く恐ろしい影響


官民ファンドの産業革新機構は26日、意思決定機関の産業革新委員会を開き、シャープが鴻海精密工業への傘下入りを決めたことを報告しました。機構の志賀俊之会長兼最高経営責任者は「今日の報告をもって案件はクローズする」と話し、シャープとの出資交渉から撤退する考えを表明しました。

志賀氏と言えば、現在日産の代表取締役副会長であり、かつてはカルロス・ゴーン氏の元で、日産リバイバルプランの立案・実行に力を振るった人です。

日産リバイバルプランは、本当に厳しいものでした。もし志賀氏がゴーン氏の教え子だとすれば、シャープにとって産業革新機構に任せたほうが厳しかったかも知れません。

鴻海の郭台銘会長に比べて、志賀氏のほうが柔和な印象がありますが、実際のところ志賀氏はトップ3人の退任と1万人の解雇を宣言していました。

産業革新機構はシャープと東芝の白物家電部門を統合させるつもりでしたが、東芝はパートナーがいなくなったということで、トルコの電機大手「アーチェリック」と新たに交渉を開始したとのことです。

また、シャープの液晶はジャパンディスプレイとの統合に向けて動いていましたが、こちらもすでにジャパンディスプレイがJOLEDを買収する交渉を開始したと報じられています。

このような状況の中、鴻海が手を引いてしまったら、一体シャープはどうするのか?まさにシャープはお粗末な会社と言わざるを得ません。

シャープにしろ、東芝にしろ、またかつてのNEC、富士通など、全て問題が起こっている会社の根源にあるのは「トップの内紛」です。トップの内紛がどれほど恐ろしいものか、他の企業にとっては他山の石とすべきものだと思います。


竹中工務店の京都高級ホテルには外資系が殺到する


竹中工務店は観光名所として知られる京都・東山地区に高級ホテルを建設します。老舗料亭から敷地の一部を借り、歴史ある街並みと調和した和風な外観にする計画とのこと。外資系を含めた大手ホテル会社への運営委託を検討しているということです。

老舗料亭「京大和」の一部を借りるそうですが、ここは抜群のロケーションです。円山公園から清水寺に歩いていく途中にあり、近くには高台寺もあります。藤の花がきれいで、五重塔を一望できる最高の場所です。

本当はもっと高い位置から展望したいところですが、京都の場合そうはいきませんから、地下を3階までにする予定とのことです。京大和に外国人を案内すると、みんな感動します。

多少プランに中途半端な部分があると感じるところもありますが、とにもかくにも場所が秀逸です。

ここに高級ホテルを作るということですから、おそらくシャングリラホテルなども含め、外資系のホテルが殺到してくると思います。

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※この記事は2月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はシャープの話題を中心にお届けしました。

鴻海の傘下入りを決めた同社。大前は、問題が起きている企業の根源にはトップの内紛があると解説しています。

トップの本来の役割は企業が向かうべき方向を示すことにあります。これは、問題解決者としてのあるべき姿でもあります。

どこに問題の原因があり、どのようにすれば解決に近づくことができるのか?本質的な分析に基づき、その方向性を考えていかなければなりません。

徹底的に考え、決断し、人を巻き込んでいくこと。このような資質が問題解決者には求められます。

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