大前研一「ニュースの視点」Blog

KON541「ヤフー・IBM・マイクロソフト・NTTデータ~競合優位性の打ちだし方を考える」

2014年10月31日 IBM NTTデータ マイクロソフト ヤフー

本文の内容
  • 米ヤフー 純利益約7250億円
  • 米IBM 半導体製造部門を譲渡
  • 米マイクロソフト アジュールを拡充
  • NTTデータ 独ダイムラーのシステム開発

米ヤフー、IBM、マイクロソフトが置かれた状況と課題


米ネット大手ヤフーが21日発表した7~9月期決算は、純利益が前年同期の約23倍の67億7400万ドル(約7250億円)となりました。これは、大半が9月に上場した中国アリババ集団の株式売却益によるものです。一方、営業利益は55%減と低迷しています。

マリッサ・メイヤーは何を考えているのか?私には理解できません。アリババの株式売却で利益を計上しても、営業利益が減少していては、CEOとしての責任を問われるべきでしょう。

ソフトバンクもアリババ株を大量に保有していて、約7兆円の含み益になると思いますが、米ヤフーとは違い、株式を今すぐに売却して利益を上げようとはしないと思います。

米ヤフーがアリババ株を売却するのは、私が思うにマリッサ・メイヤーの報酬体系と関係がある気がします。もしそうだとすれば、マリッサ・メイヤーの経営力を疑問視せざるを得ないと同時に、非常に器の小さい人物だと感じてしまいます。

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米IBMは20日、不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社のグローバルファウンドリーズ(GF)に譲渡すると発表しました。

IBMは今後、3年間にわたり計15億ドル(約1600億円)をGFに現金で支払うとのこと。構造改革を急ぎ、人工知能型コンピューター「ワトソン」など付加価値の高い事業に経営資源を集中させる方針です。

半導体事業といえば、長らくIBMの中核事業として位置づけられてきました。その事業を1600億円の現金を「支払ってまで」譲渡したいというのは、不採算事業として「行き着くところまで」追い詰められてしまったのだと思います。

2000年には売上構成比のトップはハードウェアで42%でしたが、2013年には、グローバルテクノロジーズ(ITインフラ等)が38.7%、ソフトウェアが26%になっており、ソフト化・サービス化の流れに乗ってきました。

それでも、コアとなるところは技術を握っていないと差別化出来ませんし、グーグルやAmazonというクラウドコンピューティングサービスが得意な会社と競合していくためには、性能が良いサーバーも必要でしょう。これらの点に鑑みると、IBMは非常に思い切った決断を下したと私は見ています。

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米マイクロソフトは20日、企業向けクラウドサービス「アジュール」を拡充すると発表しました。オーストラリアにデータセンターを新設するほか、米デルや分散処理ソフトの米クラウデラなどと提携する方針とのことです。

マイクロソフトも、グーグルやAmazonと競争していくためには、かつてのようにWindowsだけではなく何か別の特徴を打ち出さなければいけない状況になっています。

オーストラリアには、地盤の安定度などから多くの企業がデータセンターを置いています。時差の兼ね合いも悪くないのが特徴です。

今回発表されたマイクロソフトの「アジュール」は、使いたいときに使いたい分だけ利用できるというもので、5分で仮想マシンが稼働し、VPNを通じて社内ネットワークにもつなげることが可能という特徴があります。

 

NTTはグループ統合を検討すべき/日本の大企業はテスラと離れていく


19日の日経新聞が報じたところによると、NTTデータは独ダイムラーの業務システム開発と運用を受注したことが判明しました。100億円規模ということですから、なかなか大きな数字だと思います。

私は、このタイミングでNTTグループ全体として「まとまる」という方向性に向かうべきだと思います。もともと1社独占を避けるために、NTTが分断されました。現在、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTdocomo、そしてNTTデータがあります。

しかし時代は変わり、今ではソフトバンクのほうが大きくなっているわけですし、何より世界と競合していくと考えれば、相手はグーグルやAmazonです。

NTTデータ単体で考えるのではなく、NTTグループ全体がまとまってやっていくことをぜひ検討して欲しいと思います。

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独ダイムラーは21日、米電気自動車メーカー、テスラ・モーターズとの資本提携を解消したと発表しました。ダイムラーは2009年5月にテスラに約9%出資しています。

車載用電池の開発ノウハウなどを吸収する一方で、ベンチャー企業のテスラの事業の立ち上げを支援。今年に入りリチウムイオン電池関連の合弁会社の全株式を取得していました。

テスラ・モーターズのCEOイーロン・マスクという人物は、性格的に大企業と一緒にやっていくのが向いていないのかも知れません。私が思うに、イーロン・マスクという人は、「我が道を行く」というタイプなのでしょう。

トヨタもテスラと資本提携していますが、すでに株式の一部を売却しています。開発する車種など、トヨタともあらゆる面で意見が一致しない状況だったと聞きます。一緒にやるメリットがないので、今後、さらにトヨタもテスラの株式を売却していくのではないかと思います。

他の日本企業の動向で言えば、パナソニックだけは、アリゾナの大規模電池工場にどっぷり関わっているので、気軽にテスラと手を切ることはできない状況でしょう。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、企業動向の話題を中心に解説していきました。

かつて中核だった半導体事業を切り離し、経営資源を集中させたIBM。そして新たな特徴を打ち出すためにクラウドサービスを拡充したマイクロソフト。

このように、自社の優位性を築いていくためには変化する市場ニーズや競合の動きを正しく把握することが必要です。

それらを理解した上で、どこに軸足を置くべきなのか?

真の顧客価値を定義・構築することが、業績向上に大きく影響してきます。

★市場・競合を分析し、自社の優位性を築き上げる
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