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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON160 何のために金融・資本市場の“再編”を行うのか考える

2007年4月27日

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 金融・資本市場再編
 「総合取引所」創設促す
 証券、金融先物などの「タテ割り」の現状を見直し
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●総合取引所の創設への障壁となる、2つの大きなタテ割りとは?


政府は日本の金融・資本市場の競争力強化を狙い、
取引所に抜本的な再編を促す方針を固めました。


証券、金融先物、工業品、農産物などタテ割りになっている
現在の取引所を見直し、すべてを網羅する「総合取引所」の
創設を目指すとのことです。


東証の西室社長は、やる気満々のようですが、私はこの構想が
上手くいくかどうか、大きな不安を感じます。


それは、日本のタテ割りになっている取引所(市場)を
統合するのは、現状のままでは難しいと感じるからです。


日本には、商品先物を扱う東京商品市場というものが
ありますが、例えば、工業品を扱う東京工業品取引所(TOCOM)
と農産物を扱う東京穀物商品取引所では、管轄している
省庁が異なります。


前者は経済産業省で、後者は農林水産省です。


この点を見ても、果たして省庁の壁を越えて市場の統合が
できるのか、不安です。


また、取引所のシステムを構築している会社もタテ割りで
決まっていて、これを統合するのも難しいのではないかと
感じます。


結局、このようなタテ割りの現状を理解しないままに、
総合取引所の創設を叫んでみても、いかにも学者らしい
理想論であり、机上の空論でしかないと私は思います。


このような現状を本気で打開するためには、まず世界から
本当の意味でのオープンな入札を行い、日本の取引所の
システム及びそのルールを世界の標準に合わせることから
始めなければならないと思います。


日本の取引所システムは、かつての場立ちの頃のルールを
そのままシステム化するという形で構築されているところも
あり、世界の取引所のシステムルールとは異なる
時代遅れのものになっています。


逆に言えば、だからこそ、外国のシステムを導入することが
できず現状が変えられないのです。


総合取引所を作るというのが本気ならば、省庁ごとの
タテ割りという政治的な問題をクリアすること。


そして、何より、世界から著しく後れを取っている
システムとそのルールそのものを抜本的に見直することが
重要だと思います。


実質的に形骸化された公開入札などではなく、
世界標準に則ったシステム基盤を前提に、本当の意味で
世界からオープンな入札を行うことができれば、
総合取引所への道が開けるのではないかと思います。


                             以上


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