大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON172 自動車業界が抱える憂鬱

2007年7月27日

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 米フォード・モーター
 傘下のボルボ売却を検討、ルーマニア工場の買収計画を発表


 北米クライスラー買収 「買収手続き完了時期非常に近い」、
 資金調達苦労との見方を否定
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●フォード、クライスラーの苦難。追い込まれる米自動車大手。


15日、米自動車大手のフォード・モーターが
傘下の高級車ブランド「ボルボ」の売却の準備を
 始めたと報じました。


また、同時に、ルーマニア政府が民営化する
クラヨバ自動車工場の買収計画も発表しました。


ルーマニアの工場を買って、ジャガーとボルボという
世界的ブランドを売却するというのは、私たちの常識では
少し考えられない事態だと思います。


フォードは小型車を持っていないことに
 劣等感を感じていたようですが、ここまで追い込まれて
 いる状況とは、私も思いませんでした。


ジャガーの売却先として有力なのは、
 日本のメーカーではなく、中国、韓国、マレーシア等の
 自動車メーカーだと思います。


なぜなら、日本のメーカーが買わないからです。


ホンダはかつてローバー・グループの支援で
 失敗していますし、マツダはすでにフォード傘下です。


トヨタが買うこともないでしょう。


中国、韓国、マレーシアなど、まだまだブランド力が
低いアジアの自動車メーカーにとっては、世界ブランドが
欲しいと思っているでしょうから、実現する可能性は
極めて高いと思います。


ボルボについては、ハーレーダビットソンが行ったように
MBOを実施する可能性があると私は思っていましたが、


どうやら、ボルボもフォードと同じくらい
 追い込まれていたということでしょう。


おそらく、ボルボもアジアのメーカーによる買収が
有力だと思います。


低迷する米自動車業界ですが、
 ダイムラークライスラーによるクライスラー部門の
 売却についても、難航しているようです。


20日、ダイムラークライスラーの
 北米クライスラー部門のトム・ラソーダ社長は


 米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメント
 による同部門買収の手続き完了時期について
 「非常に近い」と述べていますが、サーベラスが
 資金調達に苦労しているという噂を耳にします。


今米国では、サブプライムローンの問題もあって、
金融機関が慎重になっているので、資金調達が
 難しくなっているのだと私は見ています。


それに、「非常に近い」という言い回しを聞いても、
難航している様子が伺えます。


●日本では「若者の車離れ」という別の問題を抱えている。


日本の自動車業界では、また別の問題を抱えています。


それは、『BusinessWeek, July 23, 2007』で特集されて
いましたが、「若者の車離れ」という現象です。


若者の生活パターンは、昇給や昇進を求めるのではなく、
自分の生活にプラスして、自分のやりたいこと
(趣味や旅行など)をやれればいいという方向に
 変わってきたのだと思います。


それに合わせて、お金の使い道も、自己投資や車などの
物欲を満たすためではなく、友人と食事に出かけるといった
ソーシャルな欲求のために使われています。


昔に比べれば、携帯電話の費用などが負担になっている
側面もあるでしょう。


ただ、かつては親父の車を借りて乗るという若者が
多くいましたが、今はそのような若者は非常に
 少なくなったと私は感じます。


ですから、単にお金の問題ではなく、若者の生活パターン
そのものが変容してきたと考えるべきでしょう。


日本の自動車業界は、このような若者の性質を理解した上で
対策を練っていかなければ、今までのような発展を
 続けることは難しいと思います。


                           以上


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