大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON170 インド経済・独自の経済発展段階へ

2007年7月13日

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インド株式市場 6日 終値 1万4964.12
5ヶ月ぶりに過去最高を更新
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●独自の経済発展段階に入ったインド経済。


6日、インドのムンバイ証券取引所(BSE)では
主要30銘柄から構成される株価指数であるSENSEX30種指数が
終値で1万4964.12と最高値を更新しました。


インド政府が発表した6月16日時点の卸売物価指数(WPI)の
上昇率が「前年比4.03%」と14ヶ月ぶりの低水準となり、
追加利上げの可能性が遠のいたことで買いが集まった模様です。


インドの株価指数の推移を見てみると、
2000年以降03年中旬までずっと低迷していたのが、


ここ4年で大きく上昇に転じているのがわかります。


※「インド・平均株価指数の推移」チャートを見る
「インド・平均株価指数の推移」チャート


インドの株価の特徴を一言で言い表すと、
「イソギンチャク型」だと私は思います。


それは、投資家がインドに対する潜在的な不安を抱えて
いるため、何かが起こると日本や米国に比べて、
急激な上昇や下降を見せるという特徴を持っています。


今年の2月から3月中旬にかけて、日本と米国が株価を
下げた局面でも、インドは約15%下落するという
今年の最も大きな下げ幅を記録しています。


※「インドと日米の株価指数の推移」チャートを見る
「インドと日米の株価指数の推移」チャート


ただ、全体で見るとインド経済は急成長を続けています。


今後は中国型の発展に切り替わり、かつてのブラジルや
アルゼンチンのようになる危険性は殆どないと
見ていいでしょう。


●インド経済の立役者であるIT産業をいかに活用するか?


インドの成長の最大の立役者になっているのが、IT産業です。


06年度のインドにおけるIT関連産業の売上高は396億ドル
(約4.8兆円)にのぼり、インドのGDPの約6%を占めています。


98年度には、60億ドル(約7,000億円)に過ぎなかった
売上高が、10年も経たないうちに約7倍になっている
のですから、かなり急激な成長だと言えます。


また、実質GDPに占める割合も、2.4%からの急成長を
記録しています。


※「インドのIT関連産業の売上高と実質GDPにしめる割合」 チャートを見る
「インドのIT関連産業の売上高と実質GDPにしめる割合」チャート


IT産業が全産業の中でも大きな割合を占め、経済成長を
牽引しているという例は、BRICsや他の新興国を
見渡してみても見当たらないインド特有の現象です。


このような点からもインドは「独自の」経済発展を
歩み始めたと考えて間違いないと私は思います。


このようなインドという国の実情や特徴を正しく
認識した上で、どのようにインドと付き合っていくべきかを
判断していくことが大切です。


至極、当たり前のことですが、日本においては、
そもそもインドに対する認識が大きく遅れていていると
私は感じています。


例えば、先日、日立製作所が2年後をめどにインドで
ソフト技術者を現在の2倍の1,000人体制に拡充する予定だと
発表しました。


私に言わせれば、これがニュースになること自体が
おかしいと思います。


GEなど世界の企業は、インドで年間数万人規模で
採用をしています。


それなのに、日本を代表するメーカーである日立が、
2年後に1,000人体制ではお粗末過ぎると
言わざるを得ません。


インドの経済がどのような状況を迎えているのか
ということを、きちんと自分でデータを分析・判断した
上で決断していないから、このような事態に
なるのだと思います。


これは何事にも当てはまるでしょう。


世界中に溢れるニュースや統計などは単なる
データソースであり、それを読み取り、
考える力を身につけることが大切だと、
あらためて強調したいと思います。


                           以上


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