大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON161 世田谷区長権限>新潟市長権限?!地方分権のあるべき姿

2007年5月11日

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
菅義偉総務相
市町村合併推進に意欲
市町村数1,000を目指す
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


●市町村の「数」ではなく、「規模」が大切


2日、訪仏中の菅義偉総務相は、フランスのバロワン内相と
地方分権などについて会談。


日本の市町村数について「(現在の約1,800から)今後、
合併などにより1,000ぐらいまで進めたい」と述べたとのこと。


日本の市町村数の推移を見てみると、02年に約3,300だった
市町村数が、平成の大合併によって約1,800まで下がってきて
います。


今後もこの傾向を引き継ぎ、1,000まで下げていこうという
基本的な方向性は間違っていないと私も思います。


※「全国の市町村数の推移」チャートを見る
「全国の市町村数の推移」チャート


ただ、本質的には、市町村の数ではなく、市町村1つあたりの
規模(人口)が重要なのだ、ということを忘れてはいけません。


私は、以前から道州制を提唱する中で、市町村は1つあたり、
30万人規模が適当ではないかと提言しています。


市町村の規模として、10万人、あるいは30万人のどちらが
適切なのか?ということは、市町村の役割から逆算して
考えるべきです。


私が考える市町村の役割とは、生活基盤の提供です。


具体的には、国民が生活できる安全と安心を提供するべく、
学校・消防・警察を運営し、そこに暮らす人々の価値観を
形成することです。


このような役割を果たすことを念頭に置いたとき、
10万人という規模はそのサービスレベルを保てるのか?
というと、私はギリギリのラインではないかと思います。



●大きな枠組みを再定義し、トップダウンで実行することが、
成功の「鍵」


市町村合併も含め、さらに大きな枠組みとして
地方分権を実現させようとするとき、まず大切なのは、
地域単位の統一概念を再定義することだと思います。


例えば、現在の都道府県を考えてみると、
「都」「道」「府」「県」のそれぞれの違いがわからず、
都道府県の統一概念がありません。


その結果、それぞれの都道府県では人口や産業規模が
大きく異なり、都道府県の定義が極めて曖昧だと
言わざるを得ません。


※「人口階級別の都道府県分布」チャートを見る
「人口階級別の都道府県分布」チャート


これは、市町村レベルでも同じです。


人口の多い都市TOP20を見てみると、東京23区の中には、
「市」よりも人口が大きいところがあります。


※「人口階級別の市町村分布」チャートを見る
「人口階級別の市町村分布」チャート


※「人口の多い都市TOP20」チャートを見る
「人口階級別の市町村分布」チャート


このような実態から考えるなら・・・


例えば、世田谷区長の権限は、新潟市長の権限に匹敵する、
あるいはそれ以上のもので良いでしょうし、逆に言えば、
より大きな責任を負う存在であるべきなのです。


戦後の市町村合併のまま、実態に合わない、曖昧になっている
地域単位の統一概念を再定義することが第一歩。


それが決まれば、その役割を果たすことができる
規模・自立できる規模が、都道府県や市町村を構成する
規模として適当だということになるでしょう。


その上で、最終的な実行段階では、トップダウンによる
実行力が必要です。


菅総務相が主張する10万人規模の市町村の実現においても、
引き続き、1万人未満など、規模の小さい市町村の合併は
必須です。


しかし、市町村を合併すれば議員の数も減るわけですから、
「任意」のままでは絶対に実現しません。


菅総務相には強い意志を持って実行してもらいたいと感じます。


菅総務相の基本的な考え方や方向性は、間違っていないと
思いますが、私からすると「あと一歩」といったところです。


目の前の市町村合併だけに目を向けるのではなく、
全体の構想をしっかりと描くことが重要だと思います。


私が提唱している道州制には、これらの構想はすべて
盛り込まれています。


ぜひ、参考にしていただき、
今後の菅総務相の動きに期待したいところです。


                               以上


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点