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- イスラム国 地上部隊派遣を検討
イスラム国への地上部隊派遣は、オバマ大統領への批判を強める
米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は13日、過激派「イスラム国」掃討のため米地上部隊をイラクやシリアに派遣する案を「確かに検討している」と述べました。
一方、「イスラム国」は14日までに、イラクとシリアにまたがる支配地域で独自の通貨を発行すると発表。7世紀のカリフの時代にならい、金、銀、銅を材料に貨幣を鋳造し、現代の「押し付けられた邪悪な世界経済システム」からの解放を目指すということです。
「イスラム国」は、油田を奪っていますから、そこから得られる資金で国としての体裁を整える準備にはいったということでしょう。
国の定義という意味では、「国境」「通貨」「憲法」が必須です。憲法はイスラム法があるので、通貨の鋳造に乗り出したということです。
また、「イスラム国」には明確な国境はないので、国境を廃して国民国家の支配から解放されるべきという「カリフ制」の考えを持ちだしています。
オバマ米大統領は米軍の派遣に反対の意向を示していましたが、デンプシー米統合参謀本部議長、ヘーゲル米国防長官などは、地上部隊の派遣を検討すべきという考えを示しています。
オバマ大統領も米国へ帰ったら、意見を変えざるを得ないかも知れません。イラクから撤退し、アフガニスタンでの紛争に傾注したオバマ大統領の政策によって、とんでもない事態に発展しました。
ここからさらにイラクに地上軍を派遣するとなると、オバマ大統領に対する国民の批判が高まるのは避けられないでしょう。
帝国の崩壊は、それほど簡単に落ち着くものではない
このような世界情勢の中で、「米ソの対立」が未だに消えないのは何故なのか?と、疑問に感じている人も多くいると思います。ベルリンの壁崩壊から25年も経過しているのに、近年では「新冷戦」という言葉も生まれるほどです。
一言で言えば、過去の歴史を振り返ってみても、『巨大な帝国が崩壊した後、「崩壊」したからといって、そう簡単に全てが片付くわけではない』ということだと思います。
今のウクライナなどを見ていても、かつてのソ連がどれほど大きかったのか、野放図に拡大していたのか、と私は思います。
ソ連の残骸は非常に広範囲に渡ります。ウクライナ、ベラルーシなどは独立し、また管理されていた多くの東欧地域は、ほとんどがEUに吸収されました。今のロシアからすれば、自分たちはどれほど「縮小」したのかと感じるでしょう。
ところが、それほど「縮小」したというのに、かつて仲が良かった東欧地域から憎まれる始末で、最後の最後まで一緒に戦っていたウクライナまで、今はEUに加盟しようとしています。ロシアからすると、面白い気持ちはしないでしょう。
逆に、徐々に縮小の一途をたどっているロシアからすれば、「侵略しているのは、お前らのほうだ」という気持ちすら芽生えてきていると思います。
そして、プーチン大統領のような強力なリーダーシップを発揮する人物が出てくると、ロシアの国民の気持ちも高まります。
かといって、ロシアのトップにリーダーシップがないと、チェチェンの問題などに対処できないでしょうから、ロシアには強力なリーダーが求められているとも言えます。
ユーゴスラビアの規模でさえ、崩壊後20年間も紛争が続きました。ようやく、セルビア、コソボなど7つに分割されましたが、あの小さな帝国でも分裂して落ち着くまで、そうとう大変でした。ソ連という大帝国の規模を考えれば、時間がかかるのは当然でしょう。
歴史的に大帝国が崩壊するプロセスを見ると、今のロシアの状況は良いほうだと私は思います。ロシア、カザフスタン、ベラルーシなど、立場を変えて、視点を変えて見ると、理解できる世界が変わります。一度、そのような立場から世界を見てみると面白いと思います。
※この記事は11月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今回大前は、ソ連崩壊後のロシアと東欧地域の国々についてそれぞれの立場や視点で見ていくことについて解説していきました。
ニュースをはじめ、私たちが受け取る情報の中にはある特定の立場や視点で観察されたものもあります。
そうした情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、別の角度から見てみることで、新たな気づきが得られます。
ニュースの情報を読み解く際は、常に情報源がどこなのかを意識し、見る角度を変えながら客観的に捉えていく必要があります。
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