大前研一 著  「考える技術」(講談社)より抜粋
 
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事実を基に論理的に本当の原因を絞り込め

では、どのようにして原因を明確にするか。

たとえばオフィス機器の販売をしているA社が「マーケットシェアが低い」という問題を抱えていたとする。問題の原因を探るために、まずA社のデータと業界のデータを収集して分析してみたところ、仮に「A社のマーケットのカバー率は7割ある」「A社の入札時の競合勝率じゃ2割である」ことがわかったとしよう。

この数字が意味するのは、マーケット全体の入札数が一年間に1万件あったとして、その7割を自社の営業マンがカバーした、つまり事前に察知していた。しかし入札をしたときに他社との競合勝率がたった2割しかないために、結果としてマーケットシェアが14%(マーケットのカバー率70%×競合勝率20%=14%)しか取れていなかったということだ。ということはけっして営業マンに元気がないわけではない。

ここで、私ならこう考える。「営業マンは元気を出せ」とハッパをかけて、たとえカバー率が7割から8割に上げたとしても。競合勝率が20%のままでは80%×20%で16%にしかならない。14%のシェアは2%しか増えないわけだ。

ところが競合勝率を仮に五割にできたとしたら、カバー率は現状維持のままでもシェアは35%にまで上がる(カバー率70%×競合勝率50%=35%)。それまでのじつに2.5倍だ。カバー率を上げるのと競合勝率を上げるのと、どちらがより良い選択肢であるかは明白だろう。

それがわかれば、次の段階では競合勝率についてより詳しいデータ収集し、分析する。営業マンは競合勝率を上げるための時間を十分に取っているのか。競合他社の動向を調べ、価格をきちんと分析したうえでお客さんに提示しているのか。もしカバー率を上げるために営業マンが疲れ切っているのなら、カバー率をむしろ落とすことを考えてもいい。「カバー率は60%でいいから、競合勝率を50%に高める」ことを目標にすれば、それを実現したときに今の倍以上の30%のシェアを取れることになるからだ(カバー率60%×競合勝率50%=30%)。

「足を棒にしてマーケットをカバーしろ」「入札した以上は勝て」などと、すべてに対して頑張れという経営者も多いが、その考えは明らかに間違っている。このケースでは、営業マンには「足を棒にして歩くのはやめなさい。必ず勝てる提案書を書きなさい」と言うべきなのだ。


本当の原因が確信できるまで、解決策を決めつけてはいけない

ではA社の競合勝率を上げるにはどうすればいいのか。間違った経営者は、「勝率を上げるためには製品を良くして値段を下げろ」と言う。しかし、そんなことをしたら利益が出なくなって、ますます経営は悪化してしまう。

ここはまだ解決策の結論を出す段階ではない。その前に、競合勝率が低い原因は何か、商品の問題なのか、それとも値段に問題があるのかを明確にすることが必要だ。先に述べたように「何が現象で、何が本当の原因なのか」を知るためである。

私ならどうするか。まず地域別、営業マン別に、競合したときの勝率が変わるかどうかをデータを集めて分析する。A社に全部で500人の営業マンがいたとすると、その500人が入札をした履歴を全部見るのである。その結果、「地域によってバラつきはないが、営業マンによっては八割勝っている者もいる」というのであれば、商品が悪いわけではないことがわかる。もし商品が悪ければ、営業マンが八割も勝つことはまずありえないからだ。もちろん八割勝つ人間が全国に一人しかいないのなら話は別で、その営業マンはよほどの天才か策士か、裏に何か事情のある人間だから、特例として見るべきだろう。


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