大前研一「ニュースの視点」Blog

KON549「民主党・法人増税・地方創生~民主党は少子化対策や移民政策を議論せよ」

2014年12月26日 地方創生 少子化対策 民主党 法人増税 移民政策

本文の内容
  • 民主党 海江田万里氏 落選で代表辞任
  • 法人減税 「3年で20%台」を検討
  • 地方創生 本社の地方移転に税優遇

民主党は、安倍政権が敬遠している少子化問題などに取り組むべき


民主党代表選に立候補を表明した細野豪志元幹事長は19日、野党再編について「争点にならない。党の自主再建を実現したい」との考えを示しました。また、岡田代表代行と前原元代表も立候補を検討する考えを表明しています。

誰が民主党代表にふさわしいのか?というと、私は細野氏以外には考えられません。理由は非常に明白です。岡田氏も前原氏も、すでに党代表を経験していますが、何も効果はもたらしませんでしたし、リーダーシップもありませんでした。

細野氏を圧倒的に支持する理由があるわけではありませんが、「手垢がついてない」という意味で、一人しか該当者がいないということです。

そして民主党が取り組むべき問題も、明白です。この点については、インターネット上で「【向研会】人口減少の衝撃 ~少子高齢化の現状と将来課題~」というタイトルで公開している内容を含めて、「少子化問題」「経済見通し」など 私が提唱する解決方法をすでに民主党の有力者には伝えてあります。 少子化対策、移民政策は、安倍総理が最も嫌いな領域であり、これを議論すべきです。

またアベノミクスのイカサマについても、指摘していくべきでしょう。「円安になれば、産業が海外から戻ってくる」と主張していますが、そんなことはあり得ません。過去に事例もありません。

日本企業が海外進出をしてきたこの15年間で、大学進学率は上昇し、中卒・高卒で就職する人は減少しています。「海外から産業が戻ってくる」と口だけで言っていますが、例えば「キャノンが10万人の雇用を新たに必要としている」となったら、日本国内でその人数を採用できるでしょうか?中卒、高卒のブルーカラーの労働人口が減少している日本では、対応できないのです。

さらに言えば、部品会社が海外に進出していることも多いので、組み立てるメーカーだけが日本に戻ってきても、部品がなければ意味がありません。むしろ部品の輸入にとっては円安は逆効果です。

私は個々の企業の状態を知っていますから、こうした事実を元に話をします。 しかし多くのマクロエコノミストは違います。こうした事実を踏まえず、企業経営の基本を知らないままにでたらめなことを言っているだけです。 または古い時代の発想のままなのです。現役の経営者なら、「円安になれば海外から産業が戻ってくる」という感覚を持ちあわせていないはずです。


法人税を引き下げても、それが投資につながるとは限らない


来年度税制改正の焦点である法人実効税率について、政府・与党が「3年間で20%台に引き下げる」との案を検討しています。 来年度の引き下げ幅は2.4%台とする方向で赤字企業にも負担を求める外形標準課税の拡大など財源確保策と一体で詰める方針です。

法人税について日本が抱えている問題は、赤字のために法人税を払わないという「欠損法人」が多いことです。国別で比較してみると、日本が他の国に比べて際立って高いことが見て取れます。

本当だったら個人で消費していることも、会計上経費として扱い、赤字決算にして法人税を払わないという方法が横行しています。こちらの問題を解決することが先決だと私は思います。

また、経団連などが法人税の引き下げを推奨しているわけですが、私に言わせれば、彼らは「企業経理の基本・問題」を全く理解していないとしか思えません。 不景気が続く日本でも、企業に積極的に「投資」をしてもらいたいという狙いで、経団連などは法人税の引き下げを声高に叫んでいます。

しかし、法人税を引き下げても、企業の投資を促進することにはつながらないのです。 法人税を引き下げると、配当に回るお金、又はそこから残る内部留保が大きくなるだけです。投資にお金を回そうとはならないのです。

正解は「逆」です。世界で投資に積極的にお金を回している国を見ればわかります。「税金が高い国」のほうが、国にお金を持っていかれるのを嫌い、「投資」にお金を回すようになるのです。

極端なことを言えば、法人税率を100%にすれば、「どうせ利益を出しても全て持って行かられるなら」と考えて、投資しようとなるはずです。 財界人や学者が間に入って、法人減税を推奨する論調を作り出しているようですが、私には何を考えているのか、理解に苦しみます。

1回でも企業経営をしたことのある人なら、こんな的はずれなことは絶対に言わないでしょう。



企業が簡単に本社機能・営業機能を地方へ移すことはあり得ない


政府・与党は17日、企業が本社機能を地方に移転する際、社屋などへの投資額の最大7%を法人税額から差し引けるようにする調整に入りました。 地方からの人口流出を抑え、地方経済の底上げにつなげる狙いで、30日にまとめる来年度の与党税制改正大綱に盛り込むとのことです。

これも一言で言うと、「バカ」な施策です。経験のある企業人なら誰でもわかりますが、企業は「東京の中でさえも、いかにセンターポジションをとるか」で争っているのに、地方へ行くなど考えられません。

例えば、サントリーは赤坂からお台場へ移転しましたが、不便で仕事にならないため、営業機能は赤坂に戻ってきています。 お台場でさえも不便を感じるのに、あまつさえ地方への移転など考えられません。品川・大崎でも、不便を感じている企業も多いはずです。

社屋への投資額の最大7%の法人税引き下げなどを狙って、本社登記だけを移すということはあり得るでしょう。要するに、「なんちゃって移転」です。

しかし、実態として本社機能や営業機能を地方へ移すのは無理です。一連の産業競争力会議などの動きを見ていると、呆れるばかりです。こんな「姑息」なことで企業が発想を変えると思っているのが私には理解できません。

安倍総理の周りに集まっている学者や役人の発想なのでしょうが、いわゆるマイクロマネージメントとして細かく管理しようとしているだけで、何1つ本質的な部分を解決していません。

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※この記事は12月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの 内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は民主党の課題やアベノミクスの話題をお届けしました。記事中、少子高齢化にも触れていますが、人口減少に対する対策など、大前研一本人による提言映像をYouTubeでご覧いただくことができます。

*視聴はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=COwMaNJO874

タイトルは「【向研会】人口減少の衝撃~少子高齢化の現状と将来課題~」。こちらの映像はBBT主催の経営者勉強会「向研会」での講義を収録したものです。

みなさんは、この現実を知った上でどう考えていきますか?2015年の指針を立てる際に、ぜひご覧いただきたい映像です。

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