大前研一「ニュースの視点」Blog

KON590「TPP・メキシコ情勢~TPPはこれから数ヶ月が本当の山場」

2015年10月16日 TPP メキシコ情勢

本文の内容
  • TPP 12カ国が大筋合意
  • メキシコ情勢 2014年自動車生産336万台

TPP大筋合意とはいえ、これから数ヶ月が本当の山場


環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する日米など12カ国は5日、閣僚会合後に共同記者会見して大筋合意に達したと発表しました。

全31の分野をカバーする大型の通商協定の締結で工業品の関税は99.9%が撤廃され、知的財産権や環境保護まで幅広いルールが整備されます。アジア太平洋地域のヒトやモノの移動が活発になり、長い目でみた地域の成長や安定につながることが期待されています。

と言うものの、これから米国、日本など、それぞれの国の議会や国会で承認されることが条件になっていますので、これからの数ヶ月が本当の山場かも知れません。米国議会では共和党が反対に回ることが予想されます。

また民主党内にも、医療、知的所有権などの分野では賛同者が多いものの、ヒラリー氏を筆頭に工場労働者を抱える一部の議員は反対する可能性が高いでしょう。

日本の国会でも承認は一筋縄でいかないと思います。もともと賛成派の民主党も、今は政府を叩く道具として、重箱の隅をつつくような形で反対してくることが予想されます。

発表を見ていると、すぐにでも安くて美味しい豚肉が食べられるようになると思ってしまいますが、8年、あるいは10年以上の時間がかかる項目もあります。

またTPPによって被害を受ける農家の駆け込み寺がすでに出来始めています。政府は「対策室」の名のもとにお金での解決を図っていく姿勢です。

米国、日本だけでなく、ニュージーランドやオーストラリアなどの他国でも承認にはいくつかの障壁があります。プラス面が多い政策ですが、一部のマイナス面を拡大し、被害を受ける人をクローズアップされると、スムーズに進めることは難しいと思います。


メキシコは自動車産業をフックにして上昇していく方向へ


国際自動車工業連合会(OICA)によると、2014年のメキシコの自動車生産台数は前の年に比べて10%増の336万台となり、ブラジルを抜いて世界7位になったとのことです。

ペーニャ・ニエト大統領になって、かなり調子が上向いてきています。南北格差の問題などもありますが、自動車産業に焦点を当てると、世界の自動車メーカーは「メキシコから米国へ」「メキシコから南米へ」という動きを加速させています。日本でも、マツダやスズキも興味を持っていると言われています。

日産は古くからメキシコを利用していて、一時期、メキシコ・ペソが下落した時には苦汁をなめましたが、今はそれがプラスに転じています。

米国とメキシコの国境に自動車産業クラスターができていて、日本からも800社以上の企業が進出しています。この5年間で2倍の規模になっており、メキシコブームと言っても良いでしょう。

メキシコの自動車生産台数は世界7位になりましたが、ペーニャ・ニエト大統領はさらに韓国とインドを追い抜いて5位になることを目指していると公言しています。一見、無謀に見えるかもしれませんが、タイの状況に鑑みると、私は決して不可能な数字ではないと感じています。

タイはアジアの拠点として機能することに成功しました。メキシコも、北米・南米への拠点として確固たる地位を築ければ、十分可能性があると思います。

韓国などはこれ以上増産することはないでしょうから、次第にメキシコで生産して米国へ持っていくということになるでしょう。

現在、メキシコの輸出品目のトップは自動車・同部品になっています。特区などに期待せずとも、競争力を持つ地域も出始めています。大いに期待したいところです。

麻薬問題、南北格差問題など、メキシコは苦労も多いでしょうが、少なくとも1つの産業で「当たり」を引くのは今後のメキシコにとっても非常に重要です。

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※この記事は10月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はTPPの話題をお届けしました。大筋合意に達したものの、今後は議会での反対勢の説得が課題となります。

いかに障壁を乗り越えていくか?多くの場合、施策の実行にあたり阻害要因はつきものです。これら要因を正しく理解し、それに合った対処方法を検討することが現場では求められます。

問題解決は解決策だけを考えて終わりではありません。それを実現するための緻密な仕組みや計画作りまでが必要となります。

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