- 本文の内容
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- 国内ホテル 都市のホテル不足深刻
- 地方空港 息吹き返す静岡空港
- 日経新聞社 英FT買収でピアソンと合意
エアビーアンドビーの整備を急げ/静岡空港の救いの神は春秋旅行社
日経新聞は、23日、「都市のホテル不足深刻」と題する記事を掲載しました。
訪日外国人の増加に加え、為替の円安傾向で日本人観光客の旅行先も海外から国内にシフトしている現状を紹介。旅行会社は限られた客室を確保しようと躍起で、ビジネス客の宿泊先確保にも影響が出始めているとのことです。
特に顕著なのは中国人観光客でしょう。彼らはビジネスホテルでも利用しますので、大阪などはホテルの稼働率が90%近くになっている状況です。
ここまで稼働率が上がってしまうと、ホテルのサービスレベルはがくんと落ち込んでしまい、ホテルビジネスそのものに影響を与えます。
東日本大震災の後、日本のホテル稼働率は60%台まで下落しました。その状況からここまで上がってきているわけですが、今気付いて「これから建設しよう」と考えても3年~4年はかかってしまいますので現実的ではありません。
外国人が長期滞在する場合には、エアビーアンドビー(Airbnb)の活用などを推し進めるべきだと私は思います。日本には空き家が多いですし、子供が成長して部屋が空いているという家も多いはずです。それらをまとめて、外国人観光客の数十%は民間で受け入れられる体制を整えてほしいところです。
外国人でホテルが溢れかえってしまうと、日本人の旅行にも影響が出てきます。少なくとも4年~5年のうちにエアビーアンドビー(Airbnb)を制度化するべきだと私は思います。
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読売新聞は、23日、「ロビーにあふれる中国人客、息吹き返す静岡空港」と題する記事を掲載しました。
日本を訪れる中国人観光客の目的地が地方へ広がっていて、その玄関口としてにぎわいを見せている代表例が静岡県の富士山静岡空港だと紹介しています。
飛行機が到着するたびに空港ロビーは中国人客らであふれているとのことです。静岡空港に就航する国際線は13路線週47便で、1年前の3路線週13便から大幅に増加しています。
これは上海春秋国際旅行社のおかげです。春秋グループ会長の王正華氏が非常に日本に詳しく、小豆島ツアーなど旅行の企画も細やかに設計しています。閑古鳥が鳴いていた静岡空港にとっては、まさに救いの神でしょう。
私としては、王正華氏に勲一等を授けてもいいのではないかと思うほどです。
日経新聞は、FT買収を契機にして、企業や財界と距離をおくべき
日本経済新聞社は、23日、英国の有力経済紙フィナンシャル・タイムズ・グループ(FT)を買収することで同社の親会社である英ピアソンと合意しました。
8億4400万ポンド(約1600億円)で全株式を取得する予定です。メディアブランドとして世界屈指の価値を持つFTを日経グループに組み入れ、グローバル報道の充実とデジタル事業など成長戦略の推進につなげる狙いとのことですが、私に言わせれば、「笑ってしまう買収」だと思います。
なぜなら今でも日経新聞の記者は、欧州でフィナンシャル・タイムズを読み、それをもとに記事を書いているからです。
私が知っている限り、欧米に行って現地において自力で取材をできる記者はほとんどいません。米国に行けばウォール・ストリート・ジャーナルを、欧州に行けばフィナンシャル・タイムズを読み、それを参考にして記事を書き、日本へ送っているのが現状です。
FTを買収したら、大手を振ってフィナンシャル・タイムズの記事を参考にしていると胸を張れるということでしょうか?笑ってしまう話です。
最近の日経新聞を見ていると、アジアに力を入れているのがわかります。FTとしても、日経のアジア強化を取り込みたいのかも知れません。
日経側としては今回の買収をいい機会として、クオリティペーパーとして一皮むけてほしいところです。日経新聞に対する海外のマスコミの評価は決して高くありません。それは日経新聞が企業や財界と寄り添っている姿勢に起因しています。
例えば、オリンパスの不正を暴いたのは日経新聞ではなく、フィナンシャル・タイムズでした。タカタの問題を取り上げたのも、日経新聞ではなく、ニューヨーク・タイムズでした。
日本の新聞社として先陣を切って不正を暴くべき立場なのに、企業や政府にべったりで何もできなかった日経新聞。海外のマスコミの批判の半分は嫉妬も含まれているでしょうが、残り半分は事実として認めざるを得ません。
企業から広告をもらっているなど、色々な事情があるのはわかりますが、せっかくFTの買収をするのですから、FTからの良い影響を活用して企業とも財界とも距離をとるべきでしょう。
そして、フィナンシャル・タイムズレベルの新聞として、日本やアジアで立場を作ってほしいと思います。これが実現できれば、買収には大きな意味があるでしょう。
私に言わせれば、今の日経新聞の体質を継承するなら、企業や財界にべったりの「大手町新聞」として別会社にしたほうがいいとさえ感じます。
今の日経新聞社にとって、買収額の1600億円は決して安くありません。せっかくそれだけの資金を投じて買収するのですから、将来を見据えて世界レベルの新聞になる足掛かりにしてほしいと思います。
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※この記事は7月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は国内ホテル業界に関する話題をお届けしました。
外国人観光客の増加により上昇しているホテルの稼働率。これに対して大前は、空きスペースを活用するエアービーアンドビーの整備を提言しています。
「新しいホテルの建設」という現実的ではない従来策にこだわっていては、良い解決策は見えてきません。これまでとは違う視点で「ずらして」思考することが、全く新しい解決策を導くことにつながっていきます。
ゼロベースの観点で様々な切り口を検討し、考えの幅を広げることが重要です。
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