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KON545「沖縄県知事選・原発再稼働問題・再生可能エネルギー ~意思決定の論理を考える」

2014年11月28日 再生可能エネルギー 原発再稼働問題 意思決定 沖縄県知事選

本文の内容
  • 沖縄県知事選: 前・那覇市長翁長雄志氏が初当選
  • 原発再稼働問題: 敦賀原発2号機 直下に「活断層」を再認定
  • 再生可能エネルギー: 買い取り手続き再開へ

日本の歴史に隠されてきた「嘘」を知る


米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題が最大の争点となった沖縄県知事選は16日投開票され、無所属新人で辺野古移設反対を掲げる前那覇市長の翁長雄志氏が、現職の仲井真弘多氏ら無所属3氏を大差で破り初当選しました。

翁長氏が当選したことで、普天間基地の辺野古への移設はなくなるのか?というとそれほど単純にはいきません。日本政府は、沖縄の「軍政」に関する当事者能力を持ち合わせていないからです。米軍側も「日本政府の責任のもと」で辺野古への移設を進めるよう意思表示をしています。

実は、第二次世界大戦の末期あたりからの数十年間の歴史を見直すと、そこには多くの「嘘」が存在しています。沖縄返還に関する事実も、その最たるものです。

沖縄返還にあたっては、「民政」は日本に返すが、「軍政」は引き続き米国(米軍)が掌握する、という約束だったのです。ですから、沖縄県知事が誰になろうと、関係ないのです。

もちろん米国もあまりに手荒なことをして、米軍撤退運動などを引き起こしても面倒でしょうから、上手にごまかすとは思います。

どのような懐柔策をとるにせよ、本質的に沖縄の軍政は米軍が握っており、それは過去の歴史において日本政府と約束(密約)している、というのが動かしがたい事実です。

最近ではこのあたりの歴史の嘘も、ウィキペディアで正確な情報が掲載されるようになってきました。例えば、北方4島返還のダレス会談の件などを読むと、日本がロシアともめているのは米国の思惑だとわかります。その他にも気になることがあれば、ウィキペディアをぜひ読んでみると面白いでしょう。


活断層=原発停止ではなく、きちんと検討すべき


再稼働の可否が議論となっている日本原子力発電敦賀原発2号機について、原子力規制委員会は19日、同機の直下に活断層があるとの評価を改めて示しました。

何かあると、原子力発電所の下に「活断層」があると話題になりますが、日本ではそもそも活断層が存在しない地域を探すほうが難しいでしょう。

重要なのは、その活断層によってどの程度の地震が予想されるのか?また、その地震に原子力発電所が耐えうるのか?ということを検討することです。その検討結果として、無理だと判断するなら、原子力発電所を停止するのも良いでしょう。

しかし今の原子力規制委員会の態度は、原子力発電所の下に活断層が見つかったら、「原発は即停止」という方針です。ここには根拠はありません。

また規則で言えば、直下に活断層が見つかった場合、新しく原子力発電所を作ってはいけないと定められていますが、既存の原子力発電所の下に活断層が発見された場合については、特に定めはありません。直下に活断層があって地震が発生しても、新潟の大地震に耐えた柏崎刈羽原発の例もあります。

まともな検討もせず、「活断層=原発停止」という考え方は、私は間違っていると思っています。


民主党への政権交代も期待できず


大手電力5社は9月下旬から停止している再生可能エネルギーの買い取り手続きを再開する方針を明らかにしました。

太陽光発電設備からの送電を中断する制度の拡大など供給制限の仕組みを入れることを条件とし、まず九州電力が年内にも受け入れ再開の方針を表明するとのことです。

この再生可能エネルギー政策は、民主党政権の最大の負の遺産の1つです。東日本大震災と福島第一原発の事故を受けてパニックに陥った結果、原発は全て停止、再生可能エネルギーの割合を20%にすると宣言しました。太陽光などを高値で買い取るという方針まで打ち出す始末でした。

しかし実際に再生可能エネルギーの発電には、様々な問題が存在します。たとえば太陽光発電では、太陽が照り続けた場合に、大量のエネルギーを吸収する能力が太陽光発電システムのグリッドには備わっていません。

多くの人が一斉に太陽光を使うとなると、サージが発生してしまいますから供給制限をする必要も出てきます。このような点も含め、色々と取り決めなくてはいけなかったのです。民主党が非現実的なプランを推し進めたのは、早計だったと言わざるをえないでしょう。

当時、民主党の仙谷氏は、太陽光エネルギーの蓄電はバッテリーで事足りると思っていたようです。私の試算では40兆円を超えると指摘しましたが、結局、深く検討されることはありませんでした。

今、総選挙に向けて動き出しましたが、自民党への不信感も拭えないものの、福島第一原発への対応、再生可能エネルギーの施策などを見ると、民主党にも期待できないのが残念です。

私としては、政権交代する必要はないと思いますが、自民党の圧倒的多数という状況は変化して欲しいと感じています。アベノミクスのような中身が全く伴わない幼稚な戦略や嘘がまかり通る状況はやめて欲しいのです。

そのために野党側には、もう少しリーダーシップを期待したいところです。選挙の戦略としては、対立候補を乱立せず、小選挙区1つに対して対立候補を1人で十分です。

そして「自民党 VS 民主党」などではなく「自民党 VS 野党」という図式を成立させるほうが良いと思います。例えば「民主党」などを前面に出してしまうと、自分たちの不甲斐なさもあるので、安倍政権の明確な失政を責めることができずに終わってしまうでしょう。それを避けることが大事だと思います。

私に言わせれば、何の結果も出していない安倍政権が、「アベノミクスの評価」などを問うこと自体が理解できません。私なら「続けさせてくれ」と言えないでしょう。ある意味、すごい度胸だと感心してしまいます。

また新聞などのジャーナリズムも、なぜまともに指摘しないのか、私には理解できません。


※この記事は11月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は原発再稼働や再生エネルギーに関する話題をお届けしました。

いずれにも共通しているのが「十分な検討」をしていないまま、ことを進めようとしている点です。

本当に原発を停止させる必要があるのか?また、再生エネルギー政策を推進する必要があったのか?

意思決定に当たっては、思い込みではない論理的な検討が必須です。あらかじめ命題を分解し成立条件を洗い出しておくことが、正しい意思決定をするために求められます。

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