大前研一「ニュースの視点」Blog

KON604「国内GDP・GDP算出法・国債発行・国内経済~1人当たりGDPで5万ドル台を目指す政策を」

2016年1月15日 GDP 国債 国内経済

本文の内容
  • 国内GDP 2014年の1人当たりGDP
  • GDP算出法 来年改定
  • 国債発行 「前倒し債」上限額 2016年度に48兆円へ
  • 国内経済 「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした

1人当たりGDPで5万ドル台を目指す政策を


内閣府が2015年12月25日に発表した統計によると、2014年の日本の1人当たり名目GDPは3万6230ドルとなり、前年から6.0%減少したことがわかりました。前年を下回るのは2年連続で、経済協力開発機構(OECD)の34カ国中20位になり、統計で遡れる1970年以来の最低に転落しました。かつて主要国で3位に位置したこともある日本にとって、20位というのは何ともみっともない状況です。

名目GDPは、円高になると上がり、円安になると下がります。今の状況は仕方がないと思う人もいるでしょうが、そうではありません。

確かにドルベースの推移を見ると、為替の影響もあり上下に変動していますが、「今が最悪」というタイミングではありませんので、為替だけを理由にしてGDPが伸び悩んでいる現状を説明するのは無理があるでしょう。為替に関係なく「日本のGDPは伸びていない」というのが事実です。

そのような中、日経新聞は先月27日、「GDP算出法、来年改定」と題する記事を掲載しています。日本のGDPに算入されていない企業の研究開発費などが2016年7-9月期の2次速報から新たに算入される見通しを紹介。これにより、名目GDPは現在の500兆円から3%以上、金額にして15兆円以上増える見込みとのことです。

これは当然のことかも知れませんが、当初の「アベノミクスによる経済成長」という話とは別ものです。計算方法を変えたら3%伸びました、では筋が違います。政府の政策によって改善したわけではありませんから、これをもって結果として受け入れることはできません。研究開発費などを算入するのは、他の国でも事例があるので良いと思いますが、それでも結局のところ、わずか3%しか改善しません。

日本の1人当たりGDPはかつて4万ドル台でしたが、今は3万ドル半ばでイタリアと同レベル。世界のトップは6万ドル台です。私としては、せめて5万ドル経済を目指す「抜本的な政策」を打ってほしいところです。

安倍首相が進めている「携帯電話の料金値下げ」「法人税減税による投資拡大の要請」などを見ていると、残念ながらそのような政策になるとは思えません。ポイントがズレていると私は感じています。


いくら隠れた資産があっても、引っ張りだせなければ机上の空論


財務省は次年度に発行する予定の国債を1年早く発行する「前倒し債」の上限額を、2016年度は48兆円に引き上げる方針を固めました。2015年度の当初計画に比べ16兆円増え、過去最高額となる見込み。日銀の異次元緩和で市場に出回る国債が少なくなっており、需給の逼迫で金利が乱高下するのを防ぐ狙いです。現在、日本は国債で流動性を確保しているため、それが足らないという判断でしょう。

確かに国債の需要はありますが、これは国の債務を増やすことに直結するので、「禁じ手中の禁じ手」だと私は思います。一方で、日本の借金はそれほど大きいものではない、という錯覚を抱いている人もいます。

例えば、現代ビジネスは先月28日、『「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした』と題する記事を掲載しました。元大蔵省・財務官僚で経済学者の高橋洋一氏が国のバランスシートを分析した結果を紹介。財政破綻を煽る通説は、バランスシートの負債側しか見ていないことや資産として政府内の子会社を連結していない問題点があるとし、それらを仔細に見ていけば日本の財政はマスコミや学者が言うほどに悪くはない、と指摘しています。

私は以前から高橋洋一氏のことを知っています。「財務省が握っている特別会計がある」「いざというときのリザーブになっている」と、高橋氏は20数年間ずっと同じことを主張し続けています。しかしながら、その間一度も、指摘している資産が借金返済に使われたことはありません。

国が強い意識を持って、財務省が握っているものを丸裸にして国の借金返済に自由に使えるのならいいのですが、結局のところ、「使えなければ意味がない」のです。死ぬときに貯金はいっぱいあるけどもっと使っておけばよかった、というのと同じです。

そして重要なのは、マーケットがどう見るか、ということです。「資産があります」と言われても、それを引っ張りだすことができず使えないのであれば、役に立たないものとマーケットは判断します。だからこそ、日本の国の格付けも落ちていくわけです。

もし「いざというとき」のための資産だというなら、それを使うルールを法律で定めるべきだと私は思います。「格付けがここまで落ちそうになったら、これだけの資産を取り崩して借金返済に充てる」ということを決めて、格付けが落ちないようにすべきです。

高橋氏の話は「ウケ」がいいのは間違いないと思いますが、結局のところ20数年間、リザーブの資産を引っ張りだすことができていないのも事実です。それが実現できなければ、どれだけ「実は、資産があって換金できる」と言われても机上の空論に過ぎません。

マーケットがどう判断するか、ここに焦点をあてるべきだと思います。

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※この記事は1月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はGDPに関する話題を取り上げました。

計算方法が変更されることにより、3%以上数値が増える見込みのGDP。大前は、アベノミクスによる経済成長ではないため、結果としては受け入れられないと指摘しています。

データを見る際は、なぜその数字になったのか確認する必要があります。様々な要因が存在する中、何が最も影響を与えていたのか理解しないままでは、結果を正当に評価することはできません。問題解決においては、このような数字の読み解き方が求められます。

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