大前研一「ニュースの視点」Blog

KON553「トヨタ自動車・西武HD・日本電産・DMG森精機~トヨタの競合はフォルクスワーゲン」

2015年1月31日 DMG森精機 トヨタ フォルクスワーゲン 日本電産 西武

本文の内容
  • トヨタ自動車 2015年世界販売台数1015万台
  • 西武HD 株式時価総額が私鉄首位
  • 日本電産 連結純利益750億円
  • DMG森精機 独DMGを買収へ

トヨタの競合相手は、フォルクスワーゲン


トヨタ自動車は2015年のグループ世界販売台数を、14年実績見通しより約10万台少ない1015万台程度とする方針を固めました。

新興国販売が不振なほか、国内の増税で軽自動車主体のダイハツ工業が落ち込む形になり、これにより独フォルクスワーゲン(VW)が初の首位になる公算が大きくなりました。

トヨタはずっとGMに追いつけ追い越せという目標に向かっていました。そして数年前、ついにGMを抜いて世界首位に踊りでましたが、私はその際にも「これからの本当の競合相手はフォルクスワーゲンだろう」と意見を述べていました。

世界的な規模で、どの地域で強いのかを見ると、フォルクスワーゲンは新興国で強さを見せていました。米国ではトヨタのほうが上回っていましたが、今後自動車産業が伸びる地域を考えれば、フォルクスワーゲンに優位性がありました。

フォルクスワーゲンは中国だけで300万台販売しています。一方、中国とインドで出遅れたトヨタは100万台に届いていません。中国市場は2600万台が見込める規模ですから、ここで大躍進できるかどうかは非常に大きいでしょう。

加えて、フォルクスワーゲンは、高級車のアウディの販売も好調です。トヨタのレクサスは一時期米国で調子が良かったのですが、今は50万台程度に落ち着いています。アウディだけで数百万台販売し、ハイエンドで成功している点も非常に強いと感じます。

以上の点から、私は、トヨタはフィアットクライスラーを買収するのはどうかと提言しました。

トヨタは歴史的に買収を好まない会社なので実現するか疑問ですが、今トヨタが抱える問題を解決するために、私なら今でもフィアットクライスラーを狙うでしょう。

逆に、トヨタが手を出さなければ、フォルクスワーゲンに買収される可能性もあるかも知れません。


 

西武HDの株主サーベラスの動向


19日の東京株式市場で、西武ホールディングスの時価総額が終値ベースで9750億円と東京急行電鉄(9523億円)を上回り、私鉄で首位となりました。

西武HDが首位となるのは2014年4月に再上場してから初めてです。訪日外国人が増えており、ホテル事業の好調で買いが入ったと見られています。売上高、営業利益は4位ですが、時価総額で1位になりました。

保有しているプリンスホテルも、一時は閑古鳥が鳴いていましたが、今では予約が取りづらい状況に回復しています。

今後注目されるのは、西武HDの株式の約35%を保有するサーベラスの動向です。今まで上値が重たかったのは、値段が上がってくるとサーベラスから売り浴びせられるのではないかという懸念があったためです。

ここまで値段が上がってくると、サーベラスも、もう少し長期間保有する可能性も十分にあると思います。そもそも、今回ここまで「売り」が出ていないのは、何か「動き」があったのかも知れません。


 

日本電産、DMG森精機のM&A戦略


日本電産は22日、2015年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比33%増の750億円になる見通しだと発表しました。

過去最高を見込んでいた従来予想(22%増の690億円)から増益幅が拡大。成長分野と位置づける車載用と家電・産業用のモーターや、ハードディスク駆動装置(HDD)向けの小型精密モーター事業などが好調に推移しているとのことです。

日本電産については、日本では珍しいM&A戦略が結果を伴うのかどうか、懸念されていましたが、この結果を見ると、良い方向に進んでいるのだと感じます。

すでに売上高1兆円が視野に入ってきており、永守社長の性格からすると2兆円を目指すと言い始めそうですが、次の課題は後継者でしょう。

M&A戦略に対して、コアがない、伝統がないと言われたこともありましたが、今回の数字を見ると、何となくまとまってきているのだと思います。利益が出る会社にしたあと、最後の仕事としてぜひ後継者を見つけて欲しいと思います。

* * * * *

また、工作機械大手のDMG森精機も、大規模なM&Aを発表しました。

22日、DMG森精機は資本・業務提携する同業の独DMG MORI SEIKIにTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しました。

TOBの期間は2月11日から3月11日の予定で、現在の24.3%の出資比率を50%超に引き上げる計画で、売上高は約4400億円と、世界最大級の工作機械メーカーになるとのことです。

工作機械メーカーは、スイスやドイツに世界的な会社がいくつかありますが、ギルデマイスターを傘下に収めることができれば、DMG森精機も非常に大きな存在になっていくと思います。

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※この記事は1月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、自動車業界に関する話題をお届けしました。

新興国で優位を見せるフォルクスワーゲン。トヨタが同社に対抗するため、大前はフィアットクライスラーの買収を提言しました。

問題解決の一つの手法としてM&Aがあります。自社リソースのみに頼った戦略立案だけでなく、外部の力の活用も含め、広い視野で検討することが大切です。

前提や制約条件を取り払い、自由度の幅を広げて発想すること。よりインパクトの大きな解決策を立案するにあたり、重要な考え方です。

★戦略的自由度を広げ、インパクトある解決策を導く
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
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