大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON178 ≪韓国人拉致・殺害事件≫タリバン側の巧妙な意図とは

2007年9月7日

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
韓国人拉致・殺害事件
人質解放でタリバン幹部「23億円以上受け取った」
韓国政府は、一貫して否定
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


●内政を優先し、国際社会に迷惑をかけたと非難されてしまう韓国


1日、アフガニスタン旧政権タリバンによる韓国人拉致・
殺害事件で、タリバンの幹部は韓国政府から人質解放の際に
「2,000万ドル(約23億円)以上を受け取った」と語りました。


これは、ロイター通信が報じているものですが、
韓国政府は一貫して否定しています。


この幹部は、最高指導者オマル師が指揮する10人編成の
幹部会議のメンバーで、受け取った身代金は武器購入などに
充てるだろうとのことです。


これは、非常にややこしい話になっています。


韓国政府としては、人質を返してもらうために
様々な交渉材料を探したことと思います。


しかし、タリバンが要求する捕虜を韓国政府が匿って
いるわけでもありませんから、これといった交渉材料はなく、


結局のところ、表向きは12月までに韓国軍を撤廃させるという
条件にしておきながら、身代金を払うことで事態の解決を
図ったのでしょう。


しかし、仮にこれが本当だとすれば、米国を始め、
国際社会としては許容するわけにはいかないでしょう。


テロリストが莫大な資金を得て、今後もテロ活動が
継続しやすくなるという問題とともに、


テロ行為に屈したという行為そのものが
問題視されることになります。


韓国政府は内政を優先して国際社会に迷惑をかけた
というレッテルを貼られることになってしまう、
非常に後味の悪い結末です。


●韓国政府からの資金提供の有無に関係なく、
                 国際社会は混乱させられた


“一方、もし、本当は資金を受け取っていないとしたら?”


ということを考えてみると、非常に面白い事情が見えてきます。


おそらく、実際に資金を受け取っていないとしても、
タリバン側は「資金を受け取った」ことにして発表する
という手を使うでしょう。


なぜなら、そういう発表をすることで、
「今後のテロ活動が継続できる資金を得た」と言えば、
米国や国際社会を動揺させることができるからです。


また、実際には資金を渡していないとしても、
国際社会への立場を考えると、韓国政府は困った立場に
陥ることになります。


イスラム原理主義の考え方に立脚するなら、
「お金を要求しない」という姿勢をとることは、
十分にあり得ることかも知れません。


しかし、だからといって、そのまま素直に発表するとは
限らないというわけです。


実際に韓国政府がタリバン側にお金を渡したのかどうか、
真相は藪の中ですが、


どちらにせよ、今回のような発表によって、


国際社会は、実際に韓国政府からタリバンへの
お金の支払いがあったかどうかに関わらず、
大きなダメージを受ける結果になってしまうのです。


                          以上


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点