大前研一「ニュースの視点」Blog

KON537「欧州エネルギー情勢・ロシア経済・日ロ関係~日本政府の失策を考える」

2014年10月3日 ロシア 問題解決

本文の内容
  • 欧州エネルギー情勢 :東シベリアの天然ガス
  • ロシア経済 :ロシア政府、大富豪の資産奪う
  • 日ロ関係 :プーチン大統領 APECでの首脳会談を提案

東シベリアの巨大油田を中国に。日本にとっては最大級の失策だ。


ロシア最大の国営ガス会社ガスプロムは、東シベリアの巨大ガス田で開発する天然ガスの輸出先を中国に限定する方針を発表しました。同社のアレクサンドル・メドベージェフ副社長がモスクワで明らかにしました。

これはロシアと中国が、5月このガス田で産出する天然ガスをパイプラインで中国に供給する契約に調印したことを受けたもの。東日本大震災後に浮上した日本との共同開発や対日輸出の可能性はほぼ消えてしまいました。

私は声を大にして、日本政府の失策を追求したい気持ちです。ウクライナ問題で欧米と一緒になってロシアへ経済制裁している場合ではなかったのです。いち早くロシアのプーチン大統領を日本に呼び、エネルギー問題について、日本のプラスになるような解決策を見出すべきでした。

従来通り米国に追随する形で、何らロシアに歩み寄らない日本の姿勢を見て、ロシアは諦めてしまったというところでしょう。本当に日本にとって、大失策以外の何物でもないでしょう。

シベリア地区の巨大なガス田であるチャヤンダから、日本へパイプラインを引くチャンスだったのに、みすみす逃してしまい、結局日本は昔からあるサハリンからのパイプラインに依存する形は変わりません。

この既存のパイプラインについても、私はいくつかの提案をしています。森喜朗元首相からロシア側に伝わってくれていると思いますが、実現するのかどうか定かではありません。

今回、チャヤンダから中国へ引かれるパイプラインは数兆円規模のプロジェクトです。わざわざ1ヶ月前の起工式にはプーチン大統領が、現場まで行って参加しています。

チャヤンダからハバロフスクまでパイプラインが引かれ、そこから中国へ向かいます。ハバロフスクから日本につながるパイプラインは実現できませんでした。チャヤンダの巨大な油田を、全て中国に持って行かれたというのは、本当に大失策です。

11月に予定されていたプーチン大統領の訪日もなくなり、APECの際に安倍首相と首脳会談の予定とのことです。せめて、ここでは何かしらの成果を期待したいところです。

***

先日、日経新聞では、北方4島の人口増加が報じられていましたが、歯舞、色丹、国後で1万人程度、択捉で6700人程度です。

北方4島が日本に返還されたときの受け入れ体制を懸念する声もありますが、これくらいならまったく問題ないでしょう。

また、逆にかつて北方4島に住んでいて今網走に登録されている人もいますが、すでに年齢が80歳くらいのはずですから実際にはほとんど帰る人はいないと思います。

今の規模なら、全て日本で面倒を見るのでも全く問題はないでしょう。ぜひロシアにそのような提案をしてもらいたいところです。

 

経済制裁を受けたロシアは、危険なマッチポンプ状態になっている。


日経新聞は先月20日、「ロシア政府、大富豪の資産奪う」と題する記事を掲載しました。同国15位の富豪とされるウラジミル・エフトゥシェンコフ氏が16日にマネーロンダリング(資金洗浄)で在宅逮捕された事を紹介。

欧米の対ロ経済制裁の強化による打撃は、今やロシア経済の中核である石油産業に及んでいるとし、ロシア国営企業やプーチン氏に近い富豪は、事業拡大が望めないため、民間の企業家から資産を奪い埋め合わせをしようとしていると指摘していますが、これは少しいい過ぎかも知れません。

そもそもプーチン大統領は、この程度の経済制裁では屈しないでしょう。むしろ恐ろしいのは、このような理不尽ないじめを受けて、ロシア国民が反発することです。

今、ロシアではプーチン大統領の人気が高くなっていて、「危険なマッチポンプ」状態になりつつあると私は感じています。かつて日本が「鬼畜米英」と扇動し、多くの国民がその思想に染まったときと状況が似ています。

ロシア国民は生活が不便で苦しいことに対して、政府や国家に不平を言うのではなく、この苦難に耐えなくてはいけないという状態になっています。一方的に追い込む政策の過ちを再び繰り返しているように私は感じています。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


従来通りの米国追随で大規模プロジェクトへの参画機会を失ってしまった日本。結果、中国に案件を持っていかれたことを大前は失策と言及しました。

皆さんのビジネスでは「従来通り」という枠にとらわれ、思考の幅を広げられず、機会を逃してしまっていることはありませんか?

より大きいインパクトを創出するためには、会社や上司が考える既存フレームを疑うことも必要です。考えの軸足の置き方次第で、大きくインパクトに違いが出てきます。

「枠にとらわれない、よりインパクトある解決策を提示する」
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=uJWJMDU0&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点