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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON171 中国の汚染問題は、かつて日本が歩んだ道だ

2007年7月20日

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中国・外貨準備高 前年同期比41.6%増の約162兆円
中国・江蘇省・太湖汚染 水の安全性確保徹底へ
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●世界一の外貨準備高。中国の経済成長は止まらない。


11日、中国人民銀行(中央銀行)は、今年6月末の
外貨準備高が前年同期比41.6%増の1兆3326億ドルに
達したと発表しました。


この数字には、さすがの私もちょっと驚いてしまいました。


昨年の2月に、当時世界一の外貨準備高を誇っていた
日本を抜いて、中国がトップに躍り出ました。


その世界一の中国の外貨準備高がさらに41.6%増というのは、
俄かに信じ難いほどの成長です。


日本も当時の約0.8兆ドルから約0.9兆ドルへと成長しています。


しかし、このような1.3兆ドルまで膨れ上がった中国の
外貨準備高の数字を見せつけられると、日本は足踏み
しているも同然だと感じます。


日本が越えられなかった壁を越えて、中国は
トリリオンダラー(1兆ドル=約120兆円)以上の潤沢な
外貨準備高を誇る国に成長してきました。


今後は、この資金を使って世界中に投資を始めるでしょうから、
中国の経済成長は止まらず、益々、加速していくでしょう。


ただ、このような経済成長の反面、空気・水などの
あらゆるものの汚染という問題が浮上しているのも事実です。


7日、中国・江蘇省の太湖で深刻な水質汚染が発生したことを
受け、李源潮・省党委書記は「たとえGDP(域内総生産)が
減速しても、(水の安全確保へ)厳しい措置をとる」と述べ、
汚染源の工場閉鎖などを徹底して進める姿勢を強調しています。


日本や米国からの厳しい批判を受けての対応です。


当然、汚染問題は解決しなくてはならない課題では
ありますが、今の日本や米国による中国への批判を
見ていると、少し過剰な反応をしていると私は思います。


●中国が歩んでいるのは、約30年前に日本も歩んだ道だ。


今、中国が経済成長の代償として、汚染問題に直面して
いるという事態は、かつて日本も米国も英国も、
あらゆる先進国が経験した道です。


私は67年~70年まで米国に滞在していましたが、
ちょうどピッツバーグの街が光化学スモッグの
クリーンナップに成功したという時期でした。


その後、帰国してみると、今度は日本が四日市喘息や
水俣病を始め、公害・汚染問題に直面していました。


日本は、つい数年前には同じ問題を抱えていた米国から、
LIFEやTIMEといった雑誌で「日本は公害を輸出している」と
批判を受けたりしました。


さらには、「日本は、汚染問題などに気を遣わないから、
国際競争力があるのだ」という類の批判も多くありました。


そのような批判に対し、「米国だって同じことをして
いたではないか」と当時の日本は感じていたと思います。


そして、この関係はそっくりそのまま、
今の日本と中国の関係に置き換えることができます。


残念なことですが、今までの歴史では、いずれの国も、
経済成長と引き換えに大きな破壊と社会へのダメージという
段階を経て成長をしてきました。


汚染を肯定するわけではありません。


しかし、このような歴史を振り返れば、今の中国が
抱える問題について、中国だけを批判しても
意味がないと私は感じます。


中国の汚染問題に対して、過度に反応し、批判するのは簡単です。


しかし、大切なのは、30年前に同じ問題に直面した国として、
単なる批判に留まらず、具体的かつ建設的なアドバイスや
支援をすることではないかと私は思います。


                           以上


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