大前研一「ニュースの視点」Blog

KON589「カタルーニャ情勢・ドイツ情勢~カタルーニャの独立は、スコットランドとは状況が違う」

2015年10月9日 カタルーニャ ドイツ

本文の内容
  • カタルーニャ情勢 マス知事率いる独立賛成派が過半数獲得
  • ドイツ情勢 東西統一25周年で記念式典

カタルーニャの独立は、スコットランドとは状況が違う


スペインのカタルーニャ自治州で先月27日、州議会選挙が投開票され、中央政府からの独立を主張するマス知事率いる保守系与党を中心とした独立賛成派が過半数を押さえ、勝利しました。マス知事は勝利集会で「計画を進めるための大きな力を得た」と述べました。

一方、スペイン中央政府は独立を認めない構えで、今後は激しい駆け引きが繰り広げられる見込みです。

カタルーニャは人口も多く、経済的に豊かな地方です。実は首都のマドリッドよりもGDPは大きくなっています。

カタルーニャの独立にあたり、スコットランドと同じ運命をたどるのでは?と思う人もいるかも知れませんが、状況は異なります。イギリスはユーロに加盟していないので、通貨はポンドを使用しています。イングランドがスコットランドにポンドを使わせないと言えば、これにはEUも関与することはできませんでした。

一方、スペインはユーロに加盟しています。マドリッド側は、カタルーニャが独立したらユーロから離脱することになるが、独自通貨でも発行するのか?と指摘していますが、私はそうはならない気がしています。

カタルーニャは、パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、アントニオ・ガウディなど数々の天才を生んでいます。そんな歴史を持つカタルーニャに対して、欧州の人たちは、感情的には好意的に受け止めているように感じます。

もしカタルーニャが独立を宣言し凄惨な戦いになったら、欧州の人たちはカタルーニャに味方するのではないかと思います。少なくとも、スコットランドとは違う空気が流れているのを私は感じています。

スペイン政府は、カタルーニャの独立を違憲だと主張していますが、スコットランドのときよりも厳しい状況にあるのは、間違いないでしょう。


ドイツ統一後、25年の歩み


ドイツは3日、1990年の東西統一から25周年を迎え、西部フランクフルトでガウク大統領やメルケル首相ら約1300人が出席して記念式典が開かれました。

統一の象徴となっている首都ベルリンのブランデンブルク門前でコンサートが行われるなど各地でイベントがあり、ドイツは数日間にわたって祝賀ムードに包まれています。

ドイツの統一は、当時のヘルムート・コール元首相のおかげで成し遂げられました。東ドイツにハンディキャップを与えて、西ドイツとの差が少ないところまで持って行きました。

マルクの比率では、本来ならば「10対1」くらいの差があったのに、「2対1」と定めて東ドイツをバックアップしました。これは、本当に大英断だったと私は思います。

私は当時の東ドイツを訪れたことがありますが、それはひどい状況でした。ドルトムントなども、すべてがくすんで見えました。公害は垂れ流しで、家を見れば建物も汚く、裸電球1つで薄暗い中で生活している人が大勢いました。

そんな状況から25年で、今の状況まで復興したのは、見事だと思います。西ドイツの人たちが、そのために負担に耐えぬいたのも感嘆に値します。沖縄統一後の25年に比べると、ドイツの方が上回っていると言わざるを得ません。

またもし、朝鮮半島が統一することがあっても、北朝鮮を今のドイツと同じような状況まで持っていくのは相当大変だと思います。おそらく韓国の人たちは、そのための負担に反対するでしょう。

統一後ドイツが歩んできた道のりとその結果を見て、本当に心からドイツの人たちに拍手を送りたいと思います。

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※この記事は10月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はカタルーニャ情勢について解説をお届けしました。

スコットランドの独立運動と同様の結末を迎えるのでは?と捉えることもできる話題ですが、それとは状況が異なると大前は指摘しています。

これらの現象はそれぞれ何がどう違うのか?一見すると似たような現象であっても、比較することによって違いは見えてきます。そして異なる点が分かることによって、初めて意味合いを見出すことができるのです。

正しく意味合いを抽出することで、筋の良い仮説を導き出すことができます。

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