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KON566「イオン・日本マクドナルド・JT・カゴメ・ルクアイーレ・ガンホー ~問題解決の正しいプロセスを考える」

2015年5月1日 JT イオン カゴメ ガンホー ルクアイーレ 日本マクドナルド

本文の内容
  • イオン 2015年度設備投資額1600億円見通し
  • 日本マクドナルドHD 2015年12月期の改装店舗数230店
  • JT 飲料自販機事業売却へ
  • カゴメ 米プリファード・ブランズを買収
  • ルクア イーレ JR西日本、大阪駅リベンジの仕掛けとは?
  • ガンホー 連結営業利益190億円の模様

マクドナルドの売上低迷の原因は店舗ではない/自動販売機網の価値は大きい


イオンは2015年度の国内スーパーの設備投資を前年度比6割増の1600億円にします。大手3社の総額は前年度比5割増の2600億円で、東日本大震災以降では最も高い水準になります。

また、日本マクドナルドホールディングスは店舗改装を加速させます。2015年12月期の改装店舗数は230店程度とし、前期比で100店ほど上積みするとのことです。

イオンにしてもマクドナルドにしても、店舗の増加や改装などに手を付けても全く意味がないと私は思います。店舗が売上低迷の原因ではないからです。

マクドナルドについては、何度も述べてきましたが、日本の中食市場、外食市場は競争が厳しく、ハンバーガー以外の競合に負けているのが最も大きな原因です。

カフェとして考えても、ネット環境のあるところで落ち着いて過ごしたい人にとっては、マクドナルドの店内の「臭い」は耐えられないので、他のお店へ行ってしまうのでしょう。

イオンもマクドナルドも、店舗にお金をかければ何とかなると思っているのは、原因を把握しておらず、知恵が足らないと言わざるを得ません。

売上が低迷すると、すぐに店舗に原因を求めるのは一昔前のやり方です。百貨店などでは、この定石が通用した時代もありましたが、今はすでにそうではありません。根本的な原因を自覚しない限り、どちらも改善するのは非常に難しいと思います。

* * *

東洋経済オンラインは、7日「JR西日本、「大阪駅リベンジ」の仕掛けとは?」と題する記事を掲載しました。昨年閉店したJR大阪三越伊勢丹が、新たにルクアイーレとして生まれ変わったと紹介しています。

生まれ変わったと言いますが、阪急にやられた三越伊勢丹が「見た目」を変えただけで、果たしてこれでいいのか?大いに疑問です。

オープニングの際にはセールもあるでしょうから人は集まると思います。しかし問題はそれ以降です。私は、そもそも導線に問題があると感じています。根本的な問題を見誤っているとすれば、非常に厳しいでしょう。

一方、無店舗網とも言える「自動販売機」が大きな価値を持っている事例が日本たばこ産業(JT)です。JTが飲料自動販売機の運営事業の売却を検討し、サントリーホールディングスなどビール系大手3社が買収に名乗りをあげているとのことです。

自動販売機は陣取り合戦のようなもので、時間をかけてゆっくりと増やしていくしかありません。サントリー、アサヒ、キリンにとって自動販売機分野では圧倒的にコカ・コーラの後塵を拝していますから、JTの持つ自動販売機網は非常に魅力的でしょう。

JTは飲料事業からの撤退を決定しているとのことですが、この自動販売機事業はいい値段で売却できると思います。


食品メーカーの海外M&Aに勝算があるのか?/ガンホーもヒット商品頼り


カゴメは15日、米食品メーカーのプリファード・ブランズ・インターナショナル(PBI)を買収すると発表しました。PBIは米国で急成長しているエスニック食品市場向けに、インドやアジア系メニューの電子レンジ対応商品を販売しています。

カゴメはPBI買収で米、印といった成長市場での事業展開を強化する狙いとのことですが、少し私には疑問です。このようなニッチ商品で本当に良いのか?と思います。

日本国内の食品市場が拡大していないので、日本の食品メーカーは海外のM&Aに積極的です。日清製粉は米穀物メジャーのカーギルから製粉4工場を買収、サントリーは1兆6000億円もの資金で米蒸留酒ビームを買収、ミツカンも英蘭ユニリーバの北米パスタ事業を2180億円で買収、アサヒや味の素もそれぞれ積極的な買収を実施しています。

ミツカンがパスタ事業を買収した時にも驚きましたが、今回のカゴメの買収も「エスニック料理?」と感じてしまいます。

海外のM&A成功率はわずか5%程度です。この事実を踏まえ、私としては祈るのみといった心境です。

* * *

スマートフォン(スマホ)ゲーム大手、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2015年1~3月期の連結営業利益は、
前年同期比約3割減の190億円前後となったとのことです。

主力のスマホ向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)の課金収入が減ったことが響いたそうですが、結局、ガンホーも主力ヒット商品頼りだったということでしょう。

グリーやディー・エヌ・エーも売上・収益ともに減少しつつあり、ガンホーは頭一つ抜けていましたが、同じように落ち込みを見せています。

結局、パズドラがマンネリ化し、ブレイクするヒット商品が出ないと厳しいでしょう。

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※この記事は4月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日本マクドナルドやイオン、ルクアイーレの話題を取り上げました。各企業の動向に対して、売上低迷の理由は店舗ではなく他に原因があると大前は指摘しています。

なぜその解決策を実行するのか?その解決策は有効であるのか?

過去とは状況が違う現代において、これまでの経験則に頼りきった行動を取ることは危険です。

先ずは情報収集を行い事実ベースで考えること。原因を見極めるために、このようなプロセスから始めることが必要です。これが問題解決に向けた第一歩となります。

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