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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON158 日産販売体制効率化で変化を起こせるか?!

2007年4月13日

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 日産自動車
 国内販売体制、大幅見直し
 本社や販売関連間接部門の人員2,300人を2010年までに半減
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●間接人員のコスト半減は容易ではない。
            きめ細かい業務分析はできているか?


3月27日、日産自動車は国内販売体制を大幅に見直すと
発表しました。


全国10地区に地域統括会社を新設し、統括会社が地域ごとに
店舗網を再編。


また、本体と販売会社の販売関連間接部門の人員2,300人を
半減し、販社の営業利益率を高める狙いとのことです。


収益悪化を辿り、トヨタ・ホンダに差をつけられてきている
日産としては、かなり焦っている様子が感じられます。


ゴーン氏は製造部門の業務効率化(コストカッター)としては
有名で、日産でも実績をあげました。


今度はそれを本社と販社の間接部門に適用していくという
ことでしょうが、私は次の2点において不安を感じます。


1つは、すでにゴーン氏が日産の指揮をとるようになってから、
5つの販売チャネルを2つに統合しているという点です。
通常、5つのものを2つに統合すれば、そのプロセスの中で
効率化が図られて然るべきでしょう。


それが出来ていなかったというのは、お粗末と言わざる
を得ません。


もう1つは、間接部門のコストを半減するということ自体が
非常に難しい業務であるということです。


自動車販売会社の場合には、お客様フォロー、車の手配、
陸運局への書類の提出、車検の資料準備など、
間接部門がやるべき細かい業務がたくさんあります。


これらを削減していくためには、業務プロセスそのものを
見直して、その上でアウトソーシングやシステム化を
上手に絡めないと実現できないでしょう。


その前提としては、きめ細かい業務プロセスの分析が
行われていないと話になりませが、私としては、
この点についても疑問を感じます。


●アジアでの販売力の弱さをカバーする戦略をとらなければ、
                  日産に勝ち目はない


日産自動車は世界戦略車と位置付ける「リヴィナ」シリーズの
販売を拡大するとのことです。


この「リヴィナ」シリーズが日産のグローバル戦略上の
巻き返しの布石になると感じている人もいるようですが、
率直に言えば、私はこのままの戦略では無理だと思います。


先日、インドネシアで販売が開始された
「グランド リヴィナ」は7人乗りの小型ミニバンで、
道路事情が多少悪くても問題なく、半商用・半乗用という
使い方が想定できます。


このような車はニーズが高いというメリットがある反面、
他の会社も同じような車を作りやすいために、
独占できないというデメリットがあります。


この車を大々的に売っていくためには、販売力の強さが
キーポイントになるわけですが、残念なことに日産は
アジアでは強い販売網をほとんど持っていません。


これからコツコツと現地の販売力をつけていくか、
あるいは現地ですでに強い販売網を持っている会社と
提携するなどの施策が必要だと思います。


例えば、インドネシアなら三菱、マレーシアならプロトン、
タイならいすゞ自動車、中国ならホンダというような会社が
提携先として考えられます。


アジアにおける販売力が弱いという現状は、一朝一夕に
どうにかできるものではありません。


この車にニーズがあるのならば、アジアだけにこだわらず、
日産が伝統的に強い欧米でテストマーケティング・販売を
するというのも、1つの策だろうと私は思います。


今、ゴーン氏は、コストカッターとしてだけではなく、
経営者としての真の実力が問われています。


V字回復のときのような見事な成果が出せるのか、
お手並み拝見といったところです。


                               以上


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