大前研一 著  「考える技術」(講談社)より抜粋
 
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現象と原因の違いを認識せよ

仮説を証拠で裏付け、結論を導き出すうえでもっと大切なのは、「その問題の原因は何か」を明確にすることである。ところがほとんどの経営者やビジネスマンは、問題として見えてくる現象にばかり目がいってしまい、原因の解決に至らないという思考パターンに陥っている。

現象はあくまでも現象にすぎず、原因ではない。この当たり前のことがなかなか理解できないのだ。

たとえば、ある商品について「売上が伸びない」という問題があったとしよう。その理由としては「営業マンに元気がない」「製品が悪い」「価格が高い」など、いくつかのことが考えられる。私がコンサルティングの依頼を受け、その会社の営業の現場などに足を運んで話を聞いていくと、ほとんどの場合、現場の人間は原因としてそうしたことを挙げる。「営業マンのモチベーションが下がっている」「値段が高すぎて売れない」「そもそも製品の品質が悪すぎる」。

しかしこれらは原因ではなく、現象(結果)にすぎない。実際には原因はこの中のいずれか一つであって、他はそのただ一つの原因から生じている場合が多いのである。

原因になっている部分を直さないかぎり、問題の解決は望めない。大切なのは「さまざまな現象の中で本当の原因は何か」を考えることなのだ。現象を数えるだけで思考を停止させてしまってはいけない。


すべての現象を個別に改善しようと考えてはいけない

営業マンに元気がないからといってみんなで車座になって飲み会をやる。そこで愚痴を言い合って、「じゃあ、明日から頑張って行こう!」と気勢を上げてみたところで、製品そのものに問題があるとしたら、まったく何の解決にもならないことは明らかだ。

最悪なのは、すべての現象を個別に改善しようと考えてしまうことだ。つまり営業マンにハッパをかけ、価格は下げ、なおかつ製品の品質を良くしようとすることである。しかし、価格を下げて製品の品質を高めれば、利益が出なくなって自殺行為になるし、尻を叩かれ続ければ社員は疲れ切り、モチベーションがどんどん下がっていく。原因を明確にしないまま現象を改善しようとして、かえって業績が落ち込む。すなわち負のスパイラルに陥ってしまうのである。解決策をだすことを急ぐ前に、まず原因を明確にするための思考回路を働かせなければならない。


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