大前研一「ニュースの視点」Blog

KON536「イスラム国・スコットランド情勢~意思決定の方法を考える」

2014年9月26日 イシュー イスラム国 スコットランド情勢 地域国家論

本文の内容
  • イスラム国 :シリアにも空爆拡大へ
  • スコットランド情勢 :スコットランドで英残留訴え

湾岸戦争やイラク戦争と同じように、イスラム国に対処できない


オバマ米大統領は10日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、「イスラム国は野蛮な行為で米国人記者2人の命を奪った」と非難し「イラク政府と協力し、米要員保護と人道支援以外にも空爆を広げイスラム国を攻撃する」と訴えました。

また米国のシリア領での軍事行動の拡大は、イスラム国との全面対決を示すとされており、オバマ外交は大きな転換点を迎えていると報じられています。

しかし、私には米国の態度は「当てにならない」と感じられます。

例えばパレスチナ問題において、以前はハタファに対して登場したハマスを「敵」とみなす立場を表明していたにも関わらず、最近ではハマスと対立するイスラエルとの間を仲介し、両者に話し合いを求めるようになりました。

今はイスラム国を「敵」とみなしていますが、今後はどうなるかわかりません。そもそもイランから共闘をもちかけられてイスラム国に対峙しているのも、欧米にとっては悪の枢軸は「イラン、イラク、北朝鮮」だったわけですからおかしな話です。

また湾岸戦争やイラク戦争の時と、今回のイスラム国では大きく条件が違う部分があります。それは戦闘員の多くが「外国人」であることです。

イスラム国には約3万人の戦闘員がいますが、そのうち1万人は「外国人」だと言われています。内訳を見ると、チュニジアが最も多く、英国からも500人の戦闘員が参加しています。イスラム国へ攻撃をした場合、その1万人の戦闘員が母国に戻り、テロリスト活動に走るリスクがあるのです。

中東の地域で戦争をする分には構わないでしょうが、国内のテロリスト活動を刺激するとなると慎重にならざるを得ないところです。米国が呼びかけている「有志連合」に対する中東主要国の動きを見ても、基地の供給や訓練の容認をするものの、もう一つ歯切れの悪い態度を示しています。

イスラム国の実態がわかりにくいという点も問題です。カリフ制イスラム国家の樹立を宣言していますが、国境は定まっていませんし、イスラム過激派集団であることに変わりはないでしょう。

アサド政権は米国に共闘をもちかけていますが、これまでアサド政権を避難してきた米国オバマ大統領としては、簡単に受け入れるわけにもいかないでしょう。対立の構図も非常にわかりにくい状況になっています。

 

地域国家は、国として独立する必要はない


英北部スコットランドの独立の賛否を問う18日の住民投票を控え、キャメロン首相ら英主要政党の党首らは10日、急きょスコットランドに入り英国への残留を訴えました。

英政府は税などの権限を一部移譲する懐柔策で、独立の回避を狙いました。一時、世論調査では独立賛成派が急速に支持を伸ばし賛否が拮抗していましたが、最終的に住民投票は否決されました。

ただ、賛成派と反対派が最後まで伯仲した今回の投票劇は、英国だけでなく、欧州連合EUや世界に波紋を広げました。スペイン北東部のカタルーニャ自治州でも11日、独立を問う住民投票を求める50万人以上の大規模なデモが発生しています。影響は欧州にとどまらず、カナダや中国にも及びつつあります。

私は地域国家論を提唱しているので、何度もこのような地域の人から講演を依頼されたことがあります。しかし私が提唱しているのは、必ずしも「国からの独立」を意味しているものではありません。世界全体の中で、自らの地域を1つの国家のごとく、地域国家として定義し、ボーダーレス経済の中で繁栄するべきだと述べたのです。

私がアドバイスした中国の大連などが良い事例です。日本語や朝鮮語の能力を生かした間接業務のアウトソーシングの基地としての地域国家を作り上げ、結果として世界中から資本と企業が集まるようになりました。ですから今回のスコットランドの独立というのは、私が提唱する地域国家論とは趣旨が異なります。

最終的に独立は否決されましたが、もし独立するとなっていたら、英国としては大変な事態だったと思います。スコットランドが独立すれば、北アイルランドも同じように独立を求めたでしょう。独立してアイルランドと一緒になる可能性も高いと思います。その意味でも、今回のスコットランドの独立を踏み留めることができたのは大きいと言えるでしょう。

また英国以外でも、中国は内モンゴル自治区、スペインはカタルーニャ州、カナダはケベック州など、世界には同じような動きに発展する地域がいくつかあります。それらの地域にとっては他人ごとではないと思います。今後、こうした地域でどのような動きが出てくるのかは注意して見ておくべきでしょう。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


記事中、イスラム国への攻撃が外国でのテロリスト活動につながる恐れがあると大前は指摘しました。このリスクを考えると攻撃は慎重にならざるを得ません。

そこで「イスラム国を攻撃すべきか?」という大きなイシューを分解する必要性が出てきます。

このように、意思決定をする際は、イシューを分解し実行条件を分析するための技術が求められます。
「意思決定のポイントを見極める」
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=iiKcJ7YT&ga=WAAAAk-1

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