大前研一「ニュースの視点」Blog

KON587「消費増税対策・地熱発電~消費増税の負担緩和案は白紙撤回か?」

2015年9月25日 地熱発電 消費増税対策

本文の内容
  • 消費増税対策 10%増税後の負担緩和案提示
  • 地熱発電 国立・国定公園の規制見直し

消費増税の負担緩和案は、安倍首相お得意の「白紙撤回」が必至


財務省は8日、消費税率を2017年4月に8%から10%に引き上げる際の負担緩和案を、自民、公明両党に正式に示しました。

税率10%を課した上で「酒類を除く飲食料品」(外食を含む)の軽減分として所得に関係なく、1人あたり一律年4,000円程度を給付するというもので、買い物記録を集約するデータセンターの新設などインフラ(社会基盤)整備に約3,000億円を投じる方針です。

私の予想を言えば、安倍首相は将来「白紙撤回首相」の名を欲しいままにすることになるでしょう。エンブレム問題やキールアーチ問題と同様、この施策も絶対に前へ進まないと思います。

消費税の増税分2%への軽減税率というのは公明党が要求していたことで、これに上手く乗じたのがサイバーゼネコンです。

住基ネットでいかさまのシステムを作り上げた彼らに言わせれば、「マイナンバー」「ビッグデータ」の活用などということになるのでしょうが、はっきり言って無駄です。買い物全てに番号を振ってトラッキングデータを取得し、そこから食料品データを抽出し、1年間の総額を算出するそうです。

ところが、その1年間の食料品総額が仮に50万円と想定すると、2%で1万円を還付することになり、ざっと見積もって1兆5000億円足らないと言うのですから、もはや笑い話でしょう。

私が公明党の議員に、施策を提言するのなら「具体的に、こうやって税率を下げろ」という点まで踏み込んで話をするべきだと指摘しています。

例えば、生活必需品をリストアップして定義して、最初から10%ではなく8%にしておけばそれでも良いでしょう。あるいは、上限4000円というならば、対象者を定義してリストアップし、その人たちに対して一括で手当として支給すればおしまいです。わざわざ、巨額のシステムを作る必要はありません。

マイナンバーという言葉に踊らされて、リンクしているのも問題です。マイナンバーは全員必須というものではない、ということになっています。しかし、買い物のたびに提示が必要となると話は変わってきます。また子供のおつかいでも必要となると、かなり面倒です。

そこまでしてマイナンバーを作っても、余計に自分の個人情報が漏洩する可能性を懸念する人が増える気がします。

米国の例で言えば、「フードスタンプ」制度になりますが、こちらを研究するのも良いでしょう。対象者に配布されるフードスタンプでは、1ヶ月に120ドルまで食料品のみが購入できるようになっています。

ただし、問題もあります。人口の約5分の1にあたる4,600万人の対象者に年間1人あたり17万円~18万円の負担をしなければいけません。また、フードスタンプを転売して現金を得ようとする人もいます。

公明党はこうした事例も参考にしながら、どこに落とし所を持っていくのかを明確に示すべきです。このままいけば、最終的には安倍首相による「白紙撤回」になることはまず間違いありません。


日本は潜在的な地熱大国。地熱発電をもっと進めるべき。


政府は地熱発電所を建設しやすくするため規制を見直す方針を明らかにしました。

火山などがあり地熱資源が豊富な国立・国定公園内に建てる場合の高さ制限を緩め、採掘費用を国が補助する額も現在の2分の1から4分の3に引き上げるとのことです。潜在的な地熱大国である日本において、未だにこんな議論をしているとはあまりに「遅れすぎ」だと思います。

地熱発電所は、火力発電所などに比べると1つずつの単位が小さいのが特徴です。また、査定・認定・環境評価など10年ほどの期間を要します。これらを考慮すると、まず民間企業が請け負うことは無理でしょう。

日本の再生可能エネルギーの代表格ソーラー発電も地表が汚れるなどの問題も指摘されていて、風力発電にもノイズや鳥の死骸問題などがあります。

私は以前から地熱発電にもっと力を入れるべきだと提言してきました。今回の政府方針で地熱発電について「少し前進」したと言えるでしょうが、私としてはさらにもう少し力を入れて進めて欲しいと感じています。

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※この記事は9月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は増税負担緩和案に関する話題をお届けしました。白紙撤回が懸念される同案。これに対して、米国のフードスタンプの事例を研究すべきと大前は提案しています。

この案を実現させるためには何を考えれば良いのか?先行事例の調査を通し、その当たり付けを行うことが可能です。

排除すべきリスクや取り入れるべき具体点など、さまざまな知見を得ることが出来、全体像の整理に繋がっていきます。

より考え抜かれた施策の提案を行うためにも、このような情報収集は必須となるプロセスです。

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